王女様を助け出せ!2
言うが早いが、階段を降りながら服を脱ぎ捨てていく兄に、ため息混じりにシンジがぼやいた。
「まだパンツが脱げなくてよかったね……。さすがに真っ裸だったら、うーたん……おっと、ウコン様に笑われちゃうよ」
などと言いながら、やはりシンジもポイポイと動きにくい服を脱ぎ捨てて行くのだった。
程なくして二人は以前ウコン王女を見かけた牢まで辿り着いた。さすがにここまで地下に降りてくると、お城の騒ぎは聞こえず、二人の歩み寄る裸足の足音だけがひたひたと響いた。牢の目の前まで行くと、あの黄色の髪の少女が座っているのが見えた。二人が歩み寄ってくる通路の方を向き、あの水の入った缶を抱きかかえる姿勢で座っている。よく見れば、あの水の缶は最初に飲ませてあげたあの缶ではない。彼らがあの時持ち運んできた缶は、そのままこの牢の近くに置いておいたはずなのだが、不思議なことに缶はすべて牢の内側に入っていた。その上、黄色い女の子の周りに転がるのはどうやら空っぽの缶ばかり。かろうじて、彼女が抱きかかえている缶だけが中身が入っている様子である。
「うーたん、迎えにきただべさ!」
「こんな所にいる人じゃないんでしょ? 僕たち、薬屋のお姉さんに言われて助けに来たんだ!」
姿を見かけるなり二人が声をかけると、ウコン王女は二人の服装(ほぼ全裸)に何の反応もすることなく、にぱーと笑顔を見せて答えた。
「薬屋のばあば、会いたいー! もみちゃんも会いたいー!」
その反応に双子は安心するが、発言を理解するのに少々頭を捻った。
「薬屋のばあば……ああ、王宮薬師だったって言うお姉さんとこのおばあさんのことだね」
「でも、もみちゃんて、誰だべか?」
「うーん、察するに薬屋のお姉さんのことじゃないかな?」
ウコン王女の言葉に二人がそんな推測をしている間、幼女は缶を軽々と持ち上げて、最後の水を飲み干していた。どうやら中身も残りもわずかだったようで、四歳児でも余裕で持ち上げられる重さだったらしい。
「うーたん、一旦離れるだ。『召喚……炎精!』」
シンは素早く両手で魔法陣を描くと召喚魔法を繰り出した。ものすごい高熱の炎魔法は、シンの手から離れた途端牢の鍵にぶち当たり、その鍵をまるでチョコレートの様に溶かしてしまった。しかし力加減はした様で、溶けたのは炎が直接当たった鍵と、一部の牢の柵のみだ。
「さ、うーたん、行くだべよ。おんぶしてやるだ。背中に乗るだべよ」
そう言って、シンが背中を向けるが、牢の中の幼女はただただじっと双子を見入る様に見つめるばかりだった。
「ウコン王女……?」
その様子に、思わず心配になってシンジが呼びかけた時だった。
「……のんのちゃん!」
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