美少女と怪人4
振り上げたステッキを鋭い風の刃が弾き飛ばした。カランと乾いた音を立て、ステッキが地面に転がるその隣で、風の刃に気がついた一つ目紳士が後ろを向いた。見れば短剣を構えたシンが一つ目紳士を睨んでいた。そう、先程の風の刃は、シンの放った風魔法だったのだ。
「女の子いじめちゃ駄目だべさ!」
「紳士の格好のくせに、紳士らしくないよ!」
兄に続いてシンジもそう続けると、一つ目紳士は双子に向き直った。
「なんだべ、今度はオラ達にケンカ売るんだべか?」
しかし、そう尋ねるシンの言葉には答えず、即座に一つ目紳士は双子めがけて突進してきた。そして同時に、大きく右手を薙ぎ払う仕草を見せた。即座にその手刀に気がついたシンは、呪文とともに上に飛び上がった。
『
シンは風と炎の魔法の使い手、空を飛ぶのはお手の物だ。たちまちふわりと空中に舞い上がり、紳士の手刀を避けると、今度はシンジがその手めがけて呪文を唱えていた。
『
たちまちシンジの右手から冷たい氷の風が飛び出し、一つ目紳士の右手を氷漬けにした。シンジは水と氷の魔法の使い手、敵を氷漬けにできるほどの強力な魔法も使いこなせる。一つ目紳士は、凍りついた右手に、痛みのためか思わず地面に跪いた。
その隙をシンが見逃すはずがなかった。
「動きを止めてやるだ!『
と、その両手に炎を発生させ、投げつけようとすると――
「やめて!」
思いがけず静止する声が響いた。
シンが慌てて攻撃の手を止めると、なんと先程の黒髪の少女が、一つ目紳士を庇うように両手を広げているではないか。
「え、えええ!? なんでだべ!?」
「え、君、こいつに襲われていたんじゃないの!?」
驚いて目を丸くするシンに続き、シンジも思わず尋ねると、少女は苦しい表情をして頷いた。
「そうだけど……でも、違うの! お願い、攻撃をやめて!」
困惑して攻撃を止めたシンの足元で、跪いていた一つ目紳士がギラリとその大きな瞳を少女に向けた。それにいち早く気がついたシンジは体当りするように少女にぶつかった。
「危ないっ!」
その直後、一つ目紳士の凍っていない左手の手刀が、シンジと少女の頭上を勢いよくかすめた。二人が地面に倒れ込むと、今度は逆に紳士は立ち上がっていた。
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