Vの時代

爪木庸平

第1話

 いつも管理人雑記まで読んでいただいてありがとうございます。今日は管理人がVを目指していた頃のことでも書こうと思います。

 それはVの黎明期、KAやDSがデビューしたあたりだったと思います。当時管理人はまとめサイトを読み、ソシャゲでガチャを回し、NやYでどっぷり動画を見るただのオタクでした。そんななかNやYでにわかに話題となったVという存在に心惹かれました。

 衝撃でした。アニメや漫画の世界でしか起きないと思っていた、二次元キャラクターとの会話ができるようになるなんて。彼女、彼たちの生活が動画サイトで供給されるなんて。あまりにも多くの出来事が同時に起きて(示し合わせたかのように彼女、彼らのデビュー時期は重なりました)、あまりの情報量に日々興奮していました。幸福でした。

 そんな中、友人の一人がVになったことをTで報告しました。管理人(当時は管理人ではありませんでしたが、一人称として定着しているので)は、それを眺めながら、いまだ自分がVになることなど夢にも思っていませんでした。心のどこかで一線を引いて、自分とは違う世界のことだと感じていたのかもしれません。

 ところが、Vになった友人から通話がかかってきて、話し込んでから、考え方が変わりました。とにかく友人が生き生きとしている。友人は管理人と同じように無気力ながら社会に適応するただのオタクでした。その日までは。

 ……正直に告白すると、管理人がVを始めようと思い立った時の気持ちを今から考えると、それは嫉妬であったと思います。昨日まで同じようにうだつの上がらない消費生活を送っていた友達が、急に色めきたって、フォロワーを増やし、自由な表現を創り出している様子を見て、妬んでいたと思います。当時は自覚していませんでしたが。

 そこから解説動画を見漁る日々が始まります。動画編集などを勉強するため本も買いました。有名なソフト、FRなども導入しました。

 しかし、ある時、手が止まりました。絵が描けない。

 当時は既製の素材などがなかったため、自分でイラストを用意する必要がありました。アナログで描こうとしたり、イラスト制作ソフトを使ってみたり、3DCGにも挑戦しましたが、管理人の脳内から何かが出力されることはありませんでした。

 ……今から考えると理想が高すぎたのだと思います。また、Vに関心のあるクリエイターと協同して、自分たちのキャラクターを作っていく手段もあったと思います。しかし、当時はとにかく自分の衝動を、誰よりも見栄えのするモデルで表現したかった。その思いが強すぎました。

 実際の作業は進まないまま、勉強のため、と自分に言い聞かせながら、Vの情報を手元にまとめ、自分なりに整理、評価する生活だけが続きました。

 そして、ある時また別の友人から「そんなにVが好きならまとめサイトつくればいいじゃん」と声をかけられました。そのアイデアも自分にはないもので、ある種衝撃を受けました。

 モデルや動画編集では戦えなかったが、文章では戦える。

 もう一度、挑戦したい。自分に自信を持ちたい。

 こうして当サイトは始まりました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Vの時代 爪木庸平 @tumaki_yohei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ