第61話 大賢者が村の仲間になる

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 大変お待たせしました!


 諸事情により更新滞っていましたが、再開します! 今日から毎日連続投稿です!


 キリのいいところまで連続投稿、その後はいったん連載停止し、まとめて書き溜めができ次第連続投稿していこうと思います!


 よろしくお願いします!


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 温泉から上がると、イチゴ牛乳を飲む大賢者エンピナ様に声をかけられた。お会いするのは、王都武闘大会以来だ。


 見た目は10台前半の小柄な少女だが、実年齢はどう少なく見積もっても300を超えている。


 大賢者エンピナ様といえば、国中で知らぬ者はいない。


 王国最強の魔法使いで、伝説的な存在。王宮のエリート魔法使いたちが全財産を投げ出してでも弟子になりたがる。


 特に同族のエルフには、神扱いされているらしい。


「こんばんは、大賢者エンピナ様。気に入っていただけたなら何よりです」


「ニャ!? さっきから村にいる見知らぬ女の子、大賢者エンピナ様だったのニャ!?」


 近くにいた温泉上がりのキャト族さんが、天井に頭をぶつけるほど飛び上がって驚いていた。


「みみみみんな、一大事ニャ! 大賢者エンピナ様が温泉に入りに来てるニャ! すぐに来るニャ!」


 全速力でキャト族さんが走り去り、一族全員を集めてきた。


「「「大賢者エンピナ様、お会いできて光栄ですニャ!」」」


 キャト族の皆さんが、一斉にエンピナ様に頭を下げる。


「はて? 愛らしく小さい者たちよ。何故汝らは我に頭を下げる? 汝らに施しをした記憶はないが」


「キャト族の歴史に伝えられていますニャ! 魔族と人類の戦争が起きるよりさらに前、今から500年前の事ですニャ! 魔族の奴隷になっていたボク達キャト族を開放してくださったのが、エンピナ様ですニャ!」

「圧倒的な力でキャト族を虐げていた魔族を蹴散らしてくれたと伝えられていますニャ!」


 初めて聞いた話だ。それほど前から大賢者として活躍していたとは、本当にエンピナ様は底がしれない。一体何歳なのだろうか。


「500年前か……ああそう言えばそんなこともあったような、なかったような? 500年前のことなどもう覚えておらぬよ……それにしてもキャト族とは愛らしいな。こんなにモフモフではないか」


 エンピナ様がしゃがんで、キャト族の1人の頭をこねくり回す。キャト族さんが気持ちよさそうに目を細めた。


「ところでエンピナ様、何故この村へ?」


「む。なんだ我が弟子、忘れたか? 武闘大会の時、汝に魔法技術を教えに村へ行くと言ったではないか」


「そうでしたね。まさか、こんなに早いとは思っていませんでした」


 ごく自然に、僕の呼び方が“我が弟子”になっている……!


「ニャ!? 領主様、大賢者エンピナ様から直々に魔法を教わるのニャ!? 凄いニャ! 領主様が更に強くなっちゃうのニャ!」


 キャト族の皆さんが手足と尻尾をブンブン振って興奮している。


「何故エンピナ様は、僕に魔法理論をそんなに熱心に教えてくださるのですか?」


「魔法とは、とても奥深いものでな。何百年も研究を重ねている我でさえ、まだまだ真理にはたどり着けていない。山に例えるならば、我はまだ山の裾を登り終えたに過ぎぬ」


 エンピナ様が、はるか遠くを見るかのような顔をして言う。


「魔法を学ぶ上で、必要な素質とはなんだと思う?」


「やはり頭の良さ、でしょうか?」


「それも必要だ。だが、それ以上に大事なものがある。それは”強力な魔法を使えること”と”幅広い種類の魔法を使えること”だ。魔法とは、座学で理論を学ぶだけでは身につかぬ。実際に魔法を発動することで初めて理論が身に付き、真に理論を理解できる。ここまで言えばもう分かるな?」


 僕は頷く。


「大賢者と呼ばれる我でも扱えるのは5系統の魔法だけ。1000を超える系統の魔法について理論研究をするには、とても足りぬ。だが、【根源魔法】を持つ汝は見た魔法を全てコピーすることができる。しかも、威力を限界まで高めたうえで、だ。多くの種類の魔法を使うほど、汝は魔法理論を理解していく。いずれ魔法のすべてを解明し、魔法の真理へと辿り着けるであろう」


 魔法の真理への到達。それは、全ての魔法使いの悲願である。


「という訳で、明日から汝に我の研究成果である理論を授けよう。理論を学べば、上位魔法も扱えるようになり基礎威力も向上する。魔族との戦いにも役立つぞ? ……汝であれば、我が届かなかった”五元素究極魔法”にも到達できるやもしれぬ」


「五元素究極魔法……!?」


「基本となる五元素魔法の頂。理論上は存在するとされている、究極の魔法だ。100年以上研究を続けてもいまだに届いていないが、我の魔法理論と汝の【根源魔法】があれば辿り着けるはずだ」


 今の僕は、まだまだ弱い。王都武闘大会の日、父上をさらわれて取り返せなかったのは僕の力不足のせいだ。


 僕はもっと強くなりたい。


「ありがとうございます、よろしくお願いします」


 大賢者エンピナ様から魔法を直に教わるなんて、僕はなんと恵まれているのだろう。


 父上、見ていてください。僕はもっと強くなって、必ず魔族から父上を救い出して見せます。


「そして、我はこの村が気に入った。オンセンなるものは心地よいし、食事も美味である。特にヤキトリなる奇妙な肉料理が気に入った。異国の庭園も我好みだ。汝に魔法を教えるにも都合が良い。我が弟子、我はここに住むことに決めたぞ」


「それは光栄です! よろしくお願いしますね!」


「大変ニャ! エンピナ様が村の仲間になったニャ!」

「一大事ニャ! 一大事ニャ!」


 キャト族の皆さんたちが、パニックになって辺りを走り回る。


 レインボードラゴン・獣人族・極東大陸のシノビに次いで、伝説の大賢者エンピナ様が村の仲間になった。


 様々な人材が集まり、いよいよ村は凄いことになってきた。特化したスキルを持つこれだけの人材が力を合わせれば、何だって出来そうだ。


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