Episode13

「フゥー、食った食った。」


「まさか、夜営でこんな美味しい料理が食べられるなんて思ってもみなかったわ。」


「ホントだよね~。だいたい、夜営の食事って固いパンと干し肉、乾燥野菜のスープくらいだもんね。」


「それだけじゃない。周りを警戒しなくていいのが最高じゃないか!!」


 四人とも、リビングでゆったり寛いでいらっしゃる。


「皆さん、お風呂に入られますか?露天風呂で、星空を眺めながら疲れを癒してください。」


「タケルちゃん、星空を眺めながらお風呂に入れるなんて素敵じゃない。お姉さんがご褒美をあげちゃうわ。」


 そう言って、レイナさんが僕の頬にキスをした。

 その直後、僕の背中に悪寒が走った。

 エレナさんの笑顔が何故か怖い。


「フフフ、レイナ。随分とタケル君を気に入ったみたいじゃないか。バットが死にそうだった時は、タケル君を邪険に扱ってたのに。」


「えっ、あっ、そ、それは……」


「ミラにしたってそうだ。レイナと二人でタケル君に敵意を向けていたようだったが?」


「えっと、そのぉ、ご、ゴメンなさい。」


「それで、これからどうしたい?」


 エレナさんのOHANASIは続くのであった。



 満天の星空を眺めながらのお風呂は、とても気持ち良くついつい長湯をしてしまったくらいだった。

 そして風呂上がりのコーヒー牛乳は、至高の一杯である。

 みんなでリビングに集まり、翌日からの予定を話し合う。


「タケル君、君が用意してくれたワインは、今まで飲んだどのワインよりも美味しいな。」


「私は、このシャンパンって飲み物が気に入ったわ。」


「アタシは、チューハイってヤツが好きだなぁ。」


「バカ言え、キンキンに冷えたビールってものを忘れてもらちゃぁ困るゼ!!」


「あの~、明日の予定は?」


「それにワインのつまみとして出してもらったチーズがとても良くあう。」


「シャンパンにナッツの方が合いますよぉ。」


「チューハイと枝豆が最高だよね~。」


「お前ら、わかってねぇなぁ。ビールに唐揚げ!!これしかねぇだろう。」


 あれ~、なんで飲み会になっているんだろう?

 ちなみに、僕は緑茶とお煎餅です。

 もう誰も明日の予定を立てる気がないみたい。


「先に寝ます。お休みなさい。」



 翌朝


「おはようございます!!」


「ッ!?タケル君、おはよう。昨夜は少し飲み過ぎたみたいで、頭が痛い。」


「タケルちゃん、おはよう。お姉さんも頭が痛いわ。」


「アタシも頭が痛い。」


「ンごぉ~。」


「それじゃ、皆さんに治癒魔法をかけますね。」 


 僕は、エレナさん、レイナさん、ミラさんの順番に治癒魔法をかけ、バットの頭をしばいて治癒魔法を施した。

 しかし、せっかく個別に部屋を用意したのに、リビングで寝てるなんて…


「朝食の用意は出来てますよ。冒険者は身体が資本なんですよね?

 というわけで、朝からガッツリのメニューを用意しました。」


「た、タケル君!?我々は二日酔いなんだが…」


「僕の父がよく言ってました『酒は飲んでも、呑まれるな』と。皆さん、いい大人がみっともないですよ?」


「面目無い。これからは自重する事としよう。…だが、これだけは言わせてほしい。タケル君の用意するお酒は、どれも素晴らしく美味しいものなのだ。だからついつい飲み過ぎてしまうのだ。」


 エレナさん…うん、それ、お酒飲む人の常套句ですよね?僕の父さんがよく言うセリフです。


「エレナさん、それにレイナさんとミラさんもしっかりしてくださいよ?

 はい、朝食の『お粥』です。二日酔いにはちょうど良いらしいですよ?」


 四人にお粥を出す。何故か四人は涙を流しながらお粥を食べていた。


 朝食を済ませ、移動の準備が済みノート AUTECH CROSSOVERに乗り込む。ログハウスは異空間収納ストレージに収納して解体。


 しばらく進むとレイナさんが口を開いた。


「そういえば、この辺りだったかしら?最初にドラゴンを見かけた場所って。」


「あー、確かにこの辺だったな。」


 えっ!?この辺からバットは、あの怪我をしてフィクシアまでたどり着いたのか?


「タケルくん、バットが怪我したのはフィクシアから20キロほど離れた場所だよ。」


「お前達、そう言う話しをしていたらホントに遭遇してしまうぞ。」


『マスター、250キロメートル地点に敵性反応。魔力反応からドラゴンと推定。数は20。どうされますか?』


「AIさん、自動運転オートドライブでドラゴンの所まで走らせて!!」


了解ラジャー自動運転機能オートドライブモード起動。マスター、武装はいかがいたしますか?』


「【悲哀ザ・ソロー】と【歓喜ザ・ジョイ】を使う!!」


『マスター、現在の距離ではスナイパーライフルでも届きませんよ?地球での最高狙撃距離はマクミランTAC-50の3,540mです。どうなさるおつもりですか?』


「ここは異世界!!そして僕のスキル【創造クリエイト】に死角は無い!!」


 窓から身を乗り出し、【悲哀ザ・ソロー】と【歓喜ザ・ジョイ】を構える。


「ターゲット、マルチロックオン、銃形態ガンモード狙撃スナイパー】、弾丸ブレッド貫通ペネトレーション】」


了解ラジャー。ターゲット、ドラゴン頭部、銃形態ガンモード狙撃スナイパー】、弾丸ブレッド貫通ペネトレーション】、準備レディ


 僕の目の前に半透明のウィンドウが現れ、20体のドラゴンが表示される。ドラゴンの頭に照準マークが次々と固定されていく。

 全ての照準マークがドラゴンの頭に付いたタイミングで引き金トリガーを引く。


発射シュート!!」


 二つの銃口に僕の魔力が集まり、計20発の貫通魔力弾がドラゴン頭部へと飛んで行く。

 かなり魔力を籠めた為、ドラゴンの頭を簡単に貫通し全てのドラゴンを倒すことができた。


「えっ、ドラゴンを倒した!?タケル君、君は一体何者なんだ?」


「マジか!!ドラゴンを倒すヤツなんて初めて見たゼ!!」


「すご~い。タケルちゃんってホント、強いよね。」


「アタシ達ってもしかして、トンデモない人をパーティーに入れたのかな?」


 僕の目の前にあるウィンドウと車のナビゲーション画面が連動していたみたいで、ドラゴンを倒す瞬間を見ていたようだった。


 ドラゴン肉、ゲットだぜ!!


◇◇◇◇◇◇◇◇


次回は3月7日を予定しています。

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