いじわるな魔術師8
「女の人……。女魔術師かしら……?」
その間にも部屋の中では会話が続いている。
「も、もちろん、お約束どおり、半分はお好きなようにしていいですよ……」
「あら、資金を欲していたのは貴方と、そして半分はアイツの取り分でしょう? 違うわ、ワタクシが欲しい物のことよ? ワタクシ、お金が欲しいんじゃないのよ。言ったでしょう? ワタクシが求めているもの……」
「は、はい、もちろん……この国の王宮魔術師として、権限はお好きなように……部下もお好きなように……」
女の声に男がたじろぐような声がする。その声を聞いて、四人は目を合わせた。
「魔術師、だって……!」
「この声の女が、女魔術師だべな……!」
「目的の人物、発見だね〜……!」
双子とガイが拳を握りしめているその間に挟まれて、ヨウサがしっと唇に指を当てる。
「肝心なのは、あの女魔術師の使っている術よ、なにかヒントが出てくるかもしれないわ、まだ聞くわよ」
ヨウサの言葉に、四人は再び聞き耳を立てる。すると、扉のその隙間に初めて声の主が姿を見せた。後退るようにしてその隙間に姿を表したのは、紫色のスーツを身にまとった、妙に細い男だ。頭には大きな葉っぱを付け、肌は樹皮のように茶色い。植物マテリアル族だ。
「あなたのお好きなように、部下をお選びいただいて構いませんよ。どんな男を選んでいただいても結構です……」
四人の目の前で、男は後じさりながらそう言うと、今度はその視界に黒髪の女性が現れた。白と黒の入り混じったコートのような服を着て、やたらと体のラインが強調される姿をしている。長い髪は左下にゆってあり、長い前髪の隙間からは切れ長な青い瞳が微笑んでいた。真っ赤な唇は怪しく歪められ、妙に艶っぽく光っている。その人物に気がついて、シンジが呟いた。
「あれが女魔術師……」
「たしかにナイスバディって感じだわね……」
シンジに続いて、ヨウサがその姿を見て唸る。
「フフ、それならいいの。ついでにワタクシの特別な部屋も欲しいわぁ……。ワタクシが楽しむためのお部屋が……ネ?」
いいながら、女魔術師と思しき黒髪の女が、紫のスーツの男のあごにそっと指を乗せる。その動きはいやに艶かしい。
「もも、もちろんです。ど、どの部屋にしますか……?」
「そうね……豪華なお部屋がいいわぁ……。たしか……王女様のお部屋……今、空いているものね?」
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