第173話 ボスは理不尽なもの

 再びやってきました巨大洞窟、もとい赤き鼓動の迷宮。

入り口前には多数の兵士が野営をしていてキャンプ場のようになっていた。

彼らはダンジョン内には入らない、俺たちが失敗したときのための最終防衛ラインといったところか。


 その最終防衛ラインの人らの中でごく一部、やけに情熱的に「どうかご無事で!」と言い寄ってくるやつらがいて、あ、はあ、まあがんばりますとか適当に返事しながらダンジョン入ったのだけど、入った後でさっきの人らは前に一緒に行って大変な目にあった人たちだ、と思い出した。

皆同じ鎧姿なので判別が難しい、基本ごついのはイスベルグだけだ。


 ダンジョン内は夜でも例の、謎の壁発光現象によって明るさがあった。

この中でずっと過ごすと時間の感覚がおかしくなるんだよな。


「それにしても、することありませんねぇ」


 ロンフルモンの意見に同意。

既に戦闘が何度か発生しているのだが、そのすべてが約二名の働きによって片付けられていた。


 その内一人はイスベルグ、今日は半身をほぼ隠すくらいの大きさの逆三角形の盾、カイトシールドというんだったか、それと片手剣装備をしている。


「実戦でこの装備を少々慣らしておきたい」


 そんなことを言って先頭に立ち、遭遇する敵を真っ先にぶったおしてしまうのだ。

その姿は見ていて慣らす必要あんのかな?と思うほどに強い。 

なんだろう…隙が無いっていうのかな、盾を持ってガッシリ攻撃をとめ剣で反撃という地味ともいえる行動には後ろで眺めてる俺たちに安心感みたいなものを与えてくれる。

マーくんも「あれが剣豪…確かに強いな、ヴォルガーの防御並に堅そうだ」と感心していた。

ていうか俺より堅いんじゃない?


 そして鉄壁のイスベルグのやや後ろにはエルフのディムがいる。

魔物の数が多いとさすがにイスベルグ一人では難しいので俺たちも援護しようとしたら「この程度なら俺一人が手を貸せば問題ない、ヴォルガーたちは本命にそなえて温存してくれ」とイケメンムーブで颯爽と魔物の群れを片付けてしまった。


「はあーディムさんは本当に攻撃魔法が凄いのです」


 今もまた、前二人で五匹のレッドフォックスを瞬殺したところだった。


 手に持ったハンマーを振るう機会の無いフリュニエが言う通り、ディムは攻撃魔法に優れている。

彼の戦闘スタイルは完全に魔法一点だ、職業で言えば魔法使いだ。

手にはなんかいわくありそうな水晶がついた杖を持っており、その杖を振るって魔法をバンバン放つ。

魔法の属性は風、エルフ族ってのはやっぱ基本風なんだな。


「薬草を取りに行ったときもディムさんとマグナさんがほとんどの魔物を倒しちゃったのです、なので私もロンフルモンもそんなには疲れてないのです」

「私は疲れてますよぉ、普段は部屋にこもって研究してるんですから、山歩きだけでもこたえます」

「いつも部屋にこもって本ばかり読んでるのがいけないのです!」

「魔法の研究というのは大部分はそういうものなんですよ」


 軽口を叩きながらじゃれあう二人は緊張感に欠けているようにも見てとれるが、たぶんこれは戦いに慣れてるものゆえの態度なんだろう。

この二人もなんだかんだ並の冒険者ではない。


 戦い慣れというか戦いが大好き!なマーくんは今のところ不気味なほど大人しい。

俺たちと一緒に後ろで控えてるグループに属している。

俺としては「我にもやらせろ!」とか言って前に出るかと思ってたんだが…


「ククク、まだだ…まだその時ではない…」


 等とぶつぶつ呟きながらニヤニヤして不気味な感じを出している。

それに気づいているのかロンフルモンたちも特にマーくんには触れない。

話しかけないという正しい対処方法をとっている。


 そんな感じで進んでくと堂々とさぼる四名に対し、イスベルグが近づいて来た。

さすがにさぼりすぎてしまったか?怒られちゃう?


「1層の広間にそろそろ着くぞ」


 違った、目的地が…あれ、なんかその広間のほうからいっぱい人が走ってきたけど?


「イスベルグ様!!キ、キマイラが!もうそこまで来ております!」


 こちらに来た人たちは八名ほどの兵士たちだった、どうやら今まで1層の広間で待機していたらしい。


「なに!ならばお前たちは先に撤退しろ!」

「我々も戦います!」

「いらん、同士討ちを避けるために戦うのは私と私の連れてきた者たちだけだと事前に通信クリスタルで伝えたはずだ」

「しかしいくらなんでもたった六名では…!」

「もしお前たちが幻覚を見て混乱し私に襲い掛かってきた場合、恐らく手加減はできん、殺すことになるぞ」


 そう言われて兵士たちはゴクリ、と唾を飲んだ。

俺が魔法で治せばいいんだが…ここはさっさと撤退してもらうために言わないことにする。

残られると俺含め計14名にもなるしな、それはさすがに支援するのはキツイっす。


「さっさと行け!外の部隊に戦闘がはじまったと伝えろ!!これは命令だ!」

「は、ははっ!!」


 命令と言われて兵士たちは俺たちが通ってきた道のりを出口へ向けてすたこら走って行った。


「聞いていたな?どうやら敵のほうが一足早かったらしい、広間に行けばすぐ戦闘になる、ディムは今のうちに魔力ポーションを飲んでおけ」

「1割ほどしか魔力は使ってないが、まあ飲んでおこう」


 ディムはそう言って魔力ポーションを飲んだ、顔がゆがんでいる、やはり不味いものはイケメンであってもああいう顔になるのか。


「ヴォルガー」

「ああ、わかってる」


 イスベルグに名前を呼ばれて俺は支援魔法を皆にかけはじめる。


「面倒だから最初は一気にいくぞ<ウェイク・パワー・サークル>!!」


 範囲型支援魔法で全員に一度に強化魔法をかける。

マーくん以外の、これを見るのが初めての面子はなんかめちゃ驚いてた。

驚いているところ悪いが時間がもったいないので気にせずフル支援を続ける。


「クク!いよいよ我の封印を解くときが来たな…!」


 マーくんがそう言いながら俺に目で合図してきた。

ああはい、ここでやるんだな。


「<バースト・マジック><ダブル・スペル>」


 範囲化できないタイプの支援魔法をさらにマーくんだけにかける、前にロンフルモンにかけたら火力過剰になって一気に魔力使いすぎて気絶したやつだ。


「何をするつもりだ?」

「まあ見てろ、我の秘められし力を解放してやる」


 イスベルグの質問に対し、右腕に巻かれた包帯を解いていくマーくん。

その包帯はいつもしているものとは違う、俺が技術局であげた特別な包帯だ。


「封印…まさかマグナはその包帯によって力をあえて封じていたのですか!?」

「ククク…」


 すまないロンフルモン、別に封じてはいないんだ…!

あの包帯は…見た目だけっ…特に意味なし…!


「この包帯、よく見たら難しい字がいっぱい書いてあるのです!!」


 包帯には『臨兵闘者皆陣列在前』と書かれている。

いわゆる九字というやつだ、日本じゃ忍者が使ってたとか言われてる呪文みたいなもの。

ただ今回、それによって何か特別な効果があるとかは一切ない。

たんに難しい漢字なんかないかなと考えたときちょうど思い出したから書いたのだ。

しかも九字だけじゃ短すぎたのでその後ろには『弱肉強食』とか『八方美人』とか適当に思いついた四字熟語を書いて最終的にあー漢字も書くのめんどくせえなってなって『This is a pen』とかどうでもいい英語も混ざってる有様になっている。

どうせ誰も読めねえだろうからいいだろって思っちゃって。


 要はマーくんが納得する物であればなんでもよかったのだ。


 そう、これは俺がマーくんに教えたこと。


「マーくん、今から教える魔法はとても危険なんだ、なので普段は力を抑えるために特殊な包帯を腕に巻いてその魔法を封印しておいて、いざとなったら包帯を外して使う、という設定…じゃなくてえー、まあ、なんだ、秘密兵器、切り札って感じで使う魔法になるけどいいか?」


 しつこく新たな魔法を教えてくれとマーくんに言われた時、俺はそう教えた。

マーくんはこれを大層お気に召して急いで包帯を作らされた。

んで、使うときは包帯を外すのを合図に俺が魔法を最大強化するからたぶんいけるんじゃないとか適当なことも言った。


「影に潜みし闇の眷属よ!今こそ我が命に応じその力を解き放て!」


 俺が10秒くらいで考えた詠唱を高らかに叫びマーくんは地面に手をついた。

俺が考えたって絶対知られたくないな、黒歴史になっちゃうやん、いやまあこの世界ならセーフかな…?


「<シャドウ・サーバント>!!」


 ずるり、って効果音がつきそうなイメージで地面から黒い、かなり大型の四つ足の獣が出てきた。

それも二体、全身黒くて目もなにもないんでわかりづらいけど狼…かなあ?一番近いの。


「魔物を呼び出したのか!?」


 魔法に詳しそうなディムも驚いているからやっぱ誰も知らねえ魔法になっちゃうのかな。

一応ほわオンにはあった闇魔法になるんだけどこれ。

召喚魔法の一種で一時的に戦闘に参加してくれる味方を呼び出すという。

二匹いるのは<ダブル・スペル>の効果がちゃんときいてるからだろうな。


「これは魔物ではない、我が魔力で生み出した闇の僕。さあゆけお前たち!広間の中にいる敵を蹂躙しろ!」


 マーくんの命令によって二匹の…黒狼(こくろう)とでも呼ぶか、黒狼は広間の中につっこんでいった。


「良く分からんが今のは味方ということでいいんだな?」


 イスベルグの問いに頷くマーくん。


「よしっ、ならば私が次に突入する!全員私の後に続け!」


 俺たちはイスベルグに言われた通り、彼女の後に続いて広間に突入した。


「グオオオオオオ!」


 広間の中には吠えるツインテールキマイラが六体、そしてそいつらの背後に控えている一回り大きなエイトテールキマイラ。

前に見たときと同じだ、ここまで来ちゃったんだな。


 その魔物たちの間を跳ね回る二匹の黒狼。

飛び付いて噛みつきやひっかき攻撃を繰り出してはいるがさすがに二対七では分が悪いな。

まあそれでもやられずに、もってるところが凄いんだが。

むしろ…ゲームのやつより強くない?


 普通<シャドウ・サーバント>ってこんな使い方したらすぐやられて消える魔法なんだけど。

だって召喚した本人より弱いやつを使役する魔法なんだし。


「ハッハァ!どうだ我の<シャドウ・サーバント>は!!」


 喜びいっぱいにマーくんがその乱戦に加わって<ダークボール>をはなつ。

いやあ…教えといてなんだがプラシーボ効果ってすごいな。


 プラシーボ効果とはいわゆる『気のせい』である。

なんかの病気の人に対し、全然効果のない薬を「これさえ飲めばすぐ治りますよ」とか言って飲ませると元気になったとかいうやつだ。


 実はこの数日で俺は魔法の使用はプラシーボ効果が関係してるのではと思うようになった。


 詠唱が無くても使える人は魔法を使える。

と、いうことはだ、この『詠唱』という存在は一種のプラシーボ効果ではないかと結論づけたのだ。


 例えばコムラードにいる冒険者パーティー「調和の牙」に所属するモモは俺と同じく光魔法が使えるが、無詠唱ではまだ何も魔法は使えないと言っていた。

これはでも彼女からしたら『詠唱』さえすれば魔法は使える、そういう風に思ってるのではなかろうか。

無詠唱で使えるようになった人たちは、たぶんそうして何度も繰り返し魔法を使ううちに『詠唱』をせずとも発動する魔法のイメージがしっかりできるようになって、無詠唱で発動可能になったんじゃないかなと。


 簡潔に言うと自信家で思い込みが激しい人ほど、魔法が強い。

だからマーくんは強い。


 そして…


「お前らの相手はこの私だ!<プロヴァケイション>!!」


 イスベルグの放った挑発の魔法が全てのキマイラの注意を引いた。

一体だけではない、全部だ、エイトテールキマイラも含む。

イスベルグの<プロヴァケイション>は成長していた。


 そのイスベルグに向かってキマイラたちが一斉に<ファイアボール>を放った。


「<グロリアスシールド>!」


 イスベルグの構えた盾が輝き、飛んでくる<ファイアボール>を全て盾に引き付けた。 


 ボンッ!ボンッ!と爆炎があがる。


「イスベルグーーーーっ!」


 フリュニエが叫ぶ、いやあわかっちゃいたけどイスベルグのやつ無茶するなあ。


「この程度の魔法、何発受けようが問題ない!!」


 炎はすぐにかき消え、イスベルグが無事な姿を見せた。

ノーダメージっすよみたいな言い方してるがたぶんダメージはある。

<グロリアスシールド>は魔法半減の効果がある魔法であって魔法無効化はできない。

それを知っている俺はイスベルグに駆け寄ると<ヒール>をかけた。

ついでに魔法防御をあげる<レジスト・マジック>もかけなおす。


「大型は私とヴォルガーで食い止める!お前たちはその間に小さいのをやれ!」


 その声で他の皆がツインテールキマイラを仕留めるために走った。

マーくんは言われずとも既にあらぶっていてツインテールキマイラを一体闇の剣で仕留めている。

ディムもさっきの一斉<ファイアボール>の隙をついて風魔法で二体の足にダメージを与え、動きを抑えていた。


 動きが鈍った二体の片方をロンフルモンが炎の鎖によって完全に動けなくする。

そこへフリュニエがその手に持った巨大なハンマーを振り下ろし、頭を叩き潰した。

さらにもう一体の動きが鈍ったツインテールキマイラは、黒狼二匹による噛みつき攻撃でトドメを刺されていた。

これで残るツインテールキマイラは三体。


「はああああああっ!」


 イスベルグはまだ自分に注意の向いている三体のツインテールキマイラをどけといわんばかりに剣で切り払った。

ちゃんと当たっていないので大したダメージは与えていないが、キマイラたちはその場から飛びのく。

そのあいた隙間を本命のエイトテールキマイラに向かって駆け抜ける。

っておい俺を置いてくなよっ。

慌てて俺も後を追う。


「ぐ…ああっ…ぐううう」


 前を走るイスベルグが呻き声をあげて足を急に止めた。

目前にはエイトテールキマイラがいて、尾の部分にあたる八匹の蛇がこちらを睨んでいる。

本体部分は口を開けて…ああやべ、この位置だと次の魔法、直撃くらうな。


「イスベルグ!俺が教えたもう一つの魔法を使え!」

「ぐ…ああっ、あれか…<バニッシュメント>!!」


 <バニッシュメント>は自らにかけられた不利な効果を打ち消す魔法だ。 

今イスベルグの足が止まったのはエイトテールキマイラの使う『重圧の魔眼』のせいだと思われる。

こいつはボスタイプのやつだけが使う特殊な技で、食らうとその場から動けなくなる。

マーくんみたいなスピードタイプの戦士が食らうと割と致命傷になるな。

しかもこれ魔法じゃないから防ぎようがない上に俺の持つ回復魔法では治せない。


「動けるぞ…!効いたのか私の魔法が!」

「そうだって…あっ、話してる暇なかった<ディスペル・オーラ>」


 イスベルグは<バニッシュメント>の魔法で無事、重圧の魔眼を打ち消したのだがぼさっとしてたのでエイトテールキマイラの口から放たれた<ファイア・エンド・ライン>というやばめの三節の火魔法をもろに浴びた。

こいつは三本の火柱が地面を這うようにして向かってきて直撃するとたぶん俺以外だと即死するかもっていう威力。


 パリンっ、とガラスが割れるような音と主にその火柱は全部消えた。

イスベルグにかけた<ディスペル・オーラ>が全部防いだのだ。

でも三本あるから<ディスペル・オーラ>も一瞬で剥がれて消えた。


「今…」

「とりあえず今の火柱は俺が魔法で防いだけど次きたら同じようにすぐには防げないから!とにかくアイツが口を大きく開けたら正面から逃げて!」

「なぜその魔法も私に教えておかんのだ!」

「無茶言うな!今のは光魔法で防いだんだ!」


 俺がイスベルグに教えたのは<グロリアスシールド>と<バニッシュメント>の二つ。

どちらも俺も習得してて、実際に使って見せて試しに真似してやってみてとかいったら…なんとイスベルグは習得してしまった。

<バニッシュメント>なんかデバフ消去という何かされなきゃ使ってもよくわからないのによく覚えたなと感心した。

ちなみに<プロヴァケイション>は一体じゃなくて周囲の敵を自分に引き付けると思えとか教えたらそれもできるようになったしとんでもねえよ。

イスベルグは本当に盾の魔法に関して才能があるのだと確信させられた。


 教えた二つの魔法と俺の支援があれば、エイトテールキマイラも耐えられると思った。

実際、その二つを駆使してイスベルグは完全にエイトテールキマイラの注意を自分に引き付けている。

傍でうろちょろしながらあちこちに支援魔法を飛ばしてる俺がうざいと感じたのか、たまにエイトテールキマイラが俺に向かって攻撃しようとするのだが、そのたびにちゃんと<プロヴァケイション>で敵意を自分のほうへ向けるように立ちまわっている。


 そうやって時間を稼いでいると、マーくんたちが一体、また一体と確実にツインテールキマイラの数を減らし、とうとう全てのツインテールキマイラを倒した。


 これで敵はボスの一体のみ。

あとは全員でタコ殴りするだけ!

あっ、マーくんの黒狼はさすがに時間切れで消えたか…

でもまあそれでも六対一だ、いけるな。


 マーくんの闇の剣が尾の蛇を一つ切り落とす。

ロンフルモンのナイフがキマイラの体に突き刺さり燃え上がる。

フリュニエのハンマーが暴れる足を打ち砕いて止める。

ディムの風魔法が尾の蛇を残り全部切断…つかディムつええな、マーくんが二匹やってる間に六匹斬り落としたぞ。 


 俺は何やってるかって? 

はい、一生懸命支援魔法を皆にかけなおしたり<ヒール>をイスベルグにかけたりと地味な仕事をしています。

大事だよこれ?


 あとたまに嫌がらせなのかエイトテールキマイラが『重圧の魔眼』をイスベルグだけじゃなく俺にも使ってくるのでそれも自分の<バニッシュメント>で消したりとか結構忙しい。

まあ蛇が全部切り落とされてからはそれも無くなったけど。


 尾も無くなって、ナイフ刺されるわ足が砕かれるわと悲惨な目にあってるエイトテールキマイラはよろよろと瀕死な感じになってきた。

後は思い出したように口から放つ<ファイア・エンド・ライン>に気をつけてればなんとかなるな。


「フリュニエ!頭を狙え!」

「わかったのです!!」


 最後の一撃を一番の怪力の持ち主が放つ。

俺の<ウェイク・パワー>もかかってるから相当ヤバイ。

フリュニエの一撃で原型残るかな、というどうでもいいことを考えていたら


「わわっ!?」


 なんかエイトテールキマイラの全身が光ってフリュニエはまぶしくてバランスを崩し、こけた。


「なんだっ!?おいヴォルガー!これは何が起きている!」


 ぶわっ、と光と共に衝撃派のようなものを感じて、一瞬目を閉じた後…


「な…こんなことが…冗談でしょう?」


 ロンフルモンの呟きはその場の全員が思ったことと同じだっただろう。


 死にかけだったエイトテールキマイラの周囲には、いつの間にか十体のツインテールキマイラが出現していた。


 ボスが使う取り巻きモンスターの再召喚…

おいおい、そんなとこまでゲーム再現しなくていいよ…嘘やろ?

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