生姜焼き
お肉は、私の大好物だ。特に子どものころは断然野菜よりもお肉が好きだった。
肉料理で、特に好きなのが生姜焼きだ。自分で作ってもそこそこ美味しくできるし、あんまり失敗しない。お肉をたっぷり食べたい!と思うときは、生姜焼きにすることが多い。けれど、私は外食でほとんど生姜焼きを頼むことがない。というのも、私は、地元の定食屋の生姜焼きが大好きで、別のお店で生姜焼きを頼んでがっかりするのが嫌だからだ。
地元の定食屋は、両親の同級生が営んでいた。その店は、とにかくボリューミーなのだが、その割に安かった。メニューには、ヒレカツ重や海老重、天重などいろいろ揃っていて、どれも美味しい。でも、私が頼むのは必ず生姜焼きだった。だから、お店の奥さんには、注文のときいつものやつね、と言われていた。少し厚みのある豚肉に、生姜がたくさん入った甘辛いタレ、そこにレモンをかけて食べると本当に絶品だった。私があまりに好きなものだから、ご主人はたまに量を間違ってしまったから、と言って私のお膳に多くお肉を入れてくれていた。そんな優しいご夫婦のお店だった。
けれど、その定食屋は今はもうない。海老が高騰して、これまでのような値段では出せないからと何年か前にやめてしまった。そんなところも温かみのある決断だなとじんわり思ったけれど、その生姜焼きが二度と食べられないことが、私にはとても悲しかった。
私にとって、外で食べる生姜焼きの味は、あの定食屋の味でないといけない。お店はなくなってしまっても、私の記憶の中に、あの店の味が残っている。
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