王女様を助け出せ!3

 幼女の唐突な呼びかけに、思わず双子は目をパチクリした。

「の、のんのちゃん……?」

「なんだべ、背中に乗るなんて言ったから、のんのちゃん、なんだべかな?」

  双子が思わず首を傾げている間にも、うーたん、もといウコン王女はバタバタと足をふみ鳴らしながら両手をめいっぱい伸ばしてシンに訴えた。

「のんのちゃん、乗るの〜! 乗るの〜!」

「わわ、わかっただべよ、もちろん乗っていいだべさ、ホレ」

シンが慌ててしゃがんで背を向けると、ウコン王女はきゃっきゃとはしゃぎながらその背中によじ登った。それを確認してシンが立ち上がると、視界が上がって楽しいのか、シンの背中に捕まって、ブンブン体を揺らしながら王女はご機嫌だ。

「うーたん、あんまりはしゃぐと危ないだべよ。落っこちまうだべ」

「しっかり捕まっててね、すぐに外に連れてってあげるから」

双子の言葉に王女はご機嫌で大きくうなずくと、シンの首に腕を回しぎゅーっとしがみついた。

「く、苦しいだべ……」

「シン、遊んでる場合じゃないよ、早く行くよ!」

「あ、遊んでないだべさ、本気で……ぐえ」

そんなやりとりをしながら、双子と幼女は暗がりに吸い込まれるように消えていった。そして過去通ったことのある、あの地下通路を素早く駆け上がっていく。

外につながる古びた木の扉を押しあけた途端だった。

「遅い! 待ちくたびれたわよ!」

こそこそ声ながら、お怒り気味なお出迎えをしてくれていたのは、双子の友人、ヨウサだった。ヨウサとここでウコン王女の受け渡しをすることが、作戦の一部だったのだ。どうやらガイの影呑みの術を施されている様で、彼女の気配がとても薄い。見ればやはり、月明かりが差していると言うのに、彼女の影は見当たらない。術が発動している証拠だ。

「無事うーたんは連れ出せた?……って、きゃー! 二人ともまた裸なのーっ⁉︎」

慌てて顔を覆うヨウサに、シンがブンブンと首を振る

「失礼いうでねーだ、パンツは履いてるだ!」

「そう言う問題じゃない!」

「途中で薬が切れちゃって……いや、ヨウサちゃん、それよりウコン王女をお願い」

シンジの言葉に、本来の目的を思い出したヨウサがようやく振り向いた。

「うーたん……じゃなかった、ウコン様、大丈夫? 怪我はない?」

ヨウサの問いかけに、シンの背中から降ろされウコン王女はこくりと頷いて、今度はヨウサに腕を伸ばした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る