第7話〜元勇者、娘と出かける〜
勇者君と遭遇してから次の日。
結局あれから、勇者君が家に現れる事は無かった。つまり……旨く逃走成功したと言う事だと思う。しかし……まだ安心は出来ないし……様子見も兼ねて、家の外に行くとするか……と決めようとしたら、娘のリアネが「お母さん……私も一緒に行きたいな……」と、可愛い顔で言って来た。これは断れないよね。本当に娘は天使だな……と思う。まあ……私と一緒なら、変に絡まれる事はしないだろう……と考えて、娘にもフードを被せようと思ったら、娘が「お母さん。私……そのままの格好でお出かけしたいな……」と、言われてしまった。そう言われてしまったので、娘にフードを被せる事はしなく、今日は娘と一緒にお出かけする事にしたのであった。
「お母さん、今日は何所に行くの?」
家の外に出て、娘のリアネがそう尋ねてくる。
そう言えば……特に行き先を決めていなかったな……とりあえず……
「リアネ? 何所か行きたい場所はある?」
リアネにそう聞いてみると
「えっと……じゃあ、お母さんがいつも行っている場所に行きたいかも……」
「いつも行っている場所? それは……仕事現場って事でいいのかしら?」
「うん、ちょっと気になるんだもん」
「あら、どうして?」
「だって……お母さん、その格好でしょ? その仕事現場の人にどう見られているのかな……って……」
「そ、そう……」
娘にそう言われてしまった。確かに今の格好は、フードを被っていて、顔がよく見えない状態だしな……娘が気になるのもなんとなく解る気がする。まあ……あそこなら、特に問題は無いと思うので
「解ったわ、じゃあ案内するわね?」
「うん」
そう言って、娘と手を繋いで、私の仕事現場へと向かう事にした。仕事現場に辿り着くと
「あれ? ナナさん? 今日はお休みですよね? 一体どうしたんですか?」
「ナナ、一体どうしたのだ?」
そう言ってきたのは、仕事仲間のタマコと、上司のバルバさんだった。
「今日は、この子が仕事現場を見たいというから、つれて来たのよ」
私は二人にそう言う。ちなみにこの上司のバルバさんという男は、私の事情を知っている。
おまけに家と仕事場まで用意してくれたので、私にとっては恩人でもあった。
「そうなんですか~あ~可愛い子ですね~」
タマコが、ニコニコ顔でリアネに話しかけている。うん、どうやら悪印象は与えていないようなので、ほっとした。リアネは、話しかけられてびくっとして、私の後ろにちょっと隠れた。
うん。動作が可愛いな?本当に。
「あのナナさん? この子って一体?」
タマコがそう聞いて来たので、どう答えようか?と思っていると
「あの! 娘のリアネです……」
そう小さい声で言った。
「え!?ナナさんって、結婚してたんですか!?」
「む、娘だと!?け、結婚してたのか!?」
なんか……二人が凄い驚いているのだけれど。私が結婚してたら、そんなに驚く事なのか?って感じだった。
まあ、結婚はしていないけど。
けど娘はいるんだよね?実際に私が産んだんだし、妊娠したって聞いた時は驚いたなあ……そりゃあ、何回もされてたし、避妊なんか全くしてなかったから、いつかは出来るかもとは思ってたけど……
まあ、息子じゃなくて娘で、よかったかなと。
「結婚はしてないわ。けど娘と言うのは、本当よ」
私がそう言うと、バルバさんが
「しかし……とてもそうは見えんな……ナナは……あれだしな」
「そう言えば……ナナさん、またフード被ってるんですね?」
「ええ、この国ではそうしないと危険だからね?」
「ナナさんって……やっぱりエルフだったんですか?」
「違うわよ」
「違うのか?」
「何でバルバさんも驚いているのよ。前に説明したでしょ?」
「いや、身を隠す為に、嘘ついたんじゃないか……と、思ったからな?私もその髪の色はエルフ族しか知らなかったからなあ」
「あ、何か納得しました。ナナさんがなんでいっつもフードを被っているか?を」
「ありがとう、やっぱり……この髪は、この国では珍しいわよね?」
「そうですね……珍しいと思いますよ?そ、それに……ナナさん……綺麗ですし。男の人がほっとかないのもなんか解る気がします」
「確かにな。ナナ?その髪の色で困った事とかあったんじゃないか?」
「ありましたね。金貨200枚でどうだ?って言われましたし」
「金貨200枚!?す、凄い値段ですね……それがあったら、家買えますよ。本当に」
そうだったのか……じゃあ前に話しかけて来たあの男は、私にそのぐらいの価値だと思っていたって事なのか。まあ、そう言われても素直に頷くとかはしないけど。
もし私がオーケーしていたら、やっぱり性奴隷コースだったのかな……それか愛人候補?
ま、断って正解だったかも?
「お母さん? 金貨200枚って……?」
「リアネは気にしなくていいのよ? で、二人に改めて言うけど、この子は本当に娘のリアネよ?よろしくね?」
「そうですか……よろしくね?リアネちゃん。私はタマコって言うよ?」
「私はバルバだ、ナナの上司になるって感じだな? よろしく」
二人がリアネにそう挨拶するので、リアネが小さい声で
「よ、よろしく……」
そう言った。
「可愛い~~!!」
「うむ……いいな」
とりあえず……二人にリアネの事を紹介したから、私に何かあった時に任せられるかもしれない。私がそう思っていると
「タマコ、そろそろ仕事の時間だ。で……ナナ、今日は休みだが、どうする?」
「そうね……リアネはどうしたい?」
「えっと……お腹すいてきたから、何か食べたいかな……」
「そう……じゃあ、何か買ってから、家へ戻りましょうか?」
「うん」
「じゃあ、二人とも、私は行きますね?」
「うむ、そうか。ナナ、明日からまたよろしくな?」
「了解ですナナさん、ではお疲れ様です。リアネちゃんも~またね?」
「えっと……う、うん」
「それでは、私達は行きますね?」
そう言って私は、リアネと一緒に仕事現場から離れる事にした。建物の外に出るので、フードを被り直して、食材を買ってから、家へと戻る事にしたのであった。
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