第13話 天使、逆異世界転生完了
フロウティフォンとライド達を乗せたトラックは何度もぶつかり合うッ!
豪雨のようなフロウティフォンの攻撃だったが、トラックは何度も物理法則を無視した軌道で避け続けていた。
「ハハハハハ! 人間! 体力は保つのか!? 少しは手を抜いてやろうか!?」
「不要!」
トラックは一度距離を取るため、フロウティフォンから離れていく。
フロウティフォンはこの時点で違和感に気づくべきだった。
「大口を叩いておいて、その実、大したことのない突進攻撃の連続! 我はもう飽きてしまったぞ!」
フロウティフォンからしてみれば、もはやこれは子供の遊び。突進しかしてこないので、万物を超えた存在フロウティフォンの目からすれば、これはもう戦いではない。
ライドたちの目がまだ死んでいないから、もしやと思い、こうして戯れ続けているだけである。
「……もう少し」
再びライドはトラックをフロウティフォンへぶつける。彼の意識は既にフロウティフォンへはなかった。
後ろで控えているルピスが不安げに確かめる。
「ねえライド、大丈夫? ライドは勝てるよね?」
「当たり前だ」
“空”を見つめながら、ライドはきっぱりとそう言った。
「あぁ飽きた飽きた飽きた!! もう終わりにする! すまんな人間! もうちょっぴり我が我慢強かったら、こうはならなかったのになぁ!」
フロウティフォンは空いた左手を天空へ掲げた。そこに金色の光が収束する。光はやがて細長くなり、円となる。まるで絵本に出てくる天使の頭の上にある輪っかのようだった。
「我の全てをこの一撃に込めよう! この周辺一体、吹き飛ばす! それで我は気持ちよく帰ることにしよう!」
フロウティフォンが産み出した光輪から感じるは、絶望的なまでの波動。一瞬掠りでもしたら、存在ごと消えてしまいそうな、そんな圧倒的潜在破壊能力ッ!
しかし、ライドの顔に諦めの色はなく、むしろ――まだ勝つ気でいた。
「褒めてやろう人間! ある程度の実力を持っていたら、この我の光輪を見た瞬間、失禁し、発狂する! なんたる精神力! だからこそぶち壊してやりたい!」
今まさに光輪を投げつけようとするフロウティフォン。
「この光輪によって存在を消されろォォォ!!! ハハハハハハハ!!!」
フロウティフォンの視界に、一瞬影が映り込んだ。
「はん」
鼻で笑ったフロウティフォンが滑るように左へちょっぴり動くと、どこからともなく現れたトラックが横切り、地上へ落ちていった。
「不意打ちにしてもお粗末。満足したか――」
再び感じるトラックの気配。また回避行動を取るフロウティフォン。そこで彼女は気づいた。
(何やら攻撃の間隔が短くなってきている)
ふと、空を見上げた。そこでフロウティフォンはライドの“攻撃”に気づいた。
「な――!」
「気づいたなフロウティフォン! だが遅いよ!」
それはトラック。空を埋め尽くすトラック。雲のようにトラックたちは固まっていた。
「これはぁぁぁぁぁ!?」
「トラック魔法奥義! 『トラック流星群』!! いけええええええ!!!」
まるで決壊したダムのように、空を埋め尽くすトラックが一斉にフロウティフォンへ向かう!
数えるのは非常識な台数。まるで空がそのまま落ちてきたかのような圧倒的プレッシャー!
この攻撃に気づくのが遅れたフロウティフォン。いくら天空の化身といえど、このトラック空間から離脱するほどの速力は持ち合わせていなかった。
「ぐ……おおお!!! 馬鹿にするなよタンパク質のぬいぐるみがぁぁぁあぁぁあ!!! この程度の攻撃で、この、我がああああ!!!」
弾いては避けを繰り返すフロウティフォン。だが、圧倒的物量によって、やがて一台ずつフロウティフォンへ直撃していく。確実なダメージに、フロウティフォンの表情が初めて揺らいだ。
「まだ、終わらぬのか!? ありえぬありえぬありえーーーーーぬ!!!」
「フロウティフォン!! お前の敗けは最初から決まっていた!!」
「それは、何故だ!?」
既に全身の骨が折れているフロウティフォン。愛槍はベキべきにへし折られており、元が武器だったと言われても怪しい状態。
未だにトラックに襲いかかられるフロウティフォンの肉体は、限界を迎えていた。
「ルピスを攫った時点で、お前の敗けだあああああああ!!!」
残りのトラックが全てフロウティフォンへ直撃した! 空中にトラックで構成された団子が一つ出来上がる。直後、トラックがそれぞれ発光する!
「転生しろォォォー!!!」
ライドの雄叫びとともに、トラックが爆炎へと変わった! これはトラックに積まれたエンジンが爆発を引き起こしたためである!
「きょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
フロウティフォンの断末魔が世界中に響き渡る。全てが終わった後、フロウティフォンの肉体は塵一つ残らず消滅した。
確実な手応え。ライドは無事にフロウティフォンを打倒できたことを理解した。
ライド達を乗せたトラックは地上へと帰還し、久々の地面を噛みしめる。
ライドはフロウティフォンがいたであろう場所へ、拳を向けた。
「転生完了! 今度はまともな人間に生まれ変われると良いな!」
いつかの未来で、どこかの世界で、“彼女”は産声をあげた。
――我の前世は、天空の化身たる最強の存在だった……!
ここからの物語はあえて語らないでおこう。
きっと誰かが観測する出来事なのだから。
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