第8話 恐怖の魔女 5
「魔女?!あれが?!」
「なんて恐ろしい姿だ!?」
「化け物だ!!」
集まった人々はどよめき、叫び出す。
「え?!ちょっと待って!パインはそんな恐ろしい人じゃ無い!!」
驚き叫ぶダンの声は、それ以上の叫び声や怒号にかき消される。
「俺は見たぞ!そいつの店から火の玉が飛び出してきたんだ!そいつが火付けの犯人だ!!」
広場が一瞬静まりかえる。
すると、その声に含まれる敵意に反応したのか、アイがパインの肩の上で背を伸ばして「グルルルルッ」と呻った。
「ヒイイイッッ!!」
人々が恐怖して叫ぶ。逃げる。
逃げた人が野次馬で来ていた子どもにぶつかる。
子どもが転んで、大声で泣き出した。
「魔女だ!魔女だ!!」
子どもの泣き声に、人々はパニック状態になる。
「落ち着いて下さい!皆さん!大丈夫ですから!!」
冒険者たちの中には、簡単には場の雰囲気や、パインの姿だけに捕らわれず、冷静に対応しようとする者もいたが、半数ほどはパインに向けて武器を向けて構える。
武器を向けられれば、ギイも黙ってはいない。
パインの意志に関係なくショルダーアーマーから伸び上がり、鋭い刃に変じた蝕腕をいくつも出現させる。
それを見れば、それまで冷静でいた冒険者たちも武器を構えずにはいられなくなった。
「殺せ!魔女を殺せ!!」
人々が叫ぶ。
そんな中でも、数人の冒険者は懸命に人々を落ち着かせようとする。
冒険者にとって、「魔女」は魔法使いの通り名程度の意味しか持たない。「魔女」=「邪悪」などという迷信は、すでに過去のものである。
パインは煩わしそうに周囲を眺めるが、焦ったり怯えたりする様子は見られない。
「アイ、ギイ。大丈夫だから引っ込んでいろ」
パインが言うと、アイとギイは、不承不承といった様子でショルダーアーマーの中に戻っていった。
そして、パインはダンの方を見ると、少し残念そうに苦笑する。それは初めて見せる表情だった。とてもではないが、9歳の少女が見せる表情では無かった。
「ダン。残念だが、お別れのようだな」
ダンは絶句する。
パインの額の目の封印が解かれ、赤い光があふれ出す。
何をするつもりなのか?!
そう考えた次の瞬間、ダンはパインの前に飛び出していた。両腕を精一杯伸ばして、パインを背に庇う。
「やめて下さい!パインは、この子は犯人なんかじゃありません!!」
自分でも信じられないくらいの大声でダンが叫んだ。
「火の玉を飛ばしたのは僕です!!」
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