第6話救助要請




いつもの様にスマホで情報集めをしていると、岡山の山奥から救助要請の動画を見つけた。

大人10人と子供4人が映し出され、戦時中に作られた防空壕に隠れているらしい。

防空壕の座標位置を書かれた紙を、母親が小さな子供と手を繋ぎながら持っていた。

そこのリーダーらしい男性が、食料も無くなりかけている事を話している。

何人か救助を求めて出て行ったが、連絡が無い状況で切羽詰まっているのが現状だった。


救助要請者の話で分かった事は、スマホの通信可能な時間帯が17時から18時までらしいということだ。

原因は分からないが、それも1つの情報としてありがたい。


座標を調べてみると、ここから50キロ先だと分かった。

あくまでも直線距離であるが、道路を使うともっと距離は伸びるだろう。


政府が救助するなら兵庫側からがもっとも近い。

しかし兵庫側は神戸を守るのが手一杯で、救援に行けそうになかった。


ニュースでも、その戦いの風景を度々見かけるようになった。

正に必死に防衛ラインを守る自衛隊が頼もしく見えていた。


バードンの目撃情報もちらほら出だしていた。


そしてついに自衛隊の戦闘機がバードンに挑んだ。

バードン1羽に対して3機でのドッグファイトが行なわれて1機が墜落。

バードンは逃げ帰った。


そんな状況では救助ヘリを飛ばす事も出来なかった。

書き込みには、同情するコメントが多い。

救助要請はニュースにもなって、政府への批判へとなっていた。


そして俺は悩んでいた。

女のストーカーに刺され、刺された状態で放置。

俺は動けないまま倒れ、痛さと死ぬのかという恐怖に襲われながら長い間もがいていた。

誰か助けてくれと、意識が続く間助けを願っていた。

これは体験した人間しか分からないだろう。


そして救助要請者たちを助けられるのは、今は俺しか居ないと考えていた。

防空壕まで行くのは簡単だが14人を無事救助するのは大変な事だと容易に理解している。

何もしなければ助からないなら、1人でも助かる可能性に掛けるべきだ。

女性に対しての恐怖感は依然として変わらないが、我慢できると自分を信じる。

そして俺はやっと決心した。



屋根のツータンに、水が欲しい時はこのボタンを押せと教え込んだ。

止める時も同じボタンを押すんだと念を押す。

多分、理解してくれたと思うしかない。

第1防衛ラインのツータンと協力し合えば、畑の水やりも出来そうで教え込んだ。

救助には多分、日数が掛かると予想したからであった。


一旦決めたらバッグを背負い。腰のベルトに刀を差し、猟銃を肩に担いだ。

バッグからは、鉢に植えたシアンがフサフサと揺れている。

シアンは見張りや警戒担当として連れて行く。


準備が出来たので、俺は走り出した。

Lvアップした事で身体能力が異常に上がっている。

時速50キロは出ているかも知れない。

今まで体感した事もない経験でもあった。

急カーブなら、思い切りにガードレールを踏み台してカーブを曲がり切った。


車を使わないのは、渋滞状態で車が放置されている可能性が有るからだ。

それなら走った方が、家の屋根の上でもジャンプして移動出来るからだ。

出来るなら魔物と戦わずに回避して、目的地に早く到着したい。

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