第41話【実家SIDE】新たなる企て

 メルキスのもとに武闘大会の案内が届いたころ、ロードベルグ伯爵家。


 いつもの応接間で、メルキスの父ザッハークと、魔族の男が意気消沈していた。


「フフフ、と今回ばかりは笑っていられないですね……」


 魔族の男は、いつになく落ち込んでいる。


「我々の洗脳下にある超弩級モンスター軍団が悉く全滅……! 今週王都を襲撃して落とす計画が、すっかりパァですよ!」


 メルキスは、モンスター軍団を全滅させたことで人知れず王都の危機を救っていた。


 ザッハークと魔族の男は、ミノタウロスとメルキスの戦いを思い返していた。2人の頭の中に、メルキスが最後に使った超破壊力の魔法がよみがえる。


「あそこまで追い詰められるまで使わなかったということは、メルキスはあの場面であの植物と回復の融合した魔法に覚醒したのでしょう」


「まさかあの土壇場で……! きっかけは一体なんなのだ! 皆目見当がつかんぞ!」


 ザッハークは、自分の掛けた声がメルキス覚醒のきっかけになったとは夢にも思っていなかった。


「今回の一件で、魔族の中でのメルキスへの対処の優先度は跳ね上がりました。メルキスを倒さねば魔族に未来はありません。これより魔族は全力でメルキスを倒します。早速魔族の精鋭を集めました。罠にかけて1人を撃破することに長けたエキスパートです」


「クックック、頼もしいのう」


 ザッハークと魔族の男はニヤリと笑う。


「ですが、罠にかけるにはあらかじめ下準備が必要です。メルキスをこちらの指定した場所に呼び出す必要があります。なおかつ、邪魔が入らない一対一の状況を作らねばなりません」


「そんな都合のいい話が……待てよ、確かもうすぐ王都闘技大会だな。これは使えるぞ。おいカストル、話がある!」


 ザッハークに呼ばれ、メルキスの弟であるカストルがやってくる。


 【剣聖】のギフトを授かり、ハズレギフト持ちのメルキスの代わりにロードベルグ伯爵家を継ぐことになったカストル。昔は修行をサボってばかりいたが、最近は少し真面目に修行に取り組むようになった


「メルキスは必ず王都闘技大会に出てくる。お膳立てはしてやる、お前が倒すのだ」


「俺が、メルキス兄貴を……!? 本当ですか父上!」


「ええ、我々魔族が全力で貴方の兄超えをサポートします。メルキスを罠にかけ、全力で弱らせる。そして念のため、これを渡しておきましょう」


 魔族の男が、漆黒の球体をカストルに渡す。


「魔族の力が秘められている球です。この球が。力をくれるでしょう。ただし、使い過ぎると身を滅ぼすことになるのでお気を付けを」


「へへへ、俺がメルキスを倒す、俺が……!」


 カストルは、ずっと夢見ていた兄超えの予感に浮足立って、魔族の男の忠告を聞いていなかった。

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