第16話 照れ

 おかげで私とたまきも二人きりになれた――色々と聞きたいことが有る。聞くなという方がおかしい。しかし、一体何から話せばいいか。


「……」


「何も聞かないの?――いえ、何も聞かないで。答えなら出ているわ」


万千まちは一体どうなるの?」


「……。舞踏会ぶとうかいに行き、組織そしき代表だいひょうと会う――その先は彼女次第しだい大丈夫だいじょうぶ。彼女達は大郷司だいごうじさんに何もしないわ。しんじて」


「万千の事なんて心配してないよ。環の事も…。それに、環らしいと思うわ」


 環は自己じこ中心的ちゅうしんてきで、大概たいがい他人に対し眼中人無がんちゅうひとなしである。


 そんな彼女でも、物事に干渉かんしょうする時がある。たぶんそれは、本当に我慢がまん出来ないよっぽどの時なのだろう。


 彼女はむしろ、周囲しゅういや家を気にするがあまり、関心かんしんを無くしているのだと私は思う。


 傍若ぼうじゃく無人ぶじん言動げんどうは全て、その反動はんどうなのかもしれないと。


 しかし、やり方はどうあれ、すじは通っており、思いつきとかではないはず。意味も無く人を傷付きずつけけたりしたことは無い。と、信じている。


 女性じょせい解放かいほう戦線せんせんにしてもそれは変わらないだろう。きっと彼女のはらの虫をり起こし、それだけの何かが組織に、あるいはあの女性には有るのだろう。その価値かち目的もくてきが――。


「何よ、知ったふうなことを――貴女はまだ私を知らないわ。さぁ、もっと私について聞きつくしなさい」


「それじゃあ…。私が、環を止めようとしたらどうする?消す?」


「フフッ。あの人達なららないでしょうね――でも、私自身『おとめ』にならやりかねないわね…。おとめになら」


「それって女性解放運動のため?環、思いっきりきらっていたじゃない」


 忘れもしない、あの時の事は。めずらしく女性に、女性解放運動家にかかっていた環を。


「あんなカビくさ連中れんちゅうと一緒にしないで。それに私は、組織の一員じゃないわ」


「じゃあ、なんなのさ。私にもだまって、一体何をするつもり?――環。貴女あなた、一体何処どこへ行こうというの?」


ゆめの国。そこに行けば――」


ガララッ――。話をさえぎる様にが開かれ、万千が部屋から出てきた。あの女性も。


「さぁ、行こう。カボチャの馬車ばしゃを待たせている」


「話は終わったの?」

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