いじわるな魔術師4

 言うが早いが、シンジは右に左にと狙い定めて即座にツタ兵士を凍らせた。侵入者に気がつく暇など、与えぬスピードだ。

「やるわね、シンジくん!」

「ま、ボクの影呑みの術のおかげでもあるけどね〜!」

 そんなやり取りをしながらも、四人は着々と目的の部屋に近づいていた。右へ右へと進むに連れ、見張りの数が増えていた。しかしどうしたことか、人間の兵士は誰一人としていない。見つけるのは全部ツタ兵士ばかりだ。

「お城の兵士って、ツタばっかりなんだべかな?」

 さすがに不思議に思ったのか、シンがそうぼやくと、ガイが首を振る。

「そんなワケないと思うんだけどなぁ〜……。従属植物族は、確かに言うことよく聞くけど、弱点もあってね〜。自分の意志を持たないから、予想外のアクシデントはあまり対応できないんだよ〜。だから普通、お城の中の重要な場所なんかは従属種に見張りは任せないはずなんだけどなぁ〜」

 その言葉に、ヨウサが首をひねる。

「おかしいわね。宝物の部屋なんて言ったら、絶対重要な場所じゃない。そんな場所に近づいているのに、ツタ兵士ばっかりだなんて……」

「やっぱり〜あの女の子の言ったことはでたらめだったんだよ〜。きっと宝物の部屋ではないんだよ〜」

 そうガイが言った時、先を歩く双子が急に歩みを止め、壁に張り付いて柱の陰に隠れた。その様子に、慌ててヨウサとガイも続く。

「シンくん、どうしたの?」

 こそこそとヨウサが問えば、シンは通路の先をにらみながら小声で答えた。

「通路の行き止まりを見つけたべ」

「でも、大きな扉の前に、やっぱりツタ兵士がいる」

 双子が説明するその通路の先には、重そうな黒い金属の扉があった。その扉の左右には、如何にも豪華そうな白と金で彩られたツボと、それに生けられた大きな花々。そしてそのツボの横には、ツタ兵士がまたも立ちふさがっていた。見れば珍しく手に長い槍を持ち、如何にもその部屋を守っている、といった雰囲気だ。

「如何にも怪しい部屋だべさ。あの硬そうな扉、派手なツボ!」

「通路の終わりだし、宝物の部屋って可能性は高いよね」

 双子がそんなやりとりをしていると、ヨウサが困ったようにシンの服の裾を引っ張った。

「どうするのよ? 今までは不意打ちできたけど、思いっきり正面向いている兵士相手じゃ、氷漬けも難しいんじゃないの?」

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