第201話 侵攻前夜
ナゴヤを制圧してから一ヶ月が経っていた。同盟を結んだカントウ連合国軍もナゴヤへと派兵され、今や人族最大の軍事基地となっている。
心配された玲奈の怪我も連合国軍の支援士よって完璧な治療が施され、いよいよギフへと侵攻する運びとなっていた。
「以上がギフ侵攻作戦の全容である。質問はあるだろうか?」
例によって例のごとく川瀬が侵攻軍を取り仕切っていた。戦い慣れない連合国軍がいたからか、戦術から侵攻ポイントまで細やかな説明である。
「よろしいでしょうか?」
手を挙げたのは連合国軍特務師団長である竹之内であった。連合国軍からは一個師団しか送られていなかったけれど、先の大戦でかなりの戦力を失った彼らからすれば一個師団でもかなりの人員を割いた方である。
「できれば我ら連合国軍特務師団は最前線に配備していただきたい。藤城首相もそうなることを期待されているのです」
今更ながらに編成に関する異議であった。それはそのはず、連合国は共和国に対し引け目を感じている。
二人の使者を門前払いのように扱ったこと。更にはその騎士により、窮地を救われていたからだ。だというのに共和国は平等な和平条約を連合国との間に結んでいる。藤城首相はその事実を重く受け止めているらしい。
「しかし、我々は戦闘まで貴国に期待していないのです。医療班の派兵だけで十分です」
「次の戦いは特に重要でしょう? 我らは今後とも共和国と平等でありたい。従って後方で指をくわえているなんてできません」
竹之内は折れなかった。川瀬としては来賓扱いにしようと考えていたけれど、どうにも脅しをかけたことが結果としてこの現状を生んでいるのだと分かる。
まさに身から出た錆。恐らく彼らは有用性を示そうと必死なのだろう。天軍が滅んだあとの待遇が悪くならないようにと。
「了解しました。ならば連合国軍特務師団は第二侵攻師団と入れ替わりにします。共和国軍守護兵団第一侵攻師団が南側から。連合国軍特務師団は北側から侵攻。それでよろしいですか?」
「お気遣い感謝いたします。我らも故郷に錦を飾る必要があります。結果報告だけでは済まされない立場なのです」
一応は連合国の要望を汲み、これにて作戦会議が終了となる。
進軍は夜中に始まり、早朝に奇襲をかけることで確認が取られていた……。
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