非潔久留里のクリカエシ

@algohakuhaku

第1話

今日この日俺はいつもより早く朝を迎えた。


それには理由があるから追って説明しよう。


まず人間の朝というのは頭の中で今までの17年間をロードする所から始まるのである、知識の中には自分の名前や昨日食べた食事とかがある、それは皆無意識に起こっている事だろう。


そして今日に限ってそれは炸裂的な、脳のシナプスを刺激する物が大々的に全ての情報より優先された。


先輩に告白するという事柄は何よりも優先されて思い出されたのである。


その事実は昨日の俺からの希望と絶望とワクワクを巻き込んだ禍々しい謎の感情の贈り物だった。


「やるしかないぞ俺、願っても先輩もう卒業しちゃうからな」


俺はそう心の中で決起し使い慣れないワックス姿を家族に微笑みと笑いを向けられながら、駆け足で学校へと繰り出そうと自転車に跨った所後ろに重みを感じた。


「今重みを感じたとか思いましたか?ダメですよ?身内、妹と言えどレディはレディです、私は今日朝食を食べていないので体重はありません」


そういうと彼女はご自慢のピンクのパーカの紐を、付け髭の如く付け話し始めた。


「俺には妹なんか居ない」


「妹じゃなかったら兄より年増になってしまうじゃないですか、作品上妹キャラの方がウケるんですよ?」


「そんなことは無いそういう事いうお前にはこれをやる」


「これはエロ本ですか?何の脈絡もなくコレを渡してくる、この訳分からない展開に付いてきてこその神田家であるとそう言うのですね」


「そんな事は言ってないしそれはただのお前が今落とした体育の教科書だ、お前は男子中学生か」


「いえ女子中学生ですよ?」


低身長でおかっぱ気味なので本当にそう言われたらそう見える。


「知らん、行く」


「ご達者で〜」


そんなこんなで学校へ向かったのだが、いつも遅刻ギリギリの為ある重要な事を忘れていた。


「あら見覚えのある顔ね、どこかで会った?千円君」


「そのあまりにも不名誉な名前はやめてください、今はちゃんと美容院行ってますから」


「そう?確かにほんの少しだけ垢抜けた気がしているような?しないような?」


「上げるなら下げないでください」


「今日もいい一日を過ごせますようにって願っておいたから許して?」


何だこの可愛い先輩は、今日は髪を束ねていていつもは下ろしているので新鮮な気持ちだ、色白い肌が際立っている。


そう言えばうちの生徒会は朝早くに来て校門前で挨拶運動を行っているのをすっかり忘れていた。


「早く行かないと遅れるわよ?遅れると叱りに行くから」


「大丈夫です」


そういうと俺は颯爽と駆け出した。


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「やめとけとしか言えない」


一限目から体育だった事もあり、アホ毛の張りで調子の分かると噂の変人もとい友人もとい親友に説教を食らっていた。


ちなみに今日は地面に水平に立っているので絶好調である。


「今の状況からして厳しいのは分かるけど宝くじも買わないと当たらないし、犬だって歩かなきゃ棒には当たらないんだ」


「確かに君の今回の下準備には頭がさがる、きっとこの世の中のだれよりも頭で反復試行を繰り返して今に至ってるだろうな」


「やれる事はやったはずだ、好感度だって悪くはないと思ってるし文化祭、体育祭、生徒会選挙、こんな行事が2週間の間にあったおかげで更に距離は縮まったように思えるからな」


「お前先輩にずっと良い感じに張り付いてたもんな」


「言い方」


「確かに今回のお前はできる事の中では完璧に近いと思う、しかしこの世には古今東西人事を超えた者も物も存在すると思った方がいい」


「ナポレオンだろうがホスト呼んでこようが今回ぱかりは諦められんぞ」


「お前の中でナポレオンがイケメン枠か、ああ確かに今回ばかりは当たりそうな気もするぜ」


「だろ?放課後の事だからまだまだ分からないけどな」


「いやもう決まったような物だ、安心していい」


「は?マジ?そんな事どこでそう思ったんだよ」


「今ここで」


「お前ついに俺にもツキが来るって?」


「ボールがな」


そう彼がいい放った直後ボールは顔に突き刺さった、そう言えば今体育中でしたね。


「しょウヴァ」


俺の情けない声と共に響いたのは歓声だった。


「ナイス翔、ノリノリだな」


「ごめん顔に当ててしまったよ、つい避けると思ってしまって」


当てて来たので言い返そうと思ったが驚きのあまり留まってしまったのは何故か?


見た事ない奴が居たから、凄くまつ毛長い誰だ?こんなのうちに居たっけ


「大丈夫大丈夫俺が悪い、あははははは」


「やっぱり大丈夫じゃないんじゃないか?連れてこうか保健室?用もあるし」


そう言うとかれは煌びやかなまつ毛を靡かせながら心配そうな顔で倒れた俺に駆け寄ってきた。


「いやこいつの思考回路は常時こんなもんだから」


「失礼を言ってしまったな、自分が少し楽しみ過ぎていたようだ」


何か腹立つぞ?君達。


「それは嫉妬か?それか嫌になっちゃったのか?」


アホ毛を靡かせた友人は尋ねる。


「生憎僕はそんな感情持ち合わせていないよらもっともそれは、消え失せたという方が正しいのかもしれないが」


コイツもSF好きなんかとか思ってる時、彼は体に比べて大きめの服をただして言った。


「いややっぱり君は保健室に行った方がいい、垂れてる」


体操服に真っ赤な液体が滲んでいた。


「悪ぃ寄るだけ寄ってくる試合は続行しててくれ」


間もなくして俺は情けなく、彼から貰ったティッシュで鼻を抑えながら保健室へ向かった。


「保健室はと...」


しまった保健室の場所がわからん、うちの高校身体測定とかも教室でやるからよく考えたら一回も行っていない。


「君かここに現れたのは」


「!?」


コイツ授業中にティータイムしてやがる、マスクつけてるし、それに髪色おかしいしピアス何個空いてんだこれ、何でこんな奴がいる?


「今ピアスとか容姿について何か言いたそうにしてたな?」


「うっ、すみません」


なんだコイツ俺の姉みたいなアレか?心読める系のやつなのか?中二病とか言うやつ?てかまず何で皆本当に読めてんだよ。


「早く卒業してください」


「な、何をいきなり言い出すんだ流石の私も身構えてなかったぞ!」


「何の話!?」


「何の話!?」


「まぁ良いです、先輩なのか後輩なのか不審者なのか存じ上げませんけど保健室がどこにあるかわかりますか?」


「失礼だな君は、デリカシーを持ち合わせていないのか? 道は突き当たりを右だ」


そういうと彼女はふくれっ面になった気がする、勿論見えないけど。

「!ありがとうございます」


「ただここで引き返す事も出来るさて君はどうする?何を願う?」


「今そういうのに付き合ってる暇は無いんですよ、授業戻りたいんで」


そして保健室へ入る時に振り返るとさっき話していた仮面の女性はもう居なくなっていた。


「今回私は保てなかったようだよ、ごめん葛西」


親友の葛西の名前が呼ばれていた気がした。



「失礼しまーす」


声は返事が帰ってこず、不在中と書かれた猫型の板が吊り下げられていた。


「俺そもそも保健の先生すら見た事無いんだよな、分からないけどとりあえず借り...」


「神田君?どうしてここに?」


少し女声にしては低めの音と携帯が落ちる音がした、先輩だなんでこんな所に。


「どうしたの?ケガ?それとも具合が悪いの?」


「鼻血が出てしまって」


「鼻血なんて出てない様に見えるけど」


「!?」


確かに鼻血はおさまっていた、まるで元から出てなかったように。


「先輩に話があるんです」


?いきなり何を言っているんだ俺は


「何?』


「俺は先輩、貴方の事が好きです」


なんで今?何故言ってしまった?


よく分からんけど言ってしまったのはしょうがない、いやしょうがなくないだろ!意味わからんわ!


「ごめんなさい、私付き合ってる人がいるの」


「え」


いやまてそんな話聞いた事が無いぞ、そもそもなんで告白....いやもうそっちはいい!恋人がいる?


「そんなの聞いてな...」


「あっ翔くん」


「お待たせしましたか?それにしても人使いが荒い人だ」


どうしてここに翔がいる?


「君の...やはりそうか君は...」


「私...翔.....ってるの」


何だ何だ?視界がぼやけてきてなにもかんがえられなくなってきた。


「それはそこにて今くるりと繰り返す」


其の時、仮面を被った少女の髪色は変化し彼女はまたひっくりがえった。







今日この日俺はいつもより早く朝を迎えた。


それには理由があるから追って説明しよう

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