星空

第1話

あなたが一人、丘に立つ

見上げていたのは黒い空

「星が綺麗だね」

呟いたあなたは振り返り、微笑んだ

あなたはいつも不思議だった

いつも空と一緒に居るようで

まるでこの空が無いと消えてしまいそうで

そんな事を感じても

言えない自分に嫌気がさした

「何してるの」

「星をみてるの」

微笑むあなた

黒い空には星は見えない

あなたが星に攫われそうで怖かった

「そんなの見えない」

そう言って顔を下げる自分

風が吹いた

「君には見えないよ」

そんなあなたの声が聞こえた

まるで子供をあやす様な声

顔を少し上げる

あなたは困った顔をしていた

そっと近付き、抱き締められる

最初から分かっていたのかも知れない

現実を見たく無かっただけなのかも知れない

あなたとでは住む世界が違う事に

もう一度あなたが見上げたのは黒い空

「星が綺麗だね」

そう呟くあなたの声は一生忘れないだろう