【完結】幼馴染み(♀)がプレイするMMORPGはどうしてか異世界に影響を与えている

さかもり

序章 来たるべき未来からの追憶

第1話 いずれ訪れる世界線の記憶

 強大な魔物が住まう塔の最上階に二つの影があった。一つは人族の男であり、二つ目は明らかにエルフの女性である。


 剣を持つ男は世界を救う使命を与えられし勇者。一方で大盾を持つエルフの女性は聖王国の王女殿下であった。本来ならこの二人は出会うことなどなかったはずであり、共闘だなんてあるはずもない。少しの接点も持つことなく二人は互いの生を全うしていたことだろう。


「君は死んじゃいけない……」


 勇者が言った。エルフの姫君は失われるべきでないと。


「わたくしがパーティーを外れるなんて未来は存在しませんから……」


 エルフの姫君が毅然と返す。強い意志が込められた言葉の通りに彼女は凜々しく微笑んでいる。


「なら始めようか……」


 言って勇者が大扉を閉じる。強大な魔物との戦いがそれにより確定していた。

 病床に伏すたった一人の少女のために勇者は剣を振るう。またエルフは密かに想いを寄せる勇者のためだけにただ盾を構えた。


 本来の世界線と同じく交差することのない想い。すれ違うことすらなく離れていくだけである。

 書き換えられた世界線は二人を翻弄し、運命を押し付けるかのように改変を続けていく。

 全ては神が成す事象。矮小なる存在はその渦に飲み込まれていくだけであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る