第46話商業ギルド




一晩中走り続けた結果、遠くに微かな明かりが見えてきた。

朝日が昇りかけた頃にようやく正門にたどり着き、検問を受けた後にギルドに急いだ。

おっさんに花を渡して、一連の話をするとおっさんは難しそうな顔で職員を呼び集めた。


メンバー1人に1人の職員が聞き取りがなされ、全員の聞き取りを完了させると聞き取りのすり合わせが行なわれた。

その結果ボーエンは罰金と1ヶ月間のギルド出禁になった。

俺と他のメンバーは大金を貰い、俺の名声も上がったようだった。

おっさんにいたっては、凄く感謝されて握られた手が痛い程であった。


そして俺は、宿屋の部屋でゲートを開き、我が家へと帰って風呂に入る為に準備を始める。

蛇口を捻り、水が溜まる間にスマホを取り出した。



日本政府のホームページを見るが、やはり俺へのメッセージはなかった。

ただし裏サイトを覗くと、日本政府が怪しい動きを水面下で行なっているらしい情報をキャッチ。

いつもの調整に手間取って議論が空転してるのか、まだまだ明確な答えは出ないだろうと諦めてしまう。


そろそろ水が溜まったので止めると、湯沸器をポチャリッと入れて電源をいれて、しばらく待つ必要があるので食事の準備に取り掛かる。

従魔が持って来た野菜で、手で千切れる物は千切って器に入れ、トマトとキュウリは包丁で簡単に切って器に入れる。

新鮮で美味しいサラダの出来上がりで、異世界から持って来た乾燥肉と玉ねぎを煮込んだスープに調味料を加えて味を調える。

味見をするが、異世界のスープと違って断然美味しい。

やはり鰹だしと昆布だしのミックスが俺の好みだ。


あの固いパンを取り出し、スープにひたして食べると固いパンが美味しく思えてくる。

サラダもサクサクして美味しいし、なんと素晴らしい食事だと異世界から帰ってくると実感してしまう。


次は風呂だと裸になり、温度も熱くなく俺の長湯に適した温度であった。

湯をかぶり体を洗うと、あかがボロボロと出てきてこれは異世界の垢だと思ってしまう。

冷たいシャワーで垢を流すと、体が引き締まった感じがして気持ちいい。

しばらく風に当たりながら、少しだけ平穏へいおんを満喫してしまう。


そしてゆっくりと風呂に入ると、薬湯の効用で体が癒される。

しかしゆっくりもしていられない、スマホで各国のゲートの状況を確認。




中国のゲートは自衛隊と自警団の活躍で、なんとか対等に戦いを展開している。

中国から派遣された人民兵も、徐々に覚醒者を増やし力を付けだして、自警団風の考えが浸透しだしていた。


アメリカのゲートは、ゲート近くまで接近したが新たな狂暴的な魔物が2体が出現。

サイのような体で、その体から角が10本程生えていて、そこから雷撃が無数に放出され気絶する者が続出。

その為、気絶者を抱え退避することになってしまった。


インドとイングランドは、現状維持のままであった。



すっきりしたので、新しい服に着替えゲートを開いた。

今回は、風呂と俺へのメッセージ確認が目的だったので戻ることにした。


異世界に戻ると椅子に座り、アイテムボックスから砂糖袋を2袋とミルク飴6袋を取り出しバックに詰め込む。

宿から出ると大通りに出て、しばらく歩くと商業ギルドが見えた。

冒険ギルドと違い、更に大きく白い壁が目立っていた。

ドアの横に居るおっさんが、ジロリッと睨むが俺は見なかったことにして入って行く。

中も広くどうしたものかと考えていると、綺麗な女性が話し掛けてくれた。


「どうしましたか? 」


「砂糖を売りに来たのですが、初めてなのでどうすればいいか分からなくて」


「そうですか、私が案内しましょう。こちらです」


沢山あった受付の右端に案内され、椅子をすすめられたのでゆっくりと座る。


「砂糖を売りに来た方で、初めてらしいので対応をお願いね」


「初めまして。わたしマーレが対応します。商業ギルドに加入されてますか? 」


「いえ、してません」


「そうですか、商品の売買だけでしたら銅ランクでOKになります」


「それでお願いします」


「加入費用として20000ドルカになります」


俺は袋から金貨2枚をテーブルの上に置くと、マーレさんは受け取り手元の小型金庫に入れると帳簿にササと記入。


「お名前を教えてください」


「ああ、失礼しました。名乗ってませんでした。ハジメ・クレナイです」


「砂糖を売りたいそうですが、今お持ちでしょうか? 」


「はい、これです」


バックをテーブルに置き、1キログラムの白砂糖を2袋を出してゆく。

80グラムのミルク飴6袋もついでにだして置く。


「これが砂糖ですか? 、それに透明な袋ですか? ・・・開けてもいいですね」


「はい、いいですよ」


「なんと雑味のない甘さです。このような砂糖は味わったこともありません。少しお待ち下さい」


そう言って、マーレさんは奥の部屋へ入ってしまい中々出てこなかった。

そして最初に出会った女性と一緒に戻ってくると、マーレさんは座り直して小型金庫から金貨3枚をテーブルに置いた。


「1袋15000ドルカで購入したいと思ってます。どうでしょうか」


ネットスーパーで1袋262円、それが15万円ぐらいで売れた。

どうしようか、ここで大量に売れば値崩れが発生するが、それでも良い儲けになる。


「はい、それでお願いします。それとこの飴も売りたいのですが」


「成る程、わたしも先ほどから気になっていました。これはどんな物なのですか」


「先ほどの砂糖を使ったお菓子です」


「そうでしたか、それでは味見をさせて貰います」


袋を切り飴を取り出し小袋から飴を摘むと、舌でペロリと舐めてまた舐めて口の中に入れてしまった。

口の中で転がしながら、うっとりした顔で上の空だった。

隣で立っていた女性も飴を取り、口の中に放り込んだ。

そして女性は目をキョロキョロとさせていた。


結局、1袋8000ドルカで売ることになり、合計48000ドルカ。

1袋1000円が8万円で売れたことになる。

俺はウキウキしながら商業ギルドを後にした。



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