第2章 忍び寄る暗雲

閑話:彼の過去あるいは未来


 間に合わなかった。



 間に合わなかった。



 みんなが託してくれたのに。

 


 俺がやらなければいけなかったのに。



 世界を塗り潰した黒い波が引いて行く。



 やめろ。



 やめてくれ。



 みんなを連れて行くな。



 ああ、海が消える。



 思い出が飲み込まれる。



 幸せな記憶が蹂躙されていく。





 ――そして今日も俺は、物言わぬ人形のようになった彼らの前で目を覚ます。



 嫌悪から来る吐き気を抑え、立ち上がる。



 行かなくては。



 みんなを取り戻さなくては。



 大嫌いな世界。



 大嫌いな人間たち。



 全部全部、ぶち壊してでも。

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