7ー⑥

一空母香山・艦橋


「艦長、富士研究所より来満大尉が目を覚ましたとの連絡が入りました」


 通信手であり副官の早坂香織が言う。


「そうか!あとはこれで新しい幻舞が完成すれば……」


 艦長・瀬田祥子は戦力の回復を喜ぶも束の間、


「あ、幻舞も起動してセリカちゃんも戻ってきたみたいですよ」


「何だと!?」


『こちら格納庫!搭載していたドラガン、ライゲル、ケツァールの3機が勝手に発進しました!』


 格納庫の整備兵からも通信が入る。


「次から次へと何が起こっている!また何かやらかしたのか?あの子達は!!」


 英雄が眠っている3ヶ月間は平穏であったと、祥子は改めて思う。そして……


「艦長……」


「今度は何だ!?」


「……次元転移反応…エゲツナー帝国です!」



─香山MMS格納庫


「改めて、デカい艦だな……うちの「バラク・オバマ」ほどじゃねえがな」


 緊急出動のアラートが鳴り響く中、米軍海兵隊のMMSパイロットスーツを着た白人男性は、広い格納庫にズラリと並んだMMS達を見て呟く。


「オオ!天鳳があるじゃないカ!クリス、Jレンジャーもあるゾ!?」


 童顔小柄なアジア系の女性は片言の日本語で話す。パイロットスーツの右胸にあしらわれた緑と白のエンブレムは台湾民主国の国旗である。


「幹教官……ここの副艦長で俺と英雄の師匠がMMS マニアでな。その人の趣味だよ」


 日本国防海軍の白いパイロットスーツを着た男が言う。


「あ、貴方達……誰でありますか!?」


 部外者である3人は、一人の女性パイロット─遠野愛菜に呼び止められた。


「お嬢さん、香山の乗員かい?ちょっとお願いがあるんだが……って君、どこかで会わなかったかな?」


 遠野も男の顔を見て、驚愕の表情を見せる。まるで、のを目の当たりにした様に。


「あ…貴方は……す、すぐ艦長に連絡を!!!」



─香山・艦橋


 メインモニターに一機のMMSから通信が入る。


「よう、母さん。ああ、こっちの俺は死んでるんだっけ?幽霊じゃないぜ。正真正銘、瀬田祥子と瀬田良の息子・瀬田縁さ!」


 格納庫のメタルディフェンサー丁型から入ったその映像を見て、誰もが目を丸くした。


「縁!?縁なのかい!?どうして……」


 その男の名は瀬田縁せた ゆかり。祥子の息子であり、3年前の戦いで戦死したはずの男だった。


「何て説明していいのかな……今の俺は、この時代の俺じゃないんだ。俺は、俺達が死ななかった未来の俺で、芹佳ちゃんが幻舞でタイムスリップを可能にしたから俺達も15年後から応援に来たってワケさ」


 セリカが一枚噛んでいる……ならば死んだ息子が目の前にいた所で不思議ではない。祥子はそう思う事にした。


「キャプテン・セタ!私は米国国務長官クリストファー・ガーラ ンドです。我々がこの時代に来た理由はユカリの話した通り。しかし、簡易なタイムマシンで来た我々には戦闘手段も無く……」


「ココのMMSを3機ほど借りたいってわけヨ!」


 クリスの申し入れにタマが割り込む。


「タマ!お前………!!」


「オマエ、こっちの時代じゃ死んでんだから国務長官を名乗るなヨ!」


「……ガーランド少佐、李大尉、そして瀬田少尉!」


 祥子は彼らを、この時代に於ける殉職前の階級で呼び、更に続ける。


「本艦から貴官達にMMS使用を許可します。そして、未来からの援軍に感謝します」


 祥子は帽子を脱ぎ、通信越しにクリスとタマミに頭を下げた。


「Yes,sir!」


「收到!」


「それと縁!二度とわたしを悲しませるんじゃないよ!!」


「了解……瀬田大佐かあさん!!」


 瀬田親子は両眼に涙を溜め、再会の余韻もよそに祥子は制帽を、縁はヘルメットを被る。


「瀬田縁、メタルディフェンサー丁型!」


「李玉美、天鳳Ⅳ式!」


「クリストファー・ガーランド、ジャスティス・レンジャーMk-Z、出撃する!!」


「「「FullFoce,scramble!!!」」」


 3機のMMSは、エレベーターで香山の甲板へと上昇してゆく。

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