第6話⁂章の両親!⁂
☆☆☆章の母親☆☆☆
一九六〇年代日本には、多くのフィリピンバンドが出稼ぎにやって来た。
章の母親は一九七〇年に『ホテルパシフィックOCEAN・湘南』でバンドの一員として、歌やダンスを踊るシンガ―として、興行目的で日本に出稼ぎに来た。
この時、章の母親リンダは十六歳、抜群のルックスに加え「ソウルの女王」アレサ・フランクリンを彷彿とさせる抜群の歌唱力。
その卓越した歌唱力と抜群のルックスで、リンダが舞台に現れるや否や、タガログ語で「マガンダ!マガンダ!フューフュー」お客様達から口笛とマガンダ『タガログ語で美しい可愛い』の大合唱。
ホテルの大ホールで今まさに、フィリピンバンドによる演奏が始まろうとしている。
するとリンダの登場に合わせて、大音響のドラムが鳴り響き、小気味いいリズムに乗せられリンダの登場。
小麦色の肌にファッションもオールディーズ調の曲にあった、レトロポップで真っ青なブル―に、夏らしい黄色の向日葵があしらわれた模様の、ふわりと広がったフレアワンピース、後ろで束ねたポニ-テ-ルに大きな黄色のリボン、黄色い太いベルトでウエストをキュッ絞めた、何とも華やかなハツラツとした、とてもおしゃれなリンダに。
「キャ―キャ―」
場内は黄色い声が響き渡る。
すると場内にカラフルな✨キラキラ輝く虹色のライトとミラーボールが一斉に光り輝き、リンダを一層美しく照らし上げる。
このホテル一番の売り、リンダの登場に場内は「マガンダ!マガンダ!」の嵐。
「皆様、この『ホテルパシフィックOCEAN・湘南』にようこそ サンキュウ ソウ マッチ!私は……リンダです。それでは最初の曲ロコ・モーション お聞きください」
ロコモーションの曲に合わせて、何人ものポニーテールに黄色のノースリ―ブニット、白いホットパンツ姿のコーラス娘が連なり、機関車の車輪が動くように両手を回転させるダンスで盛り上げる。
それと、あの当時流行ったダンス『ツイスト』を踊るリンダとバックコーラスの娘達。
それは、まるで蝶のように羽のように軽やかに美しく☆*・♥
「フューフュー」
「マガンダ!マガンダ!」
(間奏)に軽快なトランペット演奏が入り
ダンス!ダンス!ダンス!『ツイスト』で華やかにポップに踊り、舞台を走り回り踊っているリンダ。
それはまるで光り輝く✨・異世界の妖精の様に美しく❀⋆*
華やかに✴️💖。.:*:・'°☆
軽やかに☆。・
◇◇◇◇◇◇◇◇
佐々木家は、元々天白区東西一帯の大地主で資産家だった事から、不動産賃〔佐々木不動産〕を営んでいた。
裕福な佐々木家は、当時まだ旅行が主流では無かった時代であったが、家族で旅行に出かける事が度々あった。
その時、章の父親雅彦十八歳は、名古屋の国立大学最高峰N大学一年生。
家族でこの『ホテルパシフィックOCEAN・湘南』に度々やって来ていたのだ。
それは一にも二にも章の祖父太蔵の写真好きが高じての事。
水平線から登る朝焼け、沈む夕陽それをフイルムに収める為なのである。
また鎌倉の大仏、鶴岡八幡宮、竹林などの人気名所で美しい景色をバックに家族をフイルムに収めるのも楽しみのひとつなのである。
そんな折、ホテルの大ホールでリンダのショ—を、偶然にも観戦してからと言うもの、すっかりリンダの魅力に取り憑かれてしまった祖父の大蔵。
『ホテルパシフィックOCEAN・湘南』で祖父の大蔵は、一目見るなりリンダに恋をしてしまったのだ。
一体どういう事?
妻も子供も一緒に来ているのに、とんでもない事である。
雅彦が””ビビビッ””と来たのなら分かるのだが………?
片やリンダは、この時まだ一六歳、家族のために異国のフィリピンから出稼ぎにやって来た少女なのである。
フィリピン時代から天才子供シンガ―と持て囃され、あちこちのバンドから引っ張りだこ。
こうして若干十五歳でバンド、ブル―スカイの一員となり、家が貧乏な事から、家族に送金する為に、遥々異国の地から日本に出稼ぎに来ていたのである。
妻子も有る大蔵はこの時、既に四〇代中盤の妻も子も有る身なのに、全く、恋は盲目とはこの事。
三〇歳も年の離れたリンダに、年甲斐もなく恋焦がれてしまった大蔵は{寄りによってこんな子供にトキメクなんて?}
否定すればするほど、胸が苦しくなるのだ。
この『ホテルパシフィックOCEAN』は全国に十五店舗あり、リンダはここの専属歌手なのだが————
{専属歌手だけでは終わりたくない!}十六歳ではあるが野心家のリンダ。
有名になる為には金銭面でも、いろんな大物達との関係を持つことも必要らしい。
その為、大金を積めばどうにかなるらしい事を知っていた大蔵は、そんな……大それた思いではなく{趣味のフイルムにリンダを収めたい!}
どうしても忘れる事が出来なかった大蔵は、ダメと分かりながらも「写真のモデルとしてリンダをフイルムに収めたいので是非時間を頂きたい!」必死に頼み込んだのだ。
このホテルには頻繫に顔を出す上客で尚且つ、愛知県の大地主さんという事も有り、ホテルの専属マネージャーともすっかり懇意の中で有った事から、その話を聞いたホテル側も、そんな金持ちの上客を逃がしたくな思いから、仕方なくOKを出した。
だが………まだ少女である事から条件付きのOKが出たのだ。
その条件は{もう一人誰か同伴する事}
まさか妻を連れて行く訳にいかず、こうして大学生の雅彦と同伴で会う事になったのだ。
大蔵は大それた関係は望まないつもりで居たのだが、
一目見るなり余りの美しさに―――
この三角関係はとんでもない方向に向かって行くのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます