ルナちゃんの告白と、巨大はなちゃん大バトル!

 ピッピちゃんが飛んで向かったのは、巨大なローゲルが暴れている足元。


 ルナを下ろすなり、ピッピちゃんが瓦礫の隙間を覗き込んで鳴き出しました。


「ピィ! ピ~~!」


 すると中から微かにうめき声みたいなのが聞こえてきます。


 この声はもしかして、ユウキくん!?


「ユウキくん! そこにいるんですか!?」


「その声はもしかして……ルナちゃん!? どうしてここに……!」


 やっぱりユウキくんでした!


「待っててください! ルナが今からそちらに向かいます!」


 ルナが瓦礫の隙間を潜り抜けて進むと、その下に埋もれているユウキくんとはなちゃんの姿がありました。


「ユウキくん! はなちゃん!」

「どうしたのルナちゃん……こんなところに来ちゃダメなのに……!」

「ブロロロロ……!」


 自分たちが血を流して怪我をしているのに、ユウキくんとはなちゃんはルナのことを心配してくれているみたいで。


「とにかくっ、今から手当てをします! うまくできるかどうか分かりませんが……ヒール」


 ルナが呪文を唱えると、まばゆい光がユウキくんたちを包み込みました。


「うわっ!?」

「プオオ!?」


 ううっ、やっぱりまだ加減がうまく行きません……目眩が……。


 だけどユウキくんたちの傷はすっかり癒えてます。


「……痛くない。これをルナちゃんが!? すごいよ!」

「えへへ、この前ラルンさんにちょっとだけ教えてもらったんです。まだちょっとうまくいかないですけど……」


 はにかむルナに厳しい顔を向けるユウキくん。


「でもどうしてここに? こんなところに来たら危ないのに……!」

「それは……」


 オドオドしてしまうルナですが、勇気を振り絞って思いを口に出したんです。


「――好きなんです、ルナにはユウキくんがとっても大切なんです!!」

「……へ?」


 ルナの告白にユウキくんはポカーンと口を開けています。


 ビックリしますよね、でもルナの純情は止まりません!


「ルナはユウキくんが好きです。優しいユウキくんが好きです、勇敢なユウキくんも好きです、ちょっと乙女心に鈍感なユウキくんも、みんなみーんな大好きなんです!」

「ルナちゃん……」

「だからユウキくんを放っておくことなんて、ルナにはできないんです! ルナも力になれますか?」


 そしてルナが重ねた手に、ユウキくんは手を添えてくれました。



 突然のルナちゃんの告白に、僕は頭の中が一瞬真っ白になってしまっていた。


 ルナちゃんが僕を好き? いやいや、ルナちゃんみたいな可愛くて優しい女の子に僕なんかが好かれる道理は……。


「――ルナも力になれますか?」


 だけどルナちゃんの本気の想いを受けて、僕は実感した。


 僕にとってもルナちゃんはとっても大切なんだってことに。


「ありがとう、ルナちゃん。ルナちゃんがそんなに僕を想ってくれていたなんて、知らなかったよ」

「もう、やっぱりユウキくんは鈍感なんですっ」


 手を重ねた僕にルナちゃんは真っ赤に染まった顔をむすっとさせてそっぽを向いてしまう。


 すると僕の腰にあるポーチがぼんやりと光り出した。


「これは……?」


 ポーチを開けてみると、中ではいつかのレッドマッシュがまばゆく光り輝いている。


「それって確か、はなちゃんが食べると元の大きさに戻るキノコでしたよね?」

「……待てよ、もしかしたら……!」


 小さい姿から元の大きさに戻る、つまり元の大きさでこれを食べたら……!


 僕がそんな憶測を立てたそばから、はなちゃんが鼻を伸ばして光るレッドマッシュを口に放り込んだ。


「プオッ!?」

「はなちゃん!? ――うわあ!!」

「きゃあっ!?」


 すると今度ははなちゃんの大きな身体がまばゆく光り出して、僕たちは目を開けていられなくなる。


 そして光が晴れた頃には、瓦礫を押し退けて巨大ローゲルと同じくらいに巨大化したはなちゃんの姿があった。


「はなちゃん、なの……!?」

「すごく……大きいです!」

「ズロロロロ……」


 目を白黒させる僕たちを、はなちゃんが巨大な鼻で吸い込む。


「うわあああああ!!」

「きゃあ~~!!」


 鼻の中に吸い込まれた僕とルナちゃんは、普段はなちゃんが水を飲むみたいに口に放り込まれた。


「これは……」

「はなちゃんの口の中、ですね」

「それだけじゃないよ。どうやら外の光景が頭に伝わるみたいなんだ!」


 ちょうどローゲルが突然巨大化したはなちゃんに戸惑ってるや。


 それにルナちゃんと手を繋ぐと、その光景がちゃんと共有できるみたいで。


「あれが外の様子ですね!?」

「ズオオオオ……」


 はなちゃんの口内で響き渡る重低音のうなり声だけど、不思議なことに何を言いたいかがなんとなく伝わってくる。


「そっか。僕も力を貸すよ、それでいいんだね!?」

「ズオオ!!」


 僕がはなちゃんのベロに手をかざすと、その巨体にパワーがみなぎってくるってことが分かった。


「ズオオオオ!!」


 まずは巨大はなちゃんの体当たり!


「ヌオオオ!?」


 これにはローゲルも大きく吹っ飛ばされて尻餅をつく。


「コシャクナアアアア!!」


 ローゲルが巨大なハサミと槍を突き出してくるけど、今のはなちゃんには傷ひとつつかない。


「ナニ!?」


 そこからは巨大はなちゃんの独断場だった。


 力一杯どつき、踏みつけ、牙で突き刺し、鼻でぶん投げる。


「オアアアアアア!?」


 巨大なローゲルも今のはなちゃんの前では無力な子供のようだった。


「オノレエエエエエエエ! カクナルウエハ、王都モロトモフットバシテクレル!!」


 追い込まれたローゲルが、身体を風船のようにどんどん膨らませていく。


「ローゲルの魔力が膨れ上がっています! このままじゃ爆発して王都が丸ごと……!」

「なんだって!?」


 それじゃあローゲルは自爆して王都ごと僕たちを吹っ飛ばすつもり!?


 だけどルナちゃんは不思議と落ち着いていた。


「不思議ですね、ルナには何をすればいいか分かるんです。はなちゃん、ルナの力お貸しします!」


 ルナちゃんもそのベロに手をかざすと、はなちゃんの巨体が光をまとう。


「はなちゃん! ローゲルの身体から魔力を抜くことってできますか!?」

「ズオオオオ!!」


 できる!と言わんばかりに鼻を高々と上げたはなちゃんが、その鼻をローゲルにくっつけた。


「ズオオオオ!!」

「バカナ!? 我ガ魔力ガアアアアアア!!」


 はなちゃんに魔力を吸引されるローゲルは、次第に空気を抜かれた風船のように萎んでいく。


 そしてゴボウのようにローゲルが細く萎びたところで、はなちゃんが鼻を上げて魔力を一気に吹き出した。


「これは……!?」

「王都が、元に戻っていきます……!」


 はなちゃんの光のシャワーが、ローゲルに荒らされた王都の建物をみるみるうちに修復していく。


 こうして僕たちは王都を救ったんだ!

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