いじわるな魔術師7

「見張りの兵がまたやってくると厄介だよ〜、早く確認しちゃおうよ〜」

 四人はそう言って、こそこそと角を曲がった。ヨウサ以外の三人は、例の水の缶を廊下の角に置いたまま、身一つでソロリソロリと歩み寄る。

 影呑みの術を使って、こっそりと覗きをするのは結構お得意の四人である。過去、この方法で敵の情報をゲットしているくらいである。まずシンが扉に張り付く。続けて残る三人も黒い扉に張り付くと、シンは無言で目配せし、三人が頷くのを確認してから、そっと扉を押した。

 本当に重たい扉で、シンが優しく押す程度では隙間もできやしない。息を吸い、徐々に力を入れていくと、ようやく扉が動き出した。数ミリ単位で扉が動くのを確認し、その速度のままゆっくりと扉を押していく。ようやく隙間が空いて、中の様子が覗ける程度になり、そっと四人はその隙間に瞳を合わせた。

 本当に1センチもないほどの隙間からでは、部屋の中の様子は見えても一部だけだ。でもその一部だけでも、この部屋がどれだけ凄いかは十分わかった。それもそのはず、目に入った光景は思わず息を飲む豪華さだったのだ。床は緑の絨毯がかろうじて見える程度で、それ以外は全てお宝の山で埋め尽くされていたのである。高級そうな金銀であしらわれた宝箱、床に直置きされるほどの溢れんばかりの色とりどりの宝石、そして重そうな革製の箱は開かれたままで、その箱から溢れるほどの金貨が床に落ちている。

「うわ〜……如何にも宝物庫って感じ〜……」

 廊下に這いつくばるようにして、扉から中を除くガイがぼやく。

「でも……誰かいるかしら……?」

 ガイの上では、中腰の状態でヨウサが中を覗く。

「静かに……人の声がするよ」

 その上では、シンジが少し腰を落として中を覗き込む。

「話し声だべな、聞いてみるべさ」

 そして一番上では、シンが扉を押さえたまま中を覗いていた。

 四人が聞き耳を立てていると、部屋の中から確かに人の声がした。

「百万……千万……億……素晴らしい! なんと、八十億もの売上です」

 数字を数える声は、どうやら男のようだ。落ち着きのある声色だが、随分と嬉しそうな様子である。

「フフ、そりゃあね、あれだけ売れば、それくらいの金額にもなるでしょう。で、どうなの? ワタクシの取り分は?」

 男の声に答えたのは女の声だ。色気のある艶っぽい声色に、ヨウサが息を飲む。

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