第34話中国の戦い




中国行きのチャーター便には、112名と数人の関係者しか乗っていなかった。

空いている席なのに、わざわざ隣に座る、橋本岬はしもとみさきは話し掛けてきた。


「なあ、知っているか? 一般人で中国に行くのは俺らだけらしいぞー」


俺は眠たいのに、頷くしかなかった。


「自衛隊と自警団を合わせても5105人しかいない出兵によく参加したな」


橋本は自分の事を差し置いて、よく言うなっと思ったが口には出さない。

その自衛隊と自警団は、既に5日前に中国入りをして活躍中。


「多くはアメリカへ行ったらしいが、それが正解かも知れないなー。そう思わないか? 」


「なぜアメリカへ参加しなかったんだ」


「それは金だよ。それに強くなるには中国へ行くしかないだろう。俺は強くなりたいんだ」


中国行きに参加したメンバーは、一癖二癖もある変わり者が多かった。

橋本のように強くなる事に人生を掛ける連中が大半で、あとは金に困った連中で金しか興味がなかった。


「どう見てもお前は、ここの連中とは違う雰囲気がある。俺はそれに興味があるんだ。なあ教えてくれよー」


俺は精神耐性と鍛錬のおかげで、対人恐怖症をようやく克服できるように成った。

募集手続きには少し不安があったが、手続きも簡単で恐怖を受けて動揺する事もない。

説明を受ける講堂内では、ケンカが頻繁に始まるアクシデントがあり、俺は凄い所へ来てしまったと思った。


「教える気はないみたいだな、それなら参加動機を教えてくれ・・・それもダメなのか?」


俺は橋本の顔をチラッと見て、読みかけの本に目を移した。


「それにしても日本政府の本命は、やはりアメリカだったようだな。中国は形だけの出兵だよ」


俺は分かっていてボヤク橋本に、変わった男だという印象を受けた。



中国に到着すると長いバス移動にはじまり、バス内で寝ながらの移動になり、身体の節々が痛くなり困った問題にもなった。

次は軍事用大型ヘリによる移動。

到着するとここが俺らの訓練基地で、自警団の訓練教官が待ち構えて居た。


訓練と言っても教官が捕まえた魔物を、一般人が仕留めて強制的に覚醒させる方法でしかない。

そして覚醒した内容でクラスわけが行なわれ、そのクラスの教官に基本を教え込まれる。

俺は接近戦のスキルを取得したと嘘を付き、基本を教わったあとに前線の後方支援にまわされる辞令が下りた。

ここは治外法権になり、基本的には中国人は立ち入り禁止。

そして夜間の食料庫付近を巡回している。

俺の相棒は、訳も分からない病気にかかり病院送りになって、仕方なく1人で巡回中。


そして近くに魔物の気配を感じると、その魔物の後方にゲートを開いた。


近い所だと気配で確認して、ゲートを開けるようになったのは熟練度アップのおかげである。

これも異世界にゲートを開く訓練の一環で、徐々に距離を伸ばすよう訓練中。


開いた先では、50以上のブラッドが後方基地に向かってゆっくりと移動している。

俺は【風斬舞】を3回にわけて放つと、鳴き声をあげる間もなく全滅させる事が出来た。

そのあとは魔石を回収後に、土魔法で地面の中に埋め込んだ。

そして再度ゲートを開き、巡回場所に戻る。

そんな日常が2週間続いたが、補充兵がやってくると俺は前線へと移動になった。


前線基地では自衛隊のトップが指揮をとり、俺達自警団は遊撃隊の役目を担っていた。

俺が配属されたのは、俺を含めて10人程の小隊。

そしてリーダーは、20歳の女性の高岡優たかおかゆうで風魔法を扱う。

あとで知ったのだが、疾風殺しっぷうさつのユウと2つ名で呼ばれ、数々の魔物を倒したらしい。


配属された夜にそれは起きた。

防衛ラインを守っていたはずの中国軍が、魔物の強襲で呆気なく崩壊。

俺達の前線基地が取り残される形になり、撤退をするしかない状態に陥った。

四方から魔法攻撃が襲い始めたのは、撤退命令が出て10分後で準備も出来ないまま撤退。

俺はその混乱にまぎれて、前線基地を離脱。


ここからは、俺の好きなようにやっていこうと思っている。

もし日本にゲートが開いたなら、逃げ回っていたと言って自衛隊に戻ればいいと安直に考えている。


もう既にゲートの熟練度は、次の段階にいくのではと思っている。

気の鍛錬をする事でMPの回復が著しく、回復の都度ゲートを使用して熟練度アップに努めていた。

なのであと少しでゲートを開く距離が、地球の反対側まで距離が伸びる感覚がしている。

これも魔王の知識なので間違いないだろう。

その先が異世界へ繋げる段階になる。


なので自衛隊の組織から離脱した。

今、向かっているのは魔物が集まっているポイント。

既に3万以上が集まり、何時でも自衛隊を襲う態勢になっていた。


土魔法の【石弾】が全面に連射され続けていた。

後方に回り込もうとする集団は、既に探知されその集団の頭上にも【石弾】の雨が襲っていた。

空から襲う魔物も、俺に取ってはいい的でしかなかった。


そして2時間を掛けて、ようやく戦いは終わりを告げた。

途中に2万程の増援もあったが、俺の得意な土魔法で対処できた。



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