#ガス会社の点検の巻
木林春夫という伝説の男を知っていますか❓
たぶん誰も知らないと思います。
私もよく知りません。
はっきりしているのは、木林春夫が伝説の男だということだけ。
ですが「伝説」となっているからには、何かしら根拠となるエピソードがあるはずです。
これからお話しする出来事が、木林春夫をして、伝説の男たらしめたかどうかはわかりません。
判断は皆さんにおまかせします。
では、聞いてください。
【ガス会社の点検の巻】
なんの変哲もない平日。
天気は晴れではないけれど、雨でもない。
一言で言うと、曇り。
そんなある日の15時。
木林春夫さんは、自宅である人を待っていました。
誰を待っていたかって?
ガス会社の人です。
2週間前、家のポストに「ガス設備定期点検」のチラシが入っていました。
よく読むと、ある日付と時刻が記載されています。
それは、ガス会社の人が訪問してくる時間帯を知らせるものでした。
ただ、その時間が問題です。
なんと午前10〜12時の間。
目覚めて、まだそんなに時間がたっていない時間帯。
ひょっとすると、寝ぼけてガス会社の人の話を、きちんと聞けないかもしれないじゃないか。
ガスが漏れたときにどうするかなど、大事な話をしてもらっている最中に、居眠りするかもしれないじゃないか。
心配になった木林春夫さん。
急いで時間帯の変更を、電話でお願いしてみます。
運良く、希望の時間帯が空いていました。
その時間帯が、この日の16〜18時だったのです。
ガス設備周りは、数日前にピカピカにしたので、見られても恥ずかしくありません。
玄関も掃除して、靴もキレイに整えました。
ガス会社の人が履くためのスリッパも用意済み。
さて、16時になりました。
もちろん16時ぴったりに来るはずがないですし、来る必要もありません。
16〜18時の間に来てくれればいいのです。
特にすることもないので、木林春夫さんはのんびり待ちます。
でも、17時を過ぎると、さすがにあせり出しました。
自分が日にちを間違えたんだろうか。
それとも、時間の変更を受け付けた担当者の人が間違えたのだろうか。
さもなければ、点検に来るガス会社の人が、当日になって仕事がイヤになり、喫茶店でサボっているのではないだろうか。
いろんな妄想が、木林春夫さんの頭を駆け巡ります。
木林春夫さんは、覚悟を決めました。
もし来なかったとしても、ガス会社の人を責めないでおこう。
きっと何か理由があるに違いない。
自分だって、約束をいつもいつも、完全な形で守れているわけではない。
それに、99%ありえないと思うけど、自分の方がどこかで間違えたのかもしれないし。
とうとう17時半になりました。
あと30分しかありません。
さらに5分たち、10分たったころ、玄関のドアが小さくノックされました。
急いで開けると、そこには制服を着て、コロナ対策のためにマスクを着けたガス会社の人が立っていました。
木林春夫さんは自分でも気づかないうちに、こう言っていました。
「ありがとうございました❗️」
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
教訓👉木林さん、待ちくたびれたんですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます