Episode20

 皆様、ご無沙汰しております。青梅大の脳ミソをフル回転させてようやく書き上げました。

 楽しんでいただければ幸いです。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 僕達はアインスからの情報を頼りに、未発見のダンジョンを次々と吸収していった。結果、僕はアインスを含め12のダンジョンを支配下に置く事となった。

 そして、エレナさんの許可をもらいフィクシアの周りにダンジョンを配置した。

 時計の文字盤のようにフィクシアの北から12ツヴェルフ1アインス2ツヴァイ3ドライ4フィーア5フュンフ6ゼクス7ズィーベン8アハト9ノイン10ツェーン11エルフとした。

 そして、それぞれにホムンクルスの身体を用意し僕の『守護者ガーディアン』になった。




 ダンジョンを配置してから一月ひとつき、今やフィクシアはどの国の首都よりも栄えた都市となった。

 新人からベテランの冒険者が集まり、また冒険者をお客とする商店も充実していった。

 ダンジョンは、1アインスから順番に難易度を上げていき、新人冒険者でもある程度稼げるようになった。また、新人冒険者にはベテランの冒険者がついて丁寧な指導を行うことにより、新人冒険者の死亡率を大幅に下げる事に成功した。

 僕は冒険者ギルドに依頼やパーティー募集の掲示板の他に新たな掲示板を設置。その掲示板にはこんな事が書かれている。


『本日のボーナスダンジョンは【7ズィーベン】、取得資源倍率15倍!!』


 この掲示板の書き込みのおかげで、冒険者達が楽に稼げるようになりギルドにダンジョン産の素材が沢山持ち込まれるようになった。

 新人冒険者の死亡率が下がったのは良いものの、負傷者の数はかなり増えてきた。


「困ったな、冒険者の負傷者の数が増加する一方だ。この都市の治癒術師の数が圧倒的に足りない。」


 エレナさんがその言って、不安そうな顔をする。


「エレナさん、僕もお手伝いします。」


「本当か!?それは助かる。タケル君の治癒魔法があれば、負傷者もかなり助ける事が出来るだろう。すまないが協力してもらえないだろうか。」


 僕はエレナさんから治療院の場所を聞き、AIさんを伴い移動する。


「失礼します。ギルドマスターのエレナさんから伺いまして、こちらでお手伝いさせていただきます。」


「治癒魔法が使えるなら大助かりだ。さっそくだが治療を頼めるか?」


 たぶん、この治療院の院長だろうと思われる白衣を着たおじさんに声をかけられた。


「了解です。では、負傷者を全員一ヵ所に集めてください。まとめて治療します。」


「待て待て待て、まとめて治療するだと!?そんな治癒魔法など聞いたことがないぞ!!」


「そうなんですか?まぁ、僕はそれが出来るので、とりあえずやってみますね。」


 僕は【創造クリエイト】を使い、一本の木で出来た杖を造り出した。


「オ、オイ、少年!!なんだ、その杖は!?まさかそれは世界樹ユグドラシルの枝で出来た杖なのか!?」


「おぉ、良くわかりましたね。この杖は世界樹ユグドラシルの若い枝から造り出した杖です。杖の名前は【永遠の癒しエターナル・ヒーリング】です。この杖自体が治癒魔法と同等の効果があるので、患者に当てるだけで回復しますが今回はまとめて治療する予定なので、杖を媒介にして治癒魔法をかけます。」


 まぁ、僕の場合杖無しでも全員を回復させる事は出来るけど一応、小道具があればみんな納得するだろう。


「それでは、いきます。広範囲完全治癒エリアパーフェクトヒール!!」


 両手で杖を持って振り上げ、床に振り下ろす。

 カツーンという音とともに治癒の魔力が円形に広がっていく。


 その日、僕が放った治癒の魔力は治療院の敷地を越えてフィクシアの都市全体にまで及んだ。

 小さい子どものちょっとした怪我からお年寄りの腰痛、不治の病で余命幾何もない病人や先の防衛戦で負傷し部位欠損で除隊するしかなかった衛兵や生きる事を諦めかけた冒険者をも完治させてしまったようだった。


「奇跡だ!!」


「きっと神の使徒様に違いないわ!!」


 治療院に居た医師や看護師達が、口々に褒め称える。

 少し、やり過ぎた感がなくはないけど、フィクシアに住む人達が治ったならいいんじゃないだろうか。




「誰か、医者を呼んでくれ!同僚が怪我をしたんだ。」


 しばらくして診療所に入って来た冒険者の一人が、大きな声で叫ぶ。

 あとからやって来た二人の冒険者に肩を借りて引きずられて入って来たのは、バットだった。


「えっ!?バットさん?なんでこんな所にいるンですか?」


「アンタ、バット先輩の知り合いか?」


「頼む!先輩は俺達を庇って怪我をしたんだ!なんとか助けてくれ!!」


 OK、わかった、アンタに渡した異空間倉庫ガレージの指輪の中身はなんだったかな?


「バットさん、異空間倉庫ガレージの指輪の中身は使い果たしたンですか?」


「あっ…」


「AIさん、例のブツを…」


『かしこまりました。』


 AIさんは僕に例のブツ…『永遠の眠りエターナルスリープ』をそっと渡してくれた。


「バットさ~ん、確か異空間倉庫ガレージに目一杯最上級ポーションを詰め込んで渡してたはずでしたよねぇ~。」


「お、おう、そういえばそんな物もあったな…」


「ど~して使わなかったンですか~?」


「い、いや、その、なんと言うか…もらってた事自体忘れてた。」


「先輩が後輩に迷惑かけちゃダメでしょう。」


「面目ない。」


「お二人さ~ん、バットさんをし~っかり捕まえててくださいね~。」


 そう言って、『永遠の眠りエターナルスリープ』で素振りをする。


「なぁ、タケル。俺の推測が正しければ、そのグロテスクなメイスで俺はお前に撲られると思うンだが…」


「おぉ、さすがバットさん。よくご存知で。」


「待て待て待て。それって絶対、呪われた武具だろう!!」


「そんなわけないじゃないですか。これは『永遠の眠りエターナルスリープ』って名前の回復アイテムですよ。」


「『永遠の眠り』って不吉な名前じゃねえか!!」


「大丈夫ですよ。これを使えば、棺桶に片足を突っ込んでいてもあと10年は寿命が伸びる程回復しますから、そう簡単には死にませんよ。」


「ぜってーウソだ!!100%パー呪われるヤツだろ!!」


「痛みなんて感じませんから、安心してください。」


「痛みを感じる間もなく、眠りにつけるってわけだな?」


『めんどくさくヤツですね。それ以上騒げば、私が貴方を『永遠の眠り』にいざないますよ。』


「サーセン」m(_ _)m


 AIさんの圧力に負けたのか、バットは怯えている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る