遠い日の約束6
双子の反応に、お姉さんは珍しく薄っすらと優しく笑った。
「なあに、薬草の礼だと思ってくれ。さあ、いよいよ明日の準備だ。お前たち、私のお膳立てはここまでだからね。しっかり受け取ってくれ」
そう言って、お姉さんは小さな小瓶を二つ取り出し、それを双子にそれぞれ手渡した。茶色の小瓶で、蓋には黒い鉱石が埋め込まれている。シンは中を覗いた。茶色の瓶で色が見えないが、振ると液体がチャポンと揺れた。
「これはなんだべ?」
「あんた達に使ってほしい、変装用の薬さ」
お姉さんの説明に、シンジが目を丸くした。
「え、これ飲んだら変装できるの?」
「ああ、少なくともお前らだってバレることはないだろう。あとは舞踏会用の服装に着替えて、このアサガオの花を胸に挿せば、問題なくあの城に入れる」
お姉さんの説明に、ガイが口を挟んだ。
「え〜、シンとシンジにはあるのに〜、ボクやヨウサちゃんにはないの〜?」
すると、お姉さんは思いがけないことを言った。
「城に侵入するのは、この双子さんとリタさんで十分だろう。寧ろアンタたち二人には、この作戦の裏側を手伝ってほしいのさ」
「裏側?」
思わずヨウサが聞き返すと、薬屋のお姉さんは真剣な表情で頷いた。
「大事な仕事だぞ。王女様救出のための下準備と、あの霧の湖の現れる場所を、事前に特定しておく係だからな」
その言葉に、ガイだけでなく双子までも声を上げた。
「ええ〜! またあの霧の湖にいくのぉ〜!?」
「何でだべ、おねーさん?」
「霧の湖がどうして急に出てくるの?」
三人のその問いに、お姉さんは深く頷いた。
「あんた達、霧の湖に出会ったんだろう。その湖には何が映っていた?」
お姉さんの急な問いかけに一瞬ポカンとする双子だったが、すぐに思い出したように言葉を続けた。
「何がって……自分じゃない変なのが……映ってただべよ」
「そうそう、トゲトゲした黒い影……」
「ええ〜、ボクはなんだか尻尾のながーい怪獣みたいなのが〜……」
と、咄嗟に口を挟むのはガイである。そんな三人にお姉さんは頷いた。
「そう、あの湖には自分以外の姿が映ることがある。それは、もう一人の自分――いつもなら隠されているもう一つの可能性――それが映し出されるのさ。
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