首無しトップガン

一藤九曜

首無しトップガン

 走馬灯――戦闘機に乗って空中戦ドッグファイトに負け、墜落する俺は噂を思い出す。飛行機乗りは、飛行中にUFOを見たと報告すると地上勤務にされて二度と空を飛べなくなる。対策は沈黙。平然と振舞うのが唯一の手段。


 もう1つ、俺の周囲に噂がある。過去に、ある試作機があった。可変翼という、主翼を折り畳める戦闘機で、普段は鶴の様に長く大きく、折り畳むとUFOの様に丸いとか。


 だが試作機は、飛行中に墜落。残骸は機首と一部しか回収出来ず。それ以来、軍の飛行機がある所、機首が無い戦闘機が目撃されたとか。


 ――まさに今だ。荒ぶる操縦席から見えたπ字の影。それは時に丸くなって空を舞い、敵機を墜とす。


 理解した。UFOの正体がアレだ。機首を失った戦闘機は、亡霊の如く未だに空を飛び、守護霊の如く、俺達を守ってくれた。沈黙してでも空を飛ぶ理由もだ。俺は生還する。そして、再び飛び、礼を――。




 ◇



「――以上が、部屋の遺品・・にあった日誌です」

「……何度目だ?」

「手で数えられない程です。……やはり、正直に言うべきでは?」

「言えるか! 墜落した機体が何故か飛び、1度見たら2度目には撃墜する死神だと! 救う為に地上勤務にして黙秘など!」

「……それと、敵対国から降伏の連絡が」

「――〝無視〟だ。戦い続けろ。我が軍の機の撃墜は、名誉の戦死だ! あの死神は隠せ! 君も、私も! 首が飛びたくなければな……!」

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首無しトップガン 一藤九曜 @fyroot1484

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