囚われの埃かぶり姫1
「無事、通り過ぎただべな……」
完全に魔術師と白スーツの男が見えなくなってから、シンとヨウサが柱の陰から姿を現した。その向かい側の柱の陰からは、シンジとガイも姿を現す。
「ふー……間一髪、だったね」
そう言ってシンジは額の汗を拭う。
「で、でも〜……この先の道でも、ツタ兵士は氷漬けでしょ〜? 怪しまれない〜?」
「あ、大丈夫。あの解除で全部のツタ兵士の氷、溶かしちゃったから」
ガイの問いかけにシンジが答えると、今度はヨウサがげんなりした表情だ。
「て、ことは……また帰り道、凍らせながら抜けてかなきゃいけないのね……」
言いながら、三人が水の缶を再び持ち上げた、その時だ。
「なんで俺様が指図されなきゃなんねーんだよっ!」
突然通路の先で叫び声が響いた。驚いて四人が顔を見合わせていると、どうやら何か言い争っているような声がする。思わず四人は声のする方向に恐る恐る歩み寄った。すると、彼らが通ってきた道とは別の細い道から、何やら少年と女性の声が響いてきた。そっと覗くと、思いがけずすぐ近くで彼らは言い争っていた。細い通路に入ってすぐの所に言い争う人物が居たのだ。
「あらぁ、別に指図したつもりじゃなくてよ? イオクロマとの取引が進んだから、伝えただけじゃないの」
「だったらオマエがエラソーに俺様に言うんじゃねぇ! イオクロマと取引したのは、この俺様だっ!」
言い争っていた一人は、案の定、あの女魔術師だ。そしてその魔術師に向かい合って叫んでいたのは――
「げっ……!」
「フェイカー……!?」
思わず双子の口からその名が漏れる。彼らの目に映ったのは、金髪を逆立て黒いジッパーの服を着た少年――そう、クヌギ国で散々彼らを振り回した問題児――フェイカーが言い争っている姿だったのだ。
「な、なんでこんなところにフェイカーがいるのよ……?」
「いや〜、ていうかその前にどうしてあの女魔術師とケンカしてるんだろうね〜……?」
状況が掴めず困惑する四人をさておき、二人の口論は続いていた。
「弱い犬ほどよく吠えるっていうけどぉ……ホント、いちいち細かいことにうるさいおこちゃまね」
「うるさいのはお前だっ! ガキ扱いすんな! お前こそ、少しはこの俺様の言うことを聞きやがれ!」
「あらぁ、聞いてあげてるじゃない? アンタが探している星魔球に近づくように、協力者のイオクロマに働きかけてあげてるんでしょう?」
その言葉に、思わず双子は顔を見合わせた。
「やっぱりフェイカーの狙いは星魔球だべな」
「この国にあるのは間違いないんだね」
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