思い反する対峙2
「そろそろあなた達の薬も切れる時間も近いでしょ? この会場を抜け出して、ウコン様のところに行かないと」
「わかってるだべよ」
「今、どのタイミングで向かうか考えてたところ」
双子が即座に答えると、わずかに頷いてリタは答えた。
「バレないように向かう手立てを考えていたんでしょう? 女魔術師はもちろん、あの大臣と、さっき紹介されてた金髪の男の子にも見つからないようにすればいいのよね?」
「そうだべさ。まあ後は見張りのツタ兵士もできればだべな」
「抜け出すのはそんなに難しくないけど、地下牢に向かうところが危険だね。騒ぎになると厄介だし」
双子の悩みに、黒髪の少女は深く息を吸った。
「行ける隙があればいいのよね……。任せて、私が囮になる」
思いがけない言葉に、双子は思わず顔を彼女に向けた。リタはそれに気がつくと、すぐに目配せしてまたもさりげない風に話し出した。しかしその声はいささか震えていた。
「多分、私がクーフさんに近づいていけば、アニマ……あの女魔術師は必ず動くわ。きっとそこから騒ぎになるはず。だからその隙に」
「待って、リタさん! まさかそれが、さっき言っていた策なの⁉︎」
「おめーはどうするだ? ツタ兵士もあの一つ目……おめーの仲間も居るだべよ⁉︎ 一人で時間稼ぎするには危険だべよ……!」
双子が心配して思わず彼女の方を向き、声を上げるが、リタは振り向きもせず声だけで答えた。
「私だって、術者の端くれ……。クーフさんを囚われて、時間稼ぎもできないほどの腕前じゃないわ。確かに危険な相手だけど、やらせて。助けてもらった恩は返させて」
そう言い残し、黒髪の美少女は人ごみの中に紛れていった。双子は思わず顔を見合わせた。
「心配ではあるけど……」
「――ここはリタを信じるべさ。騒ぎになったタイミングですぐ地下に向かえるよう、今のうちに会場の出入り口に行くべさ」
「了解。うーたん助け出したら、すぐにリタさんに助太刀しようね!」
「おうだべさ!」
双子はこそこそとそんなやりとりをすると、お食事テーブルからようやく離れたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます