番外編.14


 楓の発言で時が止まったかのように沈黙が走った。

そんな空気を壊すように

「どこでそんな聞き方知ったんだい。

楓ももうお姉さんだな~」

蓮がおどけたように言った。すかさず私も

「ほんとほんと。優先なんて難しい言葉も知ってるなんて」

と全力で話をそらそうとしたのに

「ちがうそうじゃないの!!

パパはお仕事か楓たちか、どっちがたいせつなのって言ってるの!!!!」

楓は話をそらされたのに気付いたのか、いすから立ち上がり怒ったように言った。

 私と蓮は顔を見合わせ、助けを求めるかのようにお母さんの顔を見た。

「楓、落ち着いて椅子に座って。

パパはね、楓のことずっとずっと大切って思ってるとママは思うわ。

でも、お仕事に行かないと楓と過ごすときにお金がないでしょ。

楓が大切だからパパはお仕事に行くの」

「楓にはちょっと難しかったかな?」

お母さんは、楓の目を見ながら優しく諭すように言った。

「. . . . .わかった」

楓はすこしふてくされたように、でも納得できた声で返事をした。

 私は、テーブルの木目を見ながら考えた。

楓はお母さんの話を聞いて納得できたかもしれない。

だけど、私は少しも納得できない、だって、

お父さんがもっと早く仕事をしていたらきっと帰ってこれたとよなとか思うし、

でも、お父さんがお仕事大変なのもわかる。

と感情が大混雑していた。




 まあ、私が考えたところでお父さんが帰ってくるわけじゃないからと

考えることを放棄した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る