第7話⁂恋の炎!⁂
一九七〇年代主に公用車として使用されていた日産プレジデントに乗り、リンダの公休日に『ホテルパシフィックOCEAN・湘南』裏門に乗り付けた大蔵と雅彦。
すると程なくして、昨今流行のイギリスのファッションモデル、ツィギー「ミニの女王」を彷彿とさせる出で立ちで裏門の扉を開け、お洒落な白い階段を駆け下りて来るではないか「アア~!待たせちゃったかしら?」
それは眩しくキラキラ輝く真夏の海の王女様。
小麦色の肌に、オレンジ色のミニスカート、首元の詰まったノースリ―ブワンピース姿に大きなイヤリング、靴は黄色のチャンキ-ヒ-ルの弾けんばかりの美少女が、駆け足で手を振ったのだ。
【小枝のような華奢な体型にミニスカートで登場して注目を集めた「ミニの女王」イギリスのファッションモデルのツィギーは一九六七年の来日以来、日本の若い女性にとっても憧れの的になりました】
こうして三人は真夏の湘南に車を走らせた。
「今日は何時まで大丈夫なんだい?」
「夜の八時までに帰れば良いです」
「エエ~?そんなに遅くなっても良いのかい?」
実はリンダは、その話をホテルのマネージャーから聞いた時は「折角の休みなのに~?」
怒り心頭で今日も朝からご機嫌斜めだったのだ。
それでも…仕方なく約束の時間ギリギリに顔を出したのだが、遠くから雅彦の姿を車のガラス越しに発見した時は、心臓が止まるかと思ったほどなのだ。
どこか愁いを含んだ品位の備わった、ク-ルで知的なしょうゆ顔の雅彦は、リンダにとってはドストライク中のドストライク。
自分の周りのフィリピン人には無い、クールで知的な未知の男性。
片や自分の知っているフィリピン人男性は、派手な造作のむさ苦しい派手な顔と、只々底抜けに明るいだけの男ばかり。
そんな男達に飽き飽きしていた所に、この様な奥底の知れないクールで知的な雅彦に、一瞬で恋をしてしまったリンダなのだ。
「リンダちゃん折角のドライブだから、助手席に乗りなさい」
父の大蔵が笑顔で促したのだが「アッイッいいえ!私後ろで良いです」
そして後ろに移り、改めて雅彦に挨拶するリンダ。
「あああ!ハッ!ハジメマシテ!リッ!リンダです!」
すると雅彦が顏を上げてリンダに顏を向けてくれた。
「アア~!こちらこそ初めまして!」
{アアアアアアアア傍で見れば余計に素敵!何ともクールな、目は切れ長でス―ッと通った鼻筋、まるで彫刻のような整った端正な顔立ち……あああ!どうしよう?心臓が飛び出そう}
一方の雅彦の方も{あああ!なんだ~?まるで西洋人形みたい!}
湘南の海を見渡せる抜群のロケーションを背に、日産プレジデントで真夏の海岸を突っ走る三人。
するとあの当時一世を風靡した伝説のGSバンド、ザ・テンプターズの名曲が流れて・。*☆・*
ヤンチャで破天荒な危うさ、更には照れ笑いのはにかんだ顔に、どことなく幼さの残る、色んな顔を併せ持つ何とも魅力的なショ―ケン。
そのハスキーボイスから放たれる。
神秘的で美しいメロディー、エメラルドの伝説がラジオから流れて………☆☆☆
湖に~♪君は身を・・・♬・・・
「ステキなメロディーですね~!」
「そうだろう!今人気のグループサウンズだよ!」
満面の笑みでそう説明する父大蔵の顔が、バックミラー越しに見える。
その時リンダが、シートにもたれた拍子に、ふっと雅彦の手に触れてしまった。
リンダは、暫く躊躇した挙句、更に雅彦の手を握り返したのだ。
するとあのク-ルな雅彦が笑顔を向けながら、何度も瞬きした。
そして…3人は、お洒落な湘南のカフェテラスで食事を取り、鎌倉の街並みを三人はぶらぶらしていたのだが、暫くすると何を思ったのか二人は、父の大蔵を巻いて二人で手を繋いで思い切り遠くまで駆け抜けて行った。
父の大蔵はいつの間にか取り残されてカンカン。
この恋模様はとんでもない事になって行く。
苦しい恋に身をやつす父はこの後………?恐ろしい・・・
【グループ・サウンズとは、エレクトリック・ギターやエレキ・ベースなどの電気楽器を中心に数人で編成される、演奏および歌唱を行うグループ。欧米のベンチャーズやビートルズなどのロック・グループの影響を受けたとされ、1967年(昭和42年)から1969年(昭和44年)にかけて日本で大流行した。略称GS】
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