ハーレム主人公と化した親友をからかうために美少女へ変身したら、いつの間にかヒロインたちに囲まれていた
バリ茶
まずは美少女に変身
この世界には魔法というものが存在していて、それに加えて俺の友人には主人公みたいな男がいる。
都心部中心に位置する
つまり彼と物理的に一番近い距離で過ごしていた生徒というのが俺であり、そんな存在だからこそ誰よりも彼が”主人公らしい”ことをしてきた事を知っている。
まずは彼の名前から。
姓はファイアで名はレッカ、その名に恥じることなく炎系魔法使いのなかでも最上位の実力を持っている。
一応学園内では実力を隠しているが、俺や彼と親しい一部の人間などはその限りではない。
そんなレッカ・ファイアくんだが──ぶっちゃけ死ぬほど強い。
気に食わないくらい強いし確実に学内の優秀な生徒や教師程度では相手にならないだろう。
そういった最強無敵な部分も主人公感が強いのだが、かのレッカさんはそれだけに留まらない。
なんと彼は弱冠十七歳にして六人もの美少女を侍らせて若きハーレム王として君臨しているのだ。
六人って多すぎると思う。戦隊ヒーローかよ。
アレで誰にも手を出してないとか絶対嘘だろ放課後より取り見取り食い放題だろって様々な男子生徒たちから嫉妬の眼差しを向けられているレッカだが、実際のところはマジで手を出してない。
一番親しい友人の俺が言うのだから間違いない。
あの年中発情期みたいなヒロインたちから仕掛けてくる事こそあるもののレッカ本人は鋼の精神力でなんとかエロゲ主人公ではなくラノベ主人公に留まっている。えらい。不能だと思われることもあるけどアレは臆病で童貞なだけです。
で、だ。
俺はいわゆる彼から見た”友人キャラ”ってやつのポジションに収まっているワケなのだが、ぶっちゃけ最近はあまりレッカと話せていない。
もちろんヒロインたちとのイベントも盛りだくさんなのだろうが、なによりレッカは秘密裏に暗躍しているわる~い魔法使い集団と日夜戦って街やひいてはこの国の平和を守ってくれているのだ。
つまり多忙。クッソ忙しい。
なので俺は最近放置され気味……という感じで。
暇なんです。
一年の頃から続いているレッカの物語に(一応)巻き込まれてるせいで派手な出来事に慣れてしまって、この一人で過ごす何でもない時間が退屈すぎてしょうがない。
友人キャラと言っても親友ではない──つまり主要キャラではなくサブキャラの枠を出ないせいで本格的な戦闘や物語の中心には入り込めないのが現状なのだ。
……ハブられるのってイヤじゃん。
不謹慎だってことは百も承知だけど、せっかく特別な人間たちと関われたのに外野からの応援だけじゃ人生もったいないだろ。
最悪俺本人は物語に介入できなくても、レッカが主役を務めているストーリーをもっと間近で見て興奮したい。
もっと刺激が欲しい。
俺もなんか楽しいことしたい。
大変そうだけどどこか楽しそうなレッカを見てるうちに傍観だけじゃ足りなくなっちゃった。
つまりレッカのせいだ。俺は悪くない。
……とまではいかないけど、ほどよく主役たちと関われる主要キャラになりたい。
そういうわけで、まだ初夏ですらないこの暖かい時期に俺は行動を開始することにした。
どんな登場をするか、どこのポジションが空いているのか、ここ一週間考え続けた。
そして見つけたのだ。
まだ入れそうな場所を。
演じられそうな役割を。
頑張れば俺程度でもなんとかやれそうな──いや、自分が楽しめそうなモノを。
レッカは強い。
実力で上を行くことは叶わないし、彼の周囲にいるハーレムヒロインたちにすら太刀打ちはできない。
つまり敵になるのは論外だし、味方としても足手まといになるワケだ。
それならどうするのか?
──敵にも味方にもならなければいい。
◆
「力を貸してくれ、父さん」
自分の部屋の勉強机の上、そこに鎮座するティッシュ箱サイズの無骨な鉄の箱の中から、俺はひとつのロケットペンダントを取り出した。
このペンダントにはかつて俺の父親が完成させた研究成果の試作品としての効力が隠されている。
気が狂ったように研究に明け暮れてたら母さんにキレられて今は家族サービス第一みたいになってる我が父上の残した研究者時代の最後の魔法。
「これでまずは──美少女になる!」
ペンダントを開き、隠されていた非常に小さなボタンを押した瞬間、俺の全身が眩く発光。
その数秒後、光が収まってから部屋の鏡に目を向けると──
「……成功だっ! やった!」
思わずガッツポーズ。
平均的な男子生徒の体型だった俺は姿かたちが変貌し、見目麗しいが低い身長や童顔も相まってどこか幼い印象も受ける黒髪ロングの美少女へと進化していた。
レッカのハーレムヒロインたちはみんな髪色が特徴的だし、逆に黒くて地味な方が目立ちやすいし丁度いい。これでいい。
ペンダントによる性転換魔法の効力は最大一時間でその時間内であればいつでも変身解除は可能だ。
使用後のインターバルも一時間だし使い勝手はかなりいい方だ。
研究者というかマッドサイエンティストに片足を突っ込んでた父さんには感謝しなければ。
「くっくっく、これで作戦を実行に移せる」
喉を鳴らしてニマニマしながら、クローゼットから事前に準備していた衣服を取り出す。
手にしたのはフード付きのブレザー型の学生服に似た衣服だ。
白を基準とした上着とスカートには黒い線が入っていて、内側に着るシャツも黒いワイシャツ。
ともかく全てが特注品で、この制服っぽい謎の衣装はこの世でコレ一つしか存在しない。
つまり制服っぽいのに在籍している学園や所属組織を一切特定できない”謎の服”であり、これより”謎の美少女”を演じる俺にとってはうってつけのコスチュームというわけだ。
「楽しみだぜ奴の反応がよォ……!」
そう、俺はこれより『ハーレム入りせず他のヒロインたちとは一線を画す立場にありそうな謎の美少女』を演じるのだ。
絶対楽しい。
今からもうニヤニヤが止まらないが、演じるときはミステリアス感を出すために基本的には無表情なキャラでいくから気合入れてポーカーフェイスしないと。
「あいつらはいま工場跡地でちょっと強い敵とやりあってる。その戦いが終わって全員が一息ついていつものように帰ろうとするその瞬間に、レッカにだけ見えるように登場する! そんでもって何も言わずに立ち去る! 完璧な謎の美少女とのファーストコンタクトだろ!」
ささっと特別衣装に袖を通して気合を入れ直し、鼻息を荒くしながら家を飛び出る。
行くぞー!!!
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