第2話 オフ会における男の発想
なんでバレたんだろう。
俺が明日この「ほわオン」のオフ会に出かけることが。
ほわオン…正式名称は「ほわほわオンライン」バカみたいな名前。
ほわほわってなんだよ、最初見たときはそう思った。
この名前で本格的なファンタジー系のVRMMOだってわかる人いねえよ。
ヴォルガーという名前の俺もアイシャという金髪のねーちゃんもこのほわほわオンラインという、いわゆる電子上の仮想世界であるゲームのキャラクター名だ。
そしてオフ会というのはこのゲームで知り合った…まあ別のプレイヤーたちと現実で会ってなんかして遊びましょうみたいな、はは、ちょっとした同窓会みたいなノリで飲んで騒ぐだけだから全然やましいことはないとアイシャが信じていると俺は信じてる。
だから冷静に対処すればなんら問題ない。
「ああうん、そう、知ってたんだ?ウチのギルドの誰かが言ってたのかなー?」
「はい、先日ヴォルさんを街で待ってるときに、かいわれさんが今度オフ会やるんだーって」
かいわれ…俺のギルドのメンバーの一人だ。
少女の姿をしたキャラクターを操る中身は俺と同い年の33歳のおっさんだ。
余計なことをしやがって。
明日のオフ会は一応俺のギルド…よく一緒にこのゲームで遊ぶ仲間たちで作った集まり…を中心とした人たちでやる予定だがゲーム上ではギルドメンバーの半分が美少女といえど実際に会って顔をあわせたらむせかえる男臭がする拷問になる。
あいつらまじでなんでおっさんで集まりたがるんだ?
だから俺は当初オフ会の話が出たとき全然これっぽっちもやる気なかったのにギルドのマスターなんだから出ろやとか言われてはー?やだよ、女の子もいねえしどうせ最後はボス狩りとかに行くとか言い出して、朝までゲームさせられるハメになるしとぐちぐち言ってたら
「あーいいなーウチらも参加したーい」ってちょうど一緒に狩りをしてた仲のいい別ギルドのマスターが乗り気になってじゃあ仕方ないからやるよってなった。
その突然参加の意思を表明した子がリアル女の子であるという事実が関係していなくもない。
「あのそれで、ヴォルさんに聞きたいことがあるんです」
「え、えーと何かな?」
聞きたいこと、やべえ、なんだろ。
アイシャも誘うか迷ったんだけど俺以外とあんまり付き合いないし知らない人もいっぱいくるから嫌かなーって思ってそれで今回は伝えてなかったんだけど、とか言い訳をまとめてる最中
「オフ会ってなんですか?」
…私に黙ってオフ会ってどういうことですか?という意味だろうか。
いやたぶん違う、これはオフ会という概念について聞いているのだ。
そうに違いない、そうであってほしいから。
「何ってえーと、聞いたことない?」
「ないです…『会』ってことは何かをする人の集まりですよね?」
「大体あってる、えーっとそうだな…」
この子たまにおかしいこと言うんだよな。
最初会ったときもめちゃくちゃゲームプレイ下手くそだったしゲーム自体初心者というかネットもほぼ初心者っぽい発言をする。
VR用のゴーグル付きのヘッドホンみたいなハードウェアが世の中に普及してきてから、こういう人もいるらしい。
パソコンでネットゲームをずっとしてた世代からはピンとこないのだが今までパソコンには触ってなかったけどゲームだけするためにネット回線を用意した、という感じだろうか。
「普段さ、俺たちはこのほわオンで一緒に遊んでるけどたまにはゲームの外、つまり現実で一緒に遊ぼうぜという人々が集まる会かな」
「ヴォルさんの本体と会えるんですか!?」
本体て。
なんだその言い方、ちょっと面白いな。
オフ会で使おうかな、ヴォルの本体ですって言って。
「簡単に言うとそういうことかな」
アイシャにそう返すと彼女は何か考え込んでいるのか少し黙って、無駄に造形にこだわって作られたキャラクターが考え込むようなポーズをとった。あごに軽く手をあてて下を見ている。
ほわオンの開発陣の意味不明な熱意を感じる一部分だな。
「それって…かいわれさんたちと実際に会うってことですよね」
「一応言うけどあいつ中身おっさんだから」
かいわれはどうでもいいんだかいわれは。
俺の目的は別ギルドのマスターであるみかんちゃんであって、オフ会の打ち合わせと称してビデオチャットとかして可愛い女子大生だということも確認して、最終的に俺がオフ会の後、こっそりと彼女の住むアパートにお泊りするという勝利の未来まであと一歩のところまで来てるんだ。
みかんちゃんのことが好きなのかと言われたらまあはい、泊まりたいくらいにはと言うしかない。
そしてアイシャのことも嫌いではない。
どっちかというと素直でなんでも俺の言うこと信じるあたり好きなタイプなのだが、それはまだゲーム上での好きであって、女子大生お泊りコースと天秤にかけることはできないんだ。
大体プライベートの話はほとんどしないし。
言動を見る限りでは女だと思うけど本当にそうかは知らないし。
「私も…ヴォルさんに会いたいです」
ぼんやり考えてたらアイシャが突然そう言った。
なんだと…
…よし決めた!俺の取るべき行動は
アイシャとの関係をキープしつつこっそりまずみかんちゃんに会うことだ!
もしかしたらアイシャも可愛いかもしれないし!
かいわれあたりはたぶん「相変わらずクズの発想」とか言うだろうな。
でも大丈夫、俺が誰にも言わなきゃバレやしない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます