第19話 噂話

 商人のグリットさんと御者に別れを告げ、俺達は再びヘーニル領を出るために歩き始めた。

 それから少しして、小さな町を見つけた。そこでギルドの依頼を受け、泊まる場所をどうしようかアリーに聞いてみた。

「Eランク以下の人はギルド宿舎と言うものを使えるみたいなの」

「ギルド宿舎?」

「そう…低ランクの人はクエストやっても、貰えるお金は宿屋に泊まるほどの物じゃないの」

「あー、確かに…宿屋の値段は一番安くて800円になってたな」

 俺は始めてクエストを受けた時のお金を思い出した。

「だから、Eランク以下の人はギルド宿舎を使える様に作ったの」

「なるほど、だからギルド宿舎か…。…そもそも、ギルド宿舎って何?」

「ギルド宿舎と言うものは町にある宿屋の事よ」

それから、カードを見せてギルド宿舎に入ってから

「…さっきのグリットさんとはどういう関係なの?」

「グリット叔父さん?元々は商人だったんだけど今は貴族になったみたい。私も詳しくは知らないの。私の母の弟なんだけど良く心配してくれてた人の」

「貴族になったって…それアリーの家族も知ってるの?」

「いや、『家族は知らないから皆に言うな』って叔父さんは言ってた。」

 俺はその言葉に絶句し、そんなにアリーの家族は信用されてないんだと感じた。さっきの人が貴族だったとは…

「それじゃ、家名は知ってる?」

「えっと…確かハンテットだって言ってた。1年前に家名を貰ったんだって」

 その言葉に

「もしかして、グリットさんがアリーに優しくしてくれた人?」

「あの家族や親せきの中では…優しくしてくれたのは叔父さんと叔母さん夫妻だけなんだ」

「そ、そうなんだ。こんなこと聞くのはいけないと思うんだけど…アリーも俺と同じ環境だったの?」

「ううん、叔父さん達は半月に1回ぐらいしか会えなかったから…」

「ごめん、俺よりひどい状況だと思わなかった」

 俺は聞いたことを後悔した。


 もうすぐヘーニル領を抜けそうだと思い、次の目的地を探しながらギルドに入った。そしたら、3人組のがたいがいい男達が

「おい、聞いたか?ハンテット子爵が捕まったみたいだぜ」

 えっ!?ハンテット子爵…って、まさか…アリーと顔を見合せた。男達の近くの席に座って、休憩しながら…耳を傾けたら…。

「あー、あの黒い噂があった所?」

「でも1年前に変わったみたいだよ」

「じゃあ、前子爵か…」

 その言葉にホッとして

「でも、新しい子爵は元々商人だったみたいだよ」

「じゃあ、内政とかはどうするんだ?」

「それであの依頼じゃないか?」

 男達は壁にあるクエストを見て指さした。

 俺達も壁を見たら、『ハンテット領で働いてくれる人募集中、給料は要相談』と、書いてあった。

「でもあんなクエストじゃあ、誰も受けないんじゃないか?」

「それに此処ここから一週間はかかるんだから…」

「そもそもあれ、クエストなのか?」

「そういえば…」

 そんな話を聞きながら、席をたって3人組の所に勇気を出して聞いてみた。

「すいません、ハンテットに行くにはどうやって行けばいいですか?」

「ハンテット?」

 3人組の顔を見たら、メガネをかけた人、優しそうな人、頬から大きな傷があり顔が怖い人、皆個性的で驚いた。

「さっき、近くの席に座っていたらその話が聞こえて来たので…」

 俺がびくびくしながら、すまなそうな顔をして

「あ、すいません…いきなり」

「いや、いいんだけど…リーダーの顔を見たら皆引いてくから…」

と、優しそうな人が答えた。

「俺達、ハンテットに知り合いが居るんですが行き方が分からなくて…」

「あぁ、それで俺らに聞いてきたのか…」

 頬に傷があるリーダーと呼ばれている人がそう答えた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る