巾着袋発匠の技~ 人生の潤いを爪切りから
与方藤士朗
第1話 爪切りが、ない!
自宅のワンルーム、自称蛸壺庵、別名、首塚は、常時、散らかっております。
なんせ、洗濯して乾かした服は机の向こうにひたすらほったらかし。
それはなんと、机からパソコンが落下してもクッションになってくれることを期待してのことだというのが、その蛸壺庵の主、つまりワタクシの意図だそうである。
~アホかいな(苦笑)。
そんな場所だから、あれどこにあったっけ、なんてことが起こらぬはずがない。
あの日も、そういう塩梅となったのね。
さあ、そろそろ、爪を切るか。で、爪切り・・・・・・?!
な、ない!
周りを探しても、見当たらん。なんか、しょうがないな。
出張先のホテルかサウナに入ったときにそこでついでに切っておくという手もあるにはあるけど、あいにくこの週末まで、そんな気の利いた日はない。
それに、爪を切るついでにサウナに行くというのも、さすがに、ねぇ(苦笑)。
困った、困った・・・。
しょうがない、爪切りを買ってくるか。
私は、意を決した。
何百円かかかるかもしれんが、もう、ええ。捨て金だ。
そして、用向きのあった岡山駅前の某巨大家電ショップに出向きましたとさ。
爪切り買って爪切って、メデタシ、メデタシ、となるには、まだまだ、早い。
とにもかくにも、岡山駅から飛び込んですぐの1階の日用品売場へ。
爪切りのありそうなところに、私は、やって参ったぞ。
確かに、確かに、確かに!
そこには、ピンからキリまで、いろんな爪切りが売っております。
何かのもらい物とか、やむなく買ったものとか、そんな爪切りならいくつかあるのですけど、まじめに買おうと思ってきたのは、人生50年少しの間で、初めての出来事でありました。別に、口づけのその後なんてことは、ないけど。というか、わし、独身で付き合っているおねえさんも、いねえし。第一、荷物ぐらいしか、持てねえ。
で、爪切り、いろいろ、あります。
見るほどに、まあ、しつこいけど、ピンキリ、やね。
3桁から4桁の前半までがこの種の商品の相場みたいね。
その範囲で、いろいろ、よりどりみどり。
おねえさんなら、いいのだけど、というと、なんか、違うかな。
~ま、それは冗談。
しかし、わざわざ爪切るだけの道具に、大金かけても、なあ・・・。
てなわけで、大層なもの買おうなんて、微塵も思っていなかった。
ただし、その時までは。
(つづく)
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