美少女英雄ガールズ・神話英雄女体化 

鏡銀鉢

第1話 登場! 勇気と正義だ英雄ガールズ1


「あたしらってさ、何の為にいるわけ?」


 そう言ったのはヤマトタケル、通称たっちゃんだ。


 綺麗な黒髪ツインテールをリング状にして垂らした髪型が特徴的な、結構な美少女である。


 なのにその美少女は、マンションのリビングでソファに寝転がって大福もちを食べている。


 全体的にすらっとしていて、でも出るところはそれなりに出ているスタイルをTシャツミニスカートで包み、だらしなく横たえて女子力ゼロを全身でアピールしていた。


 そんな彼女に、艶やかな銀髪ポニーテールが今日も美しい絶世の美少女が溜息を漏らす。


「たっちゃん。貴女には英雄としての自覚があるのですか? 平和なら平和で良いではないですか。貴女も少しは家事をしてください。マスターが帰って来る前に終わらせたいんですから」


 彼女の名前はジークフリート、通称ジークちゃん。


 女子には高い身長の北欧系美少女だ。


 ホットパンツにチューブトップのセクシーな格好が良く似合う。


 洗濯かごをベランダへ運んでいる最中だが、爆乳と言って差し支えない大きく豊かな胸がかごの上に乗っかっている。


 その胸を見て、たっちゃんは頬を膨らませた。


「いいもーん、どうせあたし子供だしー」

「私とそんなに変わらないでしょう。ヘラちゃんを見習ったらどうですか? 貴女より小さいのにちゃんと」

「えいっ」


 ヘラちゃんが洗濯ものをバサッと振る。


 びりっ


 不吉な音がして、ジークちゃんの顔が凍りついた。


「わ、私のスカートが……」


 慌てて駆け寄る。スカートの被害状況を確認すると、エメラルド色の瞳から、だぱーっと涙が溢れる。


「ま、まだ二回しかはいてなかったのに……」

「ご、ごめんですジークちゃん、わたしはただジークちゃんを手伝いたくて」


 ヘラクレス、通称ヘラちゃんが自分の着ているオレンジ色のワンピースの裾を握り、可愛い眉尻を下げる。


 ヘラちゃんの金髪サイドテールが揺れる。


 ジークちゃんが慌ててスカートを放り捨てる。


「だだ、だいじょうぶですよヘラちゃん。失敗は誰にでもあります。これから覚えればいいのです!」

「はい、わたし頑張るのですよ!」

「はい、その意気です」


 ヘラちゃんには笑顔を見せるジークちゃん。


 だがたっちゃんには、その背が酷く小さく見えた。


「うあぁ……無理しているなぁ……」


 大福もちを吞みこんで、たっちゃんは眉根を寄せる。


「でもさぁ、マスターがあたしらを集めて随分経つけど敵なんてこないじゃん! あたしには前世の記憶あるわよ、二人だってそうでしょ?」


 たっちゃんは、ジークちゃんとヘラちゃんの顔を見比べる。


「あたしには日本中の悪神や怪物、敵対軍事勢力を倒した記憶が。ジークちゃんにはドラゴンを倒したり結婚詐欺をした記憶が。ヘラちゃんには十二の試練で怪物相手に全裸でハッスルした記憶が」

「「うるさいっ」」


 二人は洗濯かごから、たっちゃんのショーツをつかんで投げつけた。


「わぷっ、ちょっ、乙女の下着をぞんざいにあつかわないでよね!」


 たっちゃんは自分の顔から白パンとストライプパンティを取って洗濯かごに投げ返す。


「でもたっちゃんの言いたい事は私も解ります。この記憶がある限り、マスターの言葉が世迷言とは思えません」

「でもわたしは今のままでもいいのですよ」

「ジークちゃんとヘラちゃんはいいかもしんないけどあたしはヒーマーなーのー!」


 ソファの上で無駄にブリッジをして、アングルによってはたっちゃんのミニスカートから下着が見えるだろう。


「暇だ

暇だ

暇だ

暇だ

暇だ

暇だ

暇だ

暇だ

暇だ

暇だ

暇だ

暇だ

暇だ

暇だ

暇だ

ヒマ

ヒマ

ヒマ

ヒマ

ヒマ

ヒマ

ヒマ

ヒマ今なら輪ゴムで二時間遊べるぅううううううう!」


 どかーんっ


「うおわぁっ!」


 たっちゃんがブリッジの態勢から床に転がり落ちた。


「なにこれ!?」


 たっちゃんを皮切りに、三人がベランダに出て下を覗く。


 そこには、三人の影があった。


 加えて向かいの家の塀が砕けている。


 その三人が、たっちゃん達に向かって告げた。


「「「な、なんだってぇっ!?」」」


 たっちゃんが、ジークちゃんが、ヘラちゃんが、驚愕の顔で固まった。


「遠すぎて何言ってるかわからないや」ぼへー

「ええ、相手はマイクを用意していないらしい」ほのぼのー

「事前準備がたりないのですよ」ぼけー


 アスファルトの上で、三人の真ん中に立つ影がしゃがんで落ち込む。

 左右の人影が慰めているようだ。


「というわけでじゃーんぷ!」

「まったく、しょうがないですね」

「行くのです」


 たっちゃん、ジークちゃん、ヘラちゃんがベランダの塀に足をかけて跳躍。

 スカートをなびかせてアスファルトに着地した。


「ジークちゃん」


 たっちゃんが、振り向いて一言。


「今日のパンツ派手じゃない?」

「なぁっ!? って、見えるわけがないでしょう!」


 慌ててホットパンツの裾を押さえて耳から湯気を出すジークちゃん。

 ヘラちゃんは不思議そうな顔で、


「派手なパンツってどんなパンツですか? 光ってるのですか?」


 純真無垢な少女に、たっちゃんは手で口を押さえる。


「ぷくく、えーとね、派手なパンツっていうのはぁ」

「やめなさい!」

「おべぇっ!」


 ジークちゃんの水平チョップが、たっちゃんの頸動脈を打ち払った。


「私達を無視するなぁ!」

「んぁ?」

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