いじわるな魔術師3

 とは言ったものの、このアーサガ城に来るのは当然初めての彼らである。城の造りなど知るはずもなく、行きたい二階への階段がどこにあるのかすらわからない。

「うーん……でも〜、どう行ったらいいかなぁ〜……」

 などとガイがキョロキョロしていると、思いがけずシンが迷いなく右側の通路を進みだした。それに気がついて、ガイが慌てて呼び止めた。

「え、シン〜? 場所わかるの〜?」

「さっきの女の子がずっと右って言ってただべさ。言うとおりに行ってみるだ」

 シンが言うのは、先程牢屋で出会った金髪の小さな女の子のことだ。女の子の発言を思い出して、シンジがああ、と声を漏らした。

「そういえば、ずっと右って言ってたっけね」

「本当に私達の探したいものを分かって言ってたのかしら……。ちょっとそこは不安だけどね……」

 ヨウサが半信半疑の様子を見せると、シンはあっけらかんと言い切った。

「他に情報もないだべさ。それにあの女の子、きっとオラたちにお礼したかったんだべさ。素直に受け取っておくべさ」

 なんの根拠もないのだが、こういう時のシンは迷いがない。そんな兄の様子に、シンジも笑みを浮かべて後に続く。

「そうだね、試す価値はありそうだしね」

 するとどういうことだろう。緑の絨毯の通路を右に進むと、程なくして階段を見つけることができたではないか。

「おお、ホントに二階に続く道だべさ」

「二階の何処に行けっていってたっけ?」

「確か宝物の部屋って言ってたべ。すみっこって言ってただな。ずっと右にひたすら進めばいいんだべかな?」

「多分ね。見張りがいるかも知れないから、静かにね」

 そんなやり取りをしながら、双子は階段を登り始める。すると階段の踊り場に出ないうちに、すぐ見張りがいることに気がついた。階段を登った先にいるようで、ツタ兵士の奇妙な影が踊り場に落ちている。

「とりあえず、凍らせとくよ」

と、踊り場に出ると同時にシンジは氷魔法を発射する。影呑みの術で気配が薄いおかげだろう。ツタ兵士は彼に気づく暇もなく、氷漬けになってしまう。

 それを確認して、シンジとシンは即座に階段を登りきり、左右に広がる通路の様子を見る。案の定、通路の左右どちらにもツタ兵士が見張りとして立っていた。氷漬けの仲間に気付かれては大変だ。

「また見張りだべ!」

「任せて!」

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