私は町で一番かわいい
爪木庸平
第1話
事実として私は町で一番かわいい。この町の人間は全員知り合いか、知り合いの知り合いだ。十七年間生きてきて、私をかわいくないと言った住人はいない。
いや、一人いた。幼稚園にいた健太だ。「えなのぶーす」と言ったのは五歳の時だった。私は一日中泣いた。五月十七日、遠足の日だった。私はその日を忘れない。
健太は別としても、私は「町で一番かわいい子」としてみんなに受け入れられているし、私自身もそう思っている。
でも、町で一番であって、県で一番ではない。ローカル局の司会をしているアナウンサーの一人に私よりかわいい人がいる。年齢の差はあるにしても、あの人が十七歳の頃、私よりもかわいかったのではないか、と思わせる顔のつくりだ。もしめちゃくちゃ芋臭くて垢抜けないガキだったら、ちょっとは楽な気持ちになる。
そして、私は日本で一番かわいい女の子じゃない。SNSを見てもわかるし、テレビを見てもわかる。私は極めて冷静にその事実を受け止めている。大丈夫。
韓国には私よりかわいい十七歳が数万人はいると思う。
十七歳の私には二つの選択肢がある。この町で生きていくか、この町を出るか。この町から通える大学はないから、進学するなら出ていくことになる。県の大きな都市で働く場合も出ていく。
十七歳の私は三十七歳までかわいいままだろう。親戚の顔を見ても、この数字はあてになると思う。四十七歳となると自信がない。
四十七歳になったら死ぬというのも一つの手だ。私が私を受け入れられないなら生きながらえる必要はないかもしれない。このテーマは中学生の時に散々悩んだことでもあった。結局中学生の時より高校生の時の方がより大きな賞賛を受けられるようになったので気分をよくして、このテーマについて真面目に考えることはなくなったのだった。
町に留まる場合、今はしてないSNSや動画の投稿を始めようと思う。タイトルは「私は町で一番かわいい」だ。
私は町で一番かわいい 爪木庸平 @tumaki_yohei
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