第48話 決勝戦、ついに実家の弟との一騎打ち
エンピナ様を打ち破ってからの試合は、滞りなく進んだ。
どの相手も本戦参加者だけあって相当な実力者であったが、化け物じみた実力を持つエンピナ様に比べれば、常識の範囲の強さだったといえる。僕は晴れて決勝へと進むことができた。
一方のカストルも、順調に勝ち進んでいる。【剣聖】のギフトを手にしてからはちゃんと修行に励んだらしく、他の実力者相手に互角以上に戦えている。
流石にジャッホちゃん相手では相当苦戦しただろうし、エンピナ様が相手ではまず勝てなかっただろうが、そこは運が味方してくれた形だ。
そして準決勝。
『——決着です! 勝者、カストル選手! 執念を見せ、ギリギリの戦いを制しました!』
会場からカストルに拍手が送られる。それが僕には、我が事のように誇らしい。
「はぁ、はぁ……なんっっっっっとか勝ったぜ! これでやっと、決勝でメルキス兄貴と戦える。これで兄貴を超えられるぜ……!」
カストルが選手席の僕の方を見る。その瞳には、熱くたぎる情熱があるように見えた。
僕は闘技場へ降り立つ。
『この一戦で優勝者が決まります! 決勝まで勝ち進んだのは、なんとロードベルグ伯爵家の双子! メルキス選手とカストル選手です!』
決勝戦での双子の兄弟対決というこれまでにない組み合わせに、会場は盛り上がっていた。
「久しぶりだなぁ、メルキス兄貴! 小さい頃から、俺はずっとこの日を待ってたぜ。才能のある双子の兄貴と比べられてばっかりで、兄貴には一度だって剣で勝てなかったしなぁ。
カストルが凄まじい殺気を向けてくる。やる気があって良いことだ。
修行から逃げてばかりいたあの頃とは大違いだ。
「だがそれも今日で終わりだぜ。俺は今日、兄貴を超える!」
弟がこれほど感情剥き出してぶつかってきてくれることは、久しく無かった。僕は嬉しい。
「それは楽しみだ。受けてたつぞ、カストル」
僕とカストルはお互いに剣を抜く。
『それでは王国闘技大会決勝戦、メルキス選手VSカストル選手、試合開始!』
その瞬間、僕の体が急激に重くなった。
「どうした兄貴? 急に動きが鈍くなったじゃねぇか。ククク、俺は勝つためには手段はもう選ばないぜ」
なるほど、どうやら僕には呪詛魔法“カースバインド”がかけられているらしい。両手両足に、それぞれ大人がしがみついているかのような重さがある。
次に、僕の体からごっそり魔力が抜けていく。初めて食らったが、これは呪詛魔法“マナドレイン”だろう。身体能力強化魔法“フォースブースト”を維持するのに問題はないが、さっきのエンピナ様との試合のようにもう攻撃魔法を連射することはできなさそうだ。
最後に、僕の視界が真っ暗になる。これは予選でナスターシャが喰らっていた、呪詛魔法“ダークビジョン”だろう。しばらくの間、何も見えなくなる呪詛魔法だ。
「なるほど、今回はこういう試練か」
体の動きが大きく鈍り、攻撃魔法も使えなくなり、視界も封じられた。
『これだけのハンデがあれば、カストルと互角に戦えるだろう。そして同時に、カストルも鍛えてやりなさい』
僕は、この呪詛魔法を父上からのそういうメッセージだと受け取った。
状態異常解除魔法“ローキュアー”を使えば“カースバインド“と“ダークビジョン”は解除できるが、試練なのであえて解除しないでカストルと戦う。
「いくぞカストル、お前がどれだけ強くなったのか見せてもらうぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます