第17話 特訓
眠りから覚めると、まだ薄暗いが朝日が登り始めていた。
カエデはまだ寝ているが、シェミィは既に起きていた。
「おはようシェミィ」
「にゃー」
カエデがまだ寝ているので、小さめの声で言うとシェミィも小さめの声で応えてくれた。
シェミィってかなり知性が高いんだな、人の言葉を理解しているもんな。
カエデが起きる前に着替えを済ませて、裏庭で素振りしてくるとメモを置いてシェミィと共に裏庭に行く。
「さて、素振りするか」
少しずつ日が昇ってくるのを見ながら素振りを始める、昨日は1日大変で寝る前の鍛錬出来なかったので、朝からする事にしたのだ。
シェミィは邪魔にならない所で日向ぼっこしていた。
狼人族の姿に変身し黙々とナイフを振るう、素早さが上がっている為に身体を慣らさないといけない。
シェミィとの戦いの時は、集中していたからか気にならなかったが、今のように何も無い時に変身してみると速度の違いに少し戸惑ってしまう。
「これがカエデの見てる速度、これが更にアクセルブーストで加速するんだもんな、なんでシェミィと戦ってる時にアクセルブースト使って問題なく動けたんだろう?」
考えてみると不思議だ……過ぎた事を考えても仕方ないと感じたので、今の内に速度に慣れておく。
狼人族の姿で動き回ってると、カエデが起きてきて裏庭にやってきた。
「おはようご主人様、朝から元気ね」
「おはよう!昨日鍛錬出来なかったからな、今の内に少しやっておこうと思ってさ」
カエデが起きたので鍛錬を切り上げて朝食を済ませた、その後道具屋に行き準備を整えてから待ち合わせ場所に向かった。
「あっ、コウガくん!カエデちゃん!こっちこっち!」
ミラさんが手招きをする、全員集合だ。
「おはようございます!ジルさん!ミラさん!」
「おはようございます!」
俺とカエデが挨拶すると2人共おはようと返してくれた。
「さて、魔物の多くないトライデント王国西側にあるジオラル草原に行こう、見渡しも良くて動き回るにはもってこいだ」
ジルさんが草原へ案内してくれる、30分くらいで到着した。
シェミィが走り出して高くジャンプしたり、芝生の上でゴロゴロしたりしていた。
「ここなら思う存分動けるだろう、見渡しもいいから魔物が来ても気付きやすいからな。さて、コウガは何を鍛えたいんだ?」
「俺は魔法をミラさんから教わりたいです、カエデは?」
「私はタンクのジルさんが居るから、折角だし対人の模擬戦したいです!魔物に対しても対人に対しても経験が少ないから手合わせしてくれると嬉しいです!」
「なるほど、良いだろう。ミラもいいな?」
「もちろん!コウガくんに色々教えちゃうよー!」
俺達の特訓が始まった。
ーーーコウガsideーーー
「コウガくん、氷魔法以外で今使える魔法は?」
「えっと、ファイアーアロー、ウォーターボール、パラライズサイズ……」
魔法を1つ1つ言っていき、空間魔法を言おうか迷った所でミラさんが割り込んできた。
「えっ!?ちょっと待って!?火、水、雷、氷、こんなに属性持ってるの!?」
ミラさんが驚いた顔をしている、ミラさんは雷と風と土、回復魔法使ってたけど、もしかして多属性って珍しい……?
「はい、他の属性は使った事ないので、もしかしたら他にも使えるものもあるかもしれませんが……やはり多属性は珍しいんですか?」
「普通1属性から多くても3属性が普通よ!私は4種類使えるけど、これ以上は無理だったわ」
既に4属性使える俺は珍しい分類……って事か、レアさんがもしかしたら強くなれるように仕組んだのしれない。
「イメージするだけで使えたんです、ミラさんは魔法を使う時に言葉を発してますが意味はあるんですか?」
「魔法の前の言葉は、コウガくんが言うイメージを言語化した物なの、だから一応言葉を発しなくてもイメージ力が強ければ魔法自体は使えるわよ。でも……コウガくんみたいにあれだけの高速発動出来る人はあまり多くないと思うわ、私の知る人でも……知人に1人居るくらいね」
俺の魔法に対するスペックは高いらしい、イメージしているのが前世の物なのも影響しているのだろうか?
「それならまず、何属性使えるのかテストしてみようか!一応初級系の魔導書と中級系魔導書は持ってきたけど、コウガくんのイメージ力にも興味あるから魔導書は使えなかった属性に使うようにしよっか、属性はあるのに違う解釈のイメージして発動しないって可能性もあるしね」
「分かりました!まずは風から行きますね」
風といえば……シェミィが使ってた風の刃で切り刻む技があったな、あれを1つ飛ばすイメージしてみよう。
杖を前に突き出し、風の刃で切り刻むイメージをしてみる。
スキル名が頭の中に浮かんできた。
「ウインドスラッシュ!」
風が発生し空気を切った。
「うそ……風まで習得しちゃった!?まさか全属性使えたりするんじゃ……?」
「他に属性って何があるんです?」
「基本属性として、火、水、風、土があって、派生属性として雷、氷、光、闇、聖があるよ、試す?」
「はい!折角なんでやってみます!」
結論から言うと、全属性使えてしまった……ただし初級魔法のみ、更に土属性に至ってはスキルとしてではなく、地面に少し穴を開けたり土の壁を形成出来る程度の魔法だった。
この世界は日常的に使えるような簡易な魔法はスキルにならないようだ、スキルにならなかった土属性は多分属性はあるが、苦手分野って事なのかもしれないな。
ちなみに、光属性はライト(周囲を明るく照らせる球体を作り出す魔法)、闇属性はブラックミスト(闇の霧で視界を塞ぐ魔法)、聖魔法がイメージしずらかったので魔導書を見て試してみると、回復のヒールをスキルとして入手した。
しかし、得意属性だろう氷以外の属性で中級系魔法は発動しなかった。
「凄い……初級魔法とはいえ、まさかの土属性以外全て使えるなんて……コウガくんいったい何者……?」
「あ、あはは……」
レアさん、まさかチートにしちゃったの?俺の身体。土属性が苦手とはいえ、まさか全属性使えるとは思わなかったよ?
まだ初級魔法だけなのは幸い……?いや幸いなのか?
よく分からなくなったが気にしないようにしよう、考えるだけ無駄な気がした。
「コウガくん、これ魔法極めたら賢者にもなれるんじゃない?」
「そこまで強くなるつもりはないですけどね……」
ミラさんに魔力の扱い方を教えてもらったり、魔力コントロールの訓練したり、魔力を空に近いくらいまで放出して回復するを繰り返して、魔力強化を行った。
カエデは少しだけ離れた所でジルさんと模擬戦をしていた。
ーーーカエデsideーーー
ご主人様と少しだけ距離を取ってジルさんと対峙した、これからジルさんと模擬戦、楽しみね。
「ジルさん!よろしくお願いします!」
「あぁよろしく、まずはカエデの実力を見る、遠慮なく来るがいい」
ジルさんが大きな盾をドシンと構えた、凄い威圧感……盾を構えただけなのに不動の要塞みたいに感じた。
実際にシェミィとの戦いでも、全ての攻撃を盾と防御スキルで防いでいた、消耗こそしていたもののダメージ事態は負っていなかったように見えた、これがタンクのBランク実力者……!
「ふぅ……はぁ!」
身体強化を掛けた、如何にあの防御を崩すか考えたけど、生半可な考えでは全て防がれるよね……
まずは私の得意なスピードを活かしてみよう。
「アクセルブースト」
私は加速してジルさんの真っ正面から突撃した。
「……!」
ジルさんの盾も私の速度に反応して防ごうと一瞬で動く、それならと盾に全力でひと殴りしてみる。
しかし仰け反る事もなく、足元が抉れる事もなく、完全に受け止めきった。
私の拳が防がれて盾で振り払われた為、バックステップで距離を取った。
「ほんとに要塞みたいね……」
「ふむ、純粋な力比べと来たか。俺を崩すには力が足りないな、あと本当の模擬戦なら反撃も受けただろうな」
「そうですね、でもジルさんの防御力を体験してみたかったんです、対人は初めてなので」
「ふっ、そうか。ならどんどん来るがいい、俺は防御と振り払いしかしない、防御を崩してみろ!」
「はい!行きます!」
私は再度アクセルブーストを使い正面から殴りつけるようにフェイントを掛けつつ、真横を通り過ぎて後ろから肘鉄を喰らわせようとするが、ジルさんの反応がかなり速く、すぐに振り向かれて盾で防がれる。
「なっ!?」
「まだ遅いな、もっと速くなれば俺も反応しきれない……かもな」
ジルさんに再度盾で振り払われて私は空を舞う、私は体勢を空中で整えて着地する。
「力でも勝てない、スピードも見切られてる、どうすればあの防御を崩せるの……?」
私は間合いを図りつつ少し考えた、魔法とか使える訳じゃないから、純粋に身体1つであの防御を崩す他ない。
今は実力を見る為に防御だけという縛りをしているジルさん、色々試すなら今しかないね……胸を借りるつもりで行こう。
「行きますよ、ジルさん」
「あぁ来るといい、全て防いでやる」
私はアクセルブーストで詰め寄り連撃を喰らわせる、全て防がれるがスピードを活かし、左右や後へ移動を繰り返ししながら殴りつけるも全て盾で防がれる。
「やっぱりダメね、全て防がれる」
「ふっ、だがいい動きしてると思うぞ、同じDランク帯のタンクだと今の連撃は全て防ぐのは難しいだろう」
「ありがとうございます、でも……もっと強くなりたいんです!ご主人様と一緒に旅をして黒幕を倒したいんです!そして……ご主人様と共に……」
私は少し秘めた想いを口にしそうになり口を止める、ジルさんは察したように優しい顔になった。
「そうか、決意は固そうだな」
「……はい!」
「良かろう、もっと来い!俺がお前を強くしてやる!その拳でアイツを守り通せ!!」
「はい!!」
ジルさんが優しい顔になったかと思ったら見た事ないくらい熱くなってる、私もかなり熱くなっていた。
後に聞いた話、遠目からミラさんもチラ見していたらしいが、あれだけ熱くなったジルさんを見た事ないという。
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