成仏させる癒し小舟(サヨナラボート)

総督琉

天使学校の章

1、入学

 不安定な世界があった。

 その世界には成仏しきれなかった者たちが訪れる、そんな場所。

 その世界には天使と呼ばれる者たちがおり、彼らは成仏できなかった者の成仏を手伝う役目を担っていた。


 時に戦い、時にさ迷える魂を救済する

 ーーそれが天使




 ーー天偽国あまいつわりのくに

 そこには天人あまのびと、と呼ばれる者たちが暮らしている。

 彼らはその世界にて、生者の世界の均衡を保っている。その者たちをこう呼ぶーー天使と。


 天使を育てる学校ーー通称天使学校。

 今年の天使見習いは14名。

 その中で一人、一際異彩を放っている少女がいた。


「遅刻遅刻」


 そう叫びながら教室へと入ってきた少女がいた。

 教室には既に13名の生徒が着席しており、残るは少女だけだった。


「リアライゼさん。入学式で遅刻とは、何を考えているんですか」


 14名の生徒の担任を勤めることになった天使ーーメイサエルは、初日早々に遅刻してきたリアライゼを叱った。


「ごめんなさい。でもいつもこの時間は寝てるんだもん。だからついつい寝ちゃっただけだもん」


「それが天使になって通用すると思っているんですか。あなたはこれから天使になるんですよ」


「今は見習いだもん」


「全く、初日でこれほど意見する天使見習いは初めてですよ」


 メイサエルはリアライゼの態度に呆れていた。

 それでもリアライゼは反省の色を見せず、あくまでも自分は悪くないというスタンスをとっていた。


「今日はもう良いです。席に着いてください」


「はーい」


 元気の良い返事をして、リアライゼは空いていた席に着く。

 リアライゼという少女の登場に、教室中の生徒がざわついていた。


「はい。皆さん、今日は入学式です。この学校に入学したということは、これからあなた方は天使見習いとして、天使になれるよう一層努力してほしいと思います。

 それでは皆さん、この学園へようこそ。この学園で天使になれるよう、頑張りましょう」



 これから始まる彼女らの物語。

 天使を目指す彼女たちの、破天荒な物語。

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