【百鬼ノ宴】飯ウマ妖怪は誰だ!? 料理王決定戦!!! 司会ノ章


 待ちに待った料理配信。

 早速カオスな光景が広がってしまったが、それ以外は順調で今頃盟友達は料理部屋に向かってることでしょう。

 それにしても緊張しますね、結構お世話になってる神虎先輩はもう慣れたから大丈夫なのですが……やっぱり推しと一緒に配信するのは心の底から緊張します。


「あ、最初に部屋に着いたのは盟友ですね。手際よく材料を並べてますが、何を作るんでしょうね?」

「見た感じ肉を取り出したみたいだが、ワインとか見るに……ステーキでも焼くのか?」

「肉にゃんか、今日は食べるつもりだったからバッチこいにゃんね!」


 あ、推しが気合い入ってる可愛い。

 やばいですね、推しが近くにいるし今日は本当にちゃんと出来るか心配です。

 とりあえず今は、ちゃんと進行しないとせっかく来てくれた視聴者の方々に悪いので、いつもの調子でやりますか。


「次は七尾さんですね、野菜とか色々取り出していますがこっちは何を作るんでしょう? って鰹節とか取り出してますが、まさか削るところからやるんですかこれ?」


 別の画面に注目して彼女が何をするか確認していると今日のために用意したであろう食材の山から鰹節を取り出した彼女がその場で削り始めました。

 とても慣れた手つきで削っていますが、これ配信に音入ってるんでしょうか?

 あ、入ってますねリズミカルにシュッシュッて音が。


 

「いい音だな、今度胡瓜でASMRでもするか」

「神虎先輩、貴方までバグらないでください」

「いやいい案だろ胡瓜ASMRは」

「いや狂ってるにゃんよ」


[聞かなきゃな]

[義務だしね]

[キュウリスキ]

[キュウリバンノウ]

[あぁ洗脳された川魚の群れが]

[キュウリ関わると神虎様やばいよな]

[猫がまともにみえる恐怖]

[やっぱり常識枠なのつぐみんだけだわ(確信)]


「ほらお前ら川魚達がキュウリは正義だって」

「お前が洗脳した奴らの意見とかアウトにゃん」

「あーでも胡瓜は美味しいですよね、流石に先輩ほどは食べれませんが」


 普段はあんまり大食いしない先輩は胡瓜の事になると、本当にバグるんですよね。

 常識人な先輩が何がそこまで先輩を奮い立たせるのか……分からな――いや胡瓜ですね。


「さて次は……阿久良のだが、まあアイツは安心して良いだろ」

「ですよね、阿久良先輩ならきっと和食でも作るでしょう」

「それは違うにゃんよ、ウチはもう知ってるけど牛を豪快に使った一品を作るらしいにゃん」


 牛を豪快に……それなら盟友と同じステーキですかね?

 なら和牛のステーキですか、洋と和を同時に食べるのちょっと楽しみで――。


「え、なんで牛その物が!?」

「何言ってんだつぐ――ふぁ!?」


 楽しみだなとそう思った瞬間に、目に入ったのは三頭の牛。

 それはもう立派な牛が三頭並び、そのまま丸焼きにするための器具にセットされるというあまりにも現実味のない光景が広がっていたのだ。横の神虎先輩は普段絶対配信で聞かなそうな声で驚いているし、そもそも牛三頭って馬鹿みたいな値段しますよね? というか、これ僕らが食べるん……ですか?


「おっあれなら満足出来そうにゃん」

「マジですか仙魈様、僕食える自信一切ないんですが……」


[この猫の妖怪は何を言っているの?]

[日本語かいまの?]

[牛なんで?]

[一頭でもやばいのに三頭は……笑えねぇ]

[どうしよう妖ぷろ男組の目が死んでる]

[これは仕方ない]

[あとなんか火力凄くない? みるみる牛が焼けていってるんだけど]

[《速報》ぽん童子、牛三頭を丸焼きにする]

[これもしかしなくても一人一頭計算?]


 なんか一瞬チラッと見えたコメント欄に馬鹿みたいな事をいってる視聴者がいましたが気のせいですよね?

 一人一頭とか無理ですよ? もしかして視聴者の目玉飛んでいきましたか? だってあの牛どう考えても大人ですしサイズ馬鹿ですよ? 


「アッ盟友が鼻歌歌いながらお肉焼いてますね、もうこれが癒やしです。あと最近思うんですが盟友って性別なんなんでしょう? 神虎先輩分かります?」

「それは今日初めて会った俺に聞くのは酷じゃないか? 長い付き合いのお前が分からなきゃ駄目だろ。いやまぁ、口調完璧でメイド服を完全に着こなしているアイツを見ればそう思うのは仕方ないとは思うが……なんか真面目に考えるとSAN値削れそうだな」

「これだから男は……って言いたいニャンが、あれは反則だから目を瞑るニャン。というか、あの人なんであんなに肌白いの? 生まれる性別間違ってるでしょ」


 やっぱりみんなそう思いますよね。

 この二人は初対面だったはずですが、開幕よろしくお願いしますご主人様方ですからね。

 事前情報では男って聞いてたはずでしょうし、絶対混乱してでしょう。僕はもう三度目のメイド服で少しは慣れましたが、やっぱり驚きますもん。


[鼻歌可愛い]

[あれなんか向こうの配信にコメントできな――]

[なんか頭にビビってきたんだけど何これ?]

[コメントしてはいけない気がする]

[というか見たい、鴉様のメイド服見たい]

[でも見てはいけない呪い]

[俺来世は妖ぷろの壁になるんだ]


 なんかコメント欄で怪奇現象起こってますが、妖ぷろの配信では結構な頻度で起こるのであまり気にしない方がいいですよね。それに今はソレを気にするより自分達の胃を心配しないといけないですし……。

 阿久良先輩が牛をモンスターなハンターが出てくるゲームのように焼く光景を見ながら、そんな事を思った僕は、まともに料理を作ってくれる三期生の仲間の方を見て静かに涙を流した。


「神虎先輩、終わったら打ち上げでもしましょうね」

「そうだな、まあ生き残れるか分からんが約束しよう」

「なんか男二人が変な事で仲良くなってる気がするにゃんが……これツッコんで良い奴かにゃん?」


 出来ればツッコまないでください。

 そんな事を心の中で思った僕はもうすぐやってくる料理の山を思いまた涙を流し、最初に盟友のご飯を食べたいなぁと切実に思いながら……心の準備をすることにした。


[ツッコむな猫]

[逆になんであの牛を見て恐怖を覚えないんだ]

[まあ猫は満漢全席一人で食べるしね]

[男達生きてられるのかな]

[おれ一回丸呑みした事あるけどめっちゃきついぞ]

[二人の顔が死んでいるのだ]

[ここまで生気のない表情を見れるのは妖ぷろだけだよな]

[まじでどんな技術で表情出してるんだろう?]

[牛三頭は絶対やばいって]

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