生きるのが下手なだけ
いとかくし
なにもしたくなくなるだけ
両親が買い物に出て行ったところで聞いていた曲を止めた。
わからないけれど、とても苦しかった。
定期テストで失敗して、悪い点を取った。
努力不足だと分かっていた。
結果を出してからあからさまに母が冷たくなった。
テストの為に休んだ塾の授業の録画をpcに映したまま、雑談と授業を混ぜた高い声に耳を腐らせていた。
音に敏感な自分は、その声が不快で仕方がなかったのだ。
特に電子を通すとその甲高い声は脳に突き刺さる。
授業中の小さなひそひそ話も、テスト中の椅子の軋み、勉強中の親の動く音。
全てがストレスで、それを覆い隠す様に曲ばかり聞いていた。
両親はそれを良く思わなかった。
まあそれは研究結果等でも「音楽を聴きながらの勉強」は身に付かないから、と結果が出ているからだろう。私は静かな自分の部屋が欲しかった。リビングの横の和室に母の布団と私の布団が並び、その横に勉強机が置いてあった。リビングからのテレビや、誰かが何かを食べる音まで全て筒抜けで、全てが集中を妨げる。
そんなの甘えだし、そんなままで社会へ出たら落ちぶれてしまう。
そんなの分かっていた。
でも耐えられなかった。
頭の中がよくわからない何かで満たされて、計算をする場所も、言葉の引き出しを開けるスペースですら見つからない。自分を守るための曲ですら不快になってしまって、ヘッドフォンを投げ捨てて、耳栓替わりのイヤホンを耳にして布団にくるまるのだ。
このまま放置していればいいと思う。
何も悲しくないのに喉がひりひりして、思考はどん底へと落ちてゆく。
もしかしたらあの子は私が死ぬほど嫌いかもしれない。
SNSの相互は私の事を馬鹿にしているのかもしれない。
一緒のバンドのギターは私を下手だと思ってるだろうし、後ろの席の奴は私を鬱陶しく思っているに違いない。
どうしよう。
ごめんなさい。
こんな私で。
早死にしたいな。
この悩みどこで吐き出せるだろう。
リア垢は知り合いがいるから、病んでる何て笑われたら嫌。
かといって趣味垢の相互に機嫌を取らせるなんて事は嫌だ。
ずっとこのまま寝ていても、両親が帰って来た時に何もしてないじゃんって攻められる。
少しでも早く立ち上がらないと。
だから今こうやって他人事みたいに文章を書いているんだ。
客観的に見て見たら自分のこの感情よりも苦しい人はたくさんいると思わない?
そう。
まだ。
大丈夫。
あ
帰って来た。
生きるのが下手なだけ いとかくし @ito25kakusi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。生きるのが下手なだけの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
とっしーの一言最新/捨石 帰一
★16 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1,725話
過去と現在の狭間に最新/藍色の星 みり
★5 エッセイ・ノンフィクション 連載中 81話
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます