第72話クレーターの中心点




円形の盆地と化した、巨大なクレータ跡が残っていた。

調査に来ていた中国軍も立ち尽くして、巨大エネルギーの威力に驚くしかなかった。


「しっかりとデータを取れよ。カメラ班もドローンを使って撮影を開始しろ。何か見つけたら報告を頼むぞ」


調査団は、軍用ヘリから資材を運び出しながら、調査機器の点検をしている。

ここ福建省の爆心地に調査命令が出されたのが、昨日のことであわただしく準備してようやくたどり着いた。

ここに来るまでの被害も相当な物であったが、ここ爆現地はクレータ跡が広がっているだけで、物静かに眠る大地の墓を思わせている。


「やはり放射能は、基準値以上を検知できません」


「そうか、他の調査値はどうだ」


「もう少し待って下さい」


「大変です。20キロ先に突然飛行物体が現れました。目的地はここの様です」


「全員退避だ!!軍本部に連絡しろ」


軍用ヘリは、調査機器を残したまま飛び立ったが、10分後に跡形も無く消滅してしまった。


・  ・  ・  ・  ・  ・


魔物討伐で協議中の会議室へ、突然ドアが開いた。


「リン将軍大変です。福建省へ調査に向かった調査団が、飛行物体が現れたと連絡後に消息を絶ちました」


「衛星写真でも何も無い所だろ。何か有るのか?」


「国連軍が昨日来てます。頼んでみますか?」


「誰か付けないと不味いだろう。リャンシンに行かせろ」


「分かりました」


・  ・  ・  ・  ・  ・


我が家でのんびりしていると、俺のスマホに中国に行った時のアイツからラインメッセージが急に来た。

アイツは、中国に着いた途端に、福建省の調査に組み込まれ、調査に向かった中国軍が全滅した事で俺に助けを求めてきていた。

立場上、俺に言っても解決できないことは分かっているが、やり切れない思いがそうさせているのだろう。


気配探知で調べると、丁度軍用ヘリで飛び立った直後。

仕方ないと思いながら立ち上がり、福建省の爆発現場の中心点へゲートを開いた。

主な従魔を引き連れて現場に向かう。


ゲートを抜けた目の前に、赤い球がまがまがしく光りながら浮かんでいる。

俺の気配探知にも引っ掛からない物。

鑑定を即座にしてみた。


生命の球 人の生命を引き換えに、異世界にゲートを繋げる起爆源。あと1万人の生命でゲートが開く。


成る程、あのバーンはそんな密命を魔王から受けていたのか、これは消滅させるしかない。

そんな考え中にドロスが勝手に動き出し、手をかざした瞬間に赤い球を取り込んでしまう。

辺りが赤く光り、身長1メートル60センチに成長したドロスがいた。

服が少しきつくなって、ボタンの2つが取れている。


「これ美味しい。もっと欲しい」


カオスドロス 身長は、1メートル60センチで黒髪でロング


Lv1


HP240

MP130


STR12+15 VIT9+15

DEF11+15 INT11+15

DEX9+15  AGI10+15


自己回復

種の保存Ⅱ(増殖する機能の増加)

土魔法・亜空間魔法


アンデッドの突然変異種で原種と特異点の中間


どうやら進化したようで、ドロスも亜空間魔法が使える様になってしまった。


俺はゴーレムホーネットを放ち、周りを調べるよう指示。

ブーンと四方に飛び立つゴーレムホーネット。

引き連れた従魔には、好きなように魔物を狩ることを許した途端。

四方へ飛び立ち、駆け出してゆく。


結界を展開して、調査隊が来るまで待つことにする。

長い時間待たされたが、軍用ヘリが到着。

調査が始まった。


夕方になったが、魔物の襲撃もない。

俺が放った従魔が、数少ない魔物を襲い全滅させている。

しかし、それが原因では無いだろう。

あの赤い球が無くなった事で、ここには集まる必要が無くなっただけだろう。


従魔は帰って来る気配がなく。

今は福建省を出て、魔物狩りに勤しんでいる。

ある程度、魔物の戦いを行なう事でストレスの発散になるのだろうか・・・



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る