美少女と怪人1


 薬屋を出て、最初に口を開いたのはシンだった。

「とりあえず、もう必要な買い物は終わったんだべ? 今回の余ったお金で買い物しようべさ!」

「さんせーい!」

 シンに真っ先に同意したのはガイだ。二人ともすでに口の端からよだれが出ている。

「もう、二人とも買い食いが目的ね?」

 ヨウサが少々呆れ気味に言うが、そういう彼女の頬もついにやけがちだ。

「なんてったって、僕らが見つけて売って、僕らが稼いだお金だもんね。ちょっとは自由に使いたいじゃない」

 シンジもにこやかに言うと、ヨウサはそりゃあね、と笑顔だ。

「じゃあ、じゃあ、買い物してもいいんだべな!」

 シンが興奮気味にいうと、ヨウサはお財布を開けてコインを数えだした。

「ちょっとは残しておくけど、残りは山分けしてもいいわよね。四人だから四で割って……はい、一人二百リフ!」

 ヨウサがそう言ってお財布からコインをそれぞれに手渡す。それを手にしたシンが、喜びのあまり跳びはねる。

「やっただべ〜! これで果物買えるだべよ〜!」

「ん、果物一つ三百リフだよ? もしかして、僕も一緒にお金出すの?」

 そんなやり取りをしながら、四人は村に遊びに出ていくのだった。

 四人の行きたい所はバラバラだった。シンとシンジは果物屋、ヨウサとガイは道具屋に行きたいと言うので、ここで別行動だ。待ち合わせは先程まで居た薬屋さんの前で、という約束になった。

「で、さっそく果物屋さんだね」

 兄と一緒に行動することになったシンジが、シンの顔を覗き込みながら言う。

「そうだべさ! あそこの果物屋さんにあったのは、絶対マゴマゴの実だべさ!」

「ああ〜、学校の寮の食事に出てたヤツか! あ、それなら僕も食べたい!」

と、双子がウキウキ気分で果物屋に行くと……

「ああ、このマゴマゴの実か。すまないがしばらくは売れないんだ」

「ええ〜〜!!??」

と、衝撃の発言で迎えられた。

「どどどどどどーしてだべ!? マゴマゴの実といえば、この辺の特産物って聞いてただべよ! 楽しみにしてただべよ〜!」

 猛烈にシンが抗議すると、果物屋のおじさんは申し訳なさそうに頭を垂れた。

「いや、ホントに申し訳ない。マゴマゴの実は美味しいだけでなく、栄養も満点だからね。これはしばらくお城に献上しなきゃいけないんだ」

「お城に献上? 全部ですか?」

 おじさんの言葉にシンジが首をかしげると、おじさんは肩を落とした。

「実はアーサガ城の王女様が重いご病気でね。なんでも、王女様の薬作りには欠かせない品らしくてな。一日も早く王女様には元気になってほしいから、オレたちも協力したいのさ。悪いな」

 そう言われてはさすがに反論もできない。シンとシンジは顔を見合わせてため息を付いた。

「しょうがねーだべな……」

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