第42話冒険者の別れ




我が家で朝日を見ながら柏手かしわでを打ち拝んでいた。

これからゆく異世界を無事帰ってこれることを願って。


朝早くから日本政府のホームページを見たが、俺に対してのメッセージはなかった。

信じて貰えないのか、それとも色々と手間取っているのか俺には分からない。

けれどダーレルの街に戻り、例の手紙を渡さないことには、信用問題に係わるので異世界に行くしかない。

そんな俺の行動を察してか、幾ばくかの従魔が見送りに集まっている。


「心配するな、無事戻ってくるさ」


俺はゲートを開き、異世界に向かうことにする。


道からそれた正門近くに出ると、気配探知で辺りを探知する。

俺以外は居ないので一安心だ。


俺は歩きながら正門へ向かい、フロルに念話で異常はないかと聞いてみた。

どうやら手引きをした者が捕まり、拷問に掛けられているようだ。

公爵は今度のことをおおいに怒っているみたいで、公爵のプライドが許さないのだろう。

フロルに渡したトランシバーには、俺の呼び出しはない事を確認。

そんな考え事をしていると、ギルドの前まで来ていた。

中に入り順番に並ぼうとしていると、ギルドの受付嬢に2階へ行けと指図される。


2階の部屋の前でノックをすると、「入れ」と返事が返ってきた。

部屋に入るなり、例の手紙を差し出した。


「開けて読んではいないようだなご苦労だった。これが報酬だ」


「俺はこれから、ダークレイの城塞都市に行く事に決めました」


「何故だ」


「道すがらに旅人から、城塞都市で面白いことが始まったと聞いたので、興味がわき行ってみようと思います」


「その面白い話を聞かせろ」


「なんでもダークレイ公爵の娘が賊に襲われたらしい」


「娘は無事だったのか」


「無事のようだと聞いたが、本当なのか分からない」


「そうか、これは情報料だ受取れ」


金貨1枚が弾かれ、俺に向かってきた金貨を掴んだ。

案外、重要な情報だったようで、少しヘマをやってしまったかも知れない。


「大事に使わせて貰います」


そう言って部屋を素早く出てゆく。

そしてここでの信用度はどれだけ上がったのか、気にしながらこの街を出ることにする。

そしてこの街から直接ダークレイへ行っていないので、結界を自身に展開して道沿いに進む。

ゲートを使用をすると、どうしても距離感が掴めないのでこの行動も重要になる。


道沿いに進むと、田園風景が続きそれなりの農業が発展しているのだと分かる。


そしてしばらく飛んでいると、定番の風景に遭遇。

トカゲの荷馬車がブラックウルフに襲われていた。

近場に下りて結界を解除。ダイヤモンドの弾丸を出し撃ち出した。

ブラックウルフの鳴き声が、悲しく辺りを響きわたる。

倒したその数は23体もいて、ナイフで引き裂き魔石を回収してゆく。

一通り終わると、手には血がベットリとまとわり付いていた。

風魔法と土魔法の混合魔法でその血を綺麗にしてゆく。


後ろで泣き声がするので、振り返ると倒れている人に女性が抱きつき泣いている。

そしてその傍らに1人の男性が、女性を苦しげに見ていた。

すると年配の人がやってきて、


「ありがとう御座います。おかげで助かりました」


「もう少し速ければあの人も助かったかも知れないな。なんだ、あのトカゲは怪我をしたのか」


「そうです、前足の右が噛み千切られて使い物にならなくなりました」


「どうするのだ」


「どうすると言っても、殺すしかありません」


「可愛そうに、俺が治してやろう」


「治すと言っても、魔王の魔石以外治せませんよ」


「俺にはこれがある」


トカゲに近づき、右足に家の薬草の粉をペットボトルに入れかくはんして振り掛ける。

切断された所から、徐々に足が生えてきて立派な足になった。


「これは凄い、薬草の百倍も効果がありそうだ。その粉はどちらで購入した物ですか」


「そんなことより、早く出発しないと他の魔物がやってきますよ」


「そうでした、皆出発だ! 」


あの遺体は布で巻かれ、荷台に載せられ動き出した。

荷台を守るように男女が警戒しながら走っている。


俺も仕方なく走っているが、基本的には荷台には護衛の人は乗らないようだ。

あんなステータスなのにスタミナが有るのか、俺は不思議に思った。

もしかしたらステータスには、スタミナの項目がないので呪いに掛からなかったのかもしれない。


そしてしばらくすると、城塞都市が見えてきた。

正門近くでトカゲの荷馬車が止まり、あの遺体が下ろされた。

なんでも基本的には、遺体などは城塞に入れることは禁止であった。

流行病などや迷信でそうなっている。明確な命令は無いが暗黙のルールらしい。

男はその遺体を担ぎ、外の墓地に運ぶらしい。

女はその後を、トボトボと付いて行く。

あの遺体はあの女の弟だと聞き、なんとも切ない気分になってしまう。


俺達は正門で検問を受け、俺はあの年配の人に分からないようその場を去った。


そして、城塞都市の図書館にやって来た。

受付でボディチェックを受け、剣とナイフは一時預かりになる。

そして入場料は金貨1枚。

出る時にもボディチェックを受け、半額の5000ドルカが返される。


ずらりと並ぶ本から、魔王関係を手当たりしだい読んでゆく。

ステータスが上がった事で、読むスピードが早くなり、理解して記憶するのも容易になった。

半日を掛けて読んでいたが、夕暮れになると退出しないといけないので退出するしかなかった。

また明日一番に来よう。



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